自覚症状ゼロでも危険?! 続く“血圧高め”が引き起こす重大な病気とは

2025/12/23

高血圧は、気づかないうちに血管や臓器を傷つける「サイレントキラー」。「血圧が高め」と言われたら、自覚症状がなくても注意が必要です。

今回は、高血圧を放置する危険性や血圧管理の方法などについて、日本抗加齢医学会専門医で林外科・内科クリニック理事長である林裕章氏に聞きました。

子育て・心理分野を得意とするチャイルドコーチングアドバイザー、LABプロファイル(R)プラクティショナー。子...

>>>山名美穂の記事をもっと見る

Q.40代から高血圧になりやすくなるのはなぜですか

血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の壁を押す力のことです。

年齢を重ねると血管の弾力が落ち、血管が硬く・細くなっていきます。劣化したホースに水を流すと、強い水圧が必要になるのと同じで、血管が硬くなるほど血液を流すのにより高い圧が必要になり、血圧が上がりやすくなります。

血管の老化の主な原因が「動脈硬化」です。40代から血圧が上がりやすくなるのは、この動脈硬化が進みやすくなるためです。

さらに、自律神経の変化、ホルモンバランスの変化や、長年の塩分摂取の蓄積などが重なることで、40代以降は急激に血圧が上がりやすい体質へと変化していきます。

血圧が慢性的に高い状態が続くことを「高血圧症」と呼びます。

Q.高血圧を放置することで起こる重大な病気にはどのようなものがありますか

出典:写真AC

高血圧には自覚症状がほとんどありません。しかし、放置すると常に高い圧力が血管にかかり続け、血管の内側を傷つけます。これを修復しようとして血管が厚く硬くなり、動脈硬化がさらに進行します。

動脈硬化が進むと、血管は詰まったり破れたりしやすくなります。重要な臓器への血流障害が起こりやすくなり、特に脳・心臓・腎臓の3つの臓器へ深刻なダメージを与えます。

・脳:
動脈硬化で血管が破れれば「脳出血」、詰まれば「脳梗塞」になります。

・心臓:
冠動脈が狭くなると「心筋梗塞」や「狭心症」に。高い血圧が続くことで心臓に負担がかかり、「心肥大」や「心不全」の原因にもなります。

・腎臓:
細い血管が多いため傷みやすく、腎機能が低下します。進行すると透析が必要になる場合があります。

高血圧は静かに血管と臓器をむしばみます。これが、高血圧が「サイレントキラー」と呼ばれるゆえんです。

Q.「病院へ行くべき高血圧」と「様子を見ていい高血圧」の違いはどこにありますか

血圧は病院での測定値だけではなく、「家庭での血圧(平均値)」がより重要になります。日本高血圧学会のガイドラインでは、家庭血圧が「上が135mmHg以上、または下が85mmHg以上」の場合を高血圧症としています。血圧が1回だけ高いのではなく、家庭血圧で高い数値が続くようであれば、痛みがなくても受診が必要です。

また「上が180以上」などの極端に高い数値が出て、同時に頭痛、胸の痛み、息苦しさ、呂律(ろれつ)が回らないなどの症状がある場合は、緊急性が高い状態です。様子を見ずにすぐ救急医療機関へ連絡してください。

Q.高血圧症と診断された場合、病院ではどのような検査が行われますか

高血圧症と診断された場合、高血圧の原因を調べる検査と、高血圧による臓器へのダメージの程度を調べる検査が行われます。具体的な検査は以下の通りです。

・高血圧の原因を調べる検査:
血液検査や尿検査で、高血圧の原因となる病気やリスク因子の有無を調べます。具体的には、腎機能の低下、糖尿病や脂質異常症(コレステロール値や中性脂肪値の異常)。

・高血圧による臓器へのダメージを調べる検査:
心電図や胸部レントゲンで心臓の負担(心肥大・不整脈など)の有無を確認します。さらに必要に応じて頸動脈エコーや眼底検査を行い、血管の硬さや傷み具合(動脈硬化の進行)を評価します。

これらの結果から、脳・心臓・腎臓の重大な病気のリスクがどれだけ進んでいるかと、どんな治療が必要かを判断します。

Q.高血圧の予防・改善のために、日常生活でできる対策にはどのようなものがありますか

生活習慣の見直しは、高血圧の予防・改善の土台です。さまざまな対策がありますが、一度に全て行うのは難しいため、効果が高いものから以下の順番で取り組んでみてください。これらは高血圧の予防としても効果があります。

・減塩:
日本人は塩分摂取が多いため、まずは塩分の量を見直すと効果が出やすいです。「麺類の汁を残す」「醤油やドレッシングはかけず小皿につけて食べる」ことから始め、1日6g未満を目指しましょう。料理を作る際に塩分を極力減らし、どうしても味が薄いと思ったら小皿のしょうゆや塩を「少し」つけて食べるのが近道です。

・体重管理・飲酒量の調整:
体重が標準より多い方は、標準体重に近づけることで血圧がかなり下がります。BMI 25未満を目標に、少しずつ体重を落としましょう。飲酒量の調整も体重管理につながります。

・有酸素運動:
週に合計150分程度、ウォーキングなどの有酸素運動をしましょう。急に激しく行うのではなく、少し息が弾む程度を長く続けるのが大切です。

・睡眠・ストレス管理:
睡眠不足や慢性的なストレスも血圧を上げます。寝る前のスマホを控え、リラックスできる習慣(入浴・ストレッチなど)を日課にしましょう。これらを続けると、長期的に薬と同じくらいの効果を期待できることがあります。

・節酒・禁煙:
アルコールは適量に留めましょう。タバコは血管を収縮させるため、禁煙をお勧めします。

血圧の管理は、大きな病気を防ぐための「先行投資」です。今から少しずつ血圧を整えておくことで、将来の脳・心臓・腎臓のトラブルを減らせます。

まずはご自宅で血圧を測る習慣から始めてみてください。もし基準値を超えていたら、医師に相談してくださいね。

教えてくれたのは・・・

林裕章(はやし・ひろあき)林外科・内科クリニック理事長

国立佐賀医科大学を卒業後、大学病院や急性期病院で救急や外科医としての診療経験を積んだのち2007年に父の経営する有床診療所を継ぐ。現在、外科医の父と放射線科医の妻と、その人その人に合った「人」を診るクリニックとして有床診療所および老人ホームを運営。科学的根拠だけでは語れない、人間の心理に寄り添う医療を実践している。また、福岡県保険医協会会長として、国民が安心して医療を受けられるよう、医療者・国民ともにより良い社会の実現を目指し、情報収集・発信に努めている。

取材/文:山名美穂
編集:サンキュ!編集部

関連するキーワード

 
 

PICK UP ピックアップ

TOPICS 人気トピックス

RECOMMEND