お風呂だけでなく、ゴミ出し時にも「ヒートショック」の危険性が!?冬場に多発するヒートショックの原因、起こしやすい人の特徴を医師が解説
2024/12/13
冬場に多発するとヒートショック。年間1万9千人いるとも推計されている、お風呂場における突然死の原因のひとつでもあります(※)。今回はヒートショックの症状や起きる原因、リスクが高い人の特徴、起きてしまったときの対処法について、二子玉川女性のクリニックの心臓血管外科外来責任者である佐賀俊文医師に教えてもらいました。
- ヒートショックとはどのような健康障害なのでしょうか?
- ヒートショックが起きやすい状況について教えてください
- ヒートショックが起きやすい人の特徴を教えてください
- ヒートショックを回避するために気をつけるべきことを教えてください
ヒートショックとはどのような健康障害なのでしょうか?
ヒートショックとは気温や室温の急激な差によって、血圧が大きく変動し様々な症状を引き起こしたり、病気を急性発症したりすることの総称を言います。
具体的な症状としては急に血圧が下がることによる意識障害やめまい、悪心(吐き気)。また急な血圧上昇に伴う頭痛や脳出血や急性大動脈解離、心臓や血管ストレスによる不整脈や急性心筋梗塞などが挙げられます。
ちなみにヒートショックという言葉自体は医学用語ではありません。ここ数年メディアなどで広く使われるようになった表現となっています。
ヒートショックが起きやすい状況について教えてください
前述したように、急激な温度差が引き金になります。具体的には寒い脱衣所からの入浴や、起床後薄着で朝のお手洗いに向かったり、ゴミ出しで外気に触れたりすることなどが挙げられます。これらの行動は「少しのあいだなら寒くても我慢できる」と考えて、ついしてしまいがちなものですが、その油断が取り返しのつかない状況につながる可能性があるわけです。
たとえば冷え切った状態で急に熱いお風呂に入浴すると、手先や足先の血管が広がって体の中心の血液が末梢へ移動します。すると体幹部の血圧はスッと下がるため、急な血圧の低下によって意識障害や、めまい、気持ちの悪さが出現することがあります。
温かい状況から寒い場所に出た時はその反対で、体温を逃さないように末梢の血管がキュッと閉まり、血液は体の中心に集まります。その際に血圧が急激に上昇し、そのストレスによって心臓や大動脈、脳の血管が破れたり裂けたり、または詰まったりして血管疾患を引き起こします。
ヒートショックが起きやすい人の特徴を教えてください
温度差の刺激による血管へのストレスが原因になるため、動脈硬化が強い方は要注意であると考えられます。具体的には
1.加齢(65歳以上)
2.喫煙歴のある方、または現在喫煙している方
3.糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の治療中の方
4.ご家族、ご親族に心臓や大動脈、脳血管障害などの血管病の罹患歴がある方
5.健康診断を受けていない方、または検診で指摘を受けて未受診、未治療の診断項目のある方
以上の項目がリスクとして挙げられます。
生活習慣病や喫煙による動脈硬化は、自覚症状が出現する頃には病気が非常に進行してからのことが多く、つい甘く考えがちになってしまうと思います。40歳を越えるあたりから、ご自身の体や健康状態と日頃からしっかりと向かい合う習慣をつけることが何よりも大事になってきます。
ヒートショックを回避するために気をつけるべきことを教えてください
まずはご自身にヒートショックのリスクがどれくらいあるかしっかり把握することが大事です。その上で基礎疾患、生活習慣病に対しての治療が必要かどうかも含めて、検診などで指摘を受けた点に関しては、しっかりと医療機関を受診しましょう。
喫煙は動脈硬化の最も大きなリスク因子です。家族歴は血縁の方はもちろんのこと、同じような食生活や行動をしている同居している配偶者の既往も参考になります。
日常の行動に関しては脱衣所に簡単な暖房を設置する。朝暖かい格好をしてから行動を行うなどの寒さ対策をしっかり行うようにしましょう。飲酒時には特に注意が必要です。深酒状態での入浴は控えるようにしましょう。
もし、自身あるいは家族などがヒートショックになってしまった場合、どのような対処が必要でしょうか
一時的な血圧低下であればまずは安静が第一になります。激しい頭痛、意識障害、胸背部痛、胸部圧迫感などは脳血管、心臓大動脈に、命をかかわる重傷疾患を発症している可能性があります。その場合は、直ちに救急車の要請を行なってください。
冬場はヒートショックをはじめとした血管にまつわる急性疾患の発症率が大幅に上昇します。日常的な予防から対処法まで、正しい知識を身につけましょう。