放置は危険!「コレステロール高め」「中性脂肪高め」が招く“ある日突然”の大きな病気

2026/01/31

「コレステロールが高い」「中性脂肪が高い」と指摘されていても、自覚症状がないと様子見にしてしまいがちです。しかし、放置すると重大な病気を引き起こす可能性も。

詳しいお話を、用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニックの菊池真大院長に聞きました。

子育て・心理分野を得意とするチャイルドコーチングアドバイザー、LABプロファイル(R)プラクティショナー。子...

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Q.「コレステロールが高い」「中性脂肪が高い」と指摘されるとき、体の中では何が起きているのでしょうか

健康診断などで「コレステロールが高い」「中性脂肪が高い」と指摘されるのは、医学的には「脂質異常症」に該当する場合です。脂質は体に不可欠な成分ですが、血液中の量が適正範囲から外れると動脈硬化が進み、さまざまな病気のリスクが高まります。

脂質異常症は以下の3つのいずれか、または複数が当てはまります。

・LDLコレステロール(LDL-C)が高い:
LDL-Cは、悪玉コレステロールと呼ばれるものです。LDL-Cは肝臓から全身の細胞へ、細胞膜やホルモンの材料となるコレステロールを運ぶ働きを持ちます。一方で、増えすぎると血管壁に蓄積し、動脈硬化を進め、心筋梗塞・脳梗塞の主な原因になると考えられています。

・中性脂肪が高い(高トリグリセライド血症):
中性脂肪はエネルギー源として体に蓄えられる脂質です。食事の影響を受けやすく、高すぎると動脈硬化を促進し、膵炎のリスクにもつながります。

・HDLコレステロール(HDL-C)が低い:
健康診断などで指摘される脂質異常の多くは「高い」ケースですが、「低すぎる」ことが問題になる場合もあります。

HDL-C、いわゆる善玉コレステロールが低いのも、動脈硬化が進む原因になります。HDL-Cは血管や組織に余ったコレステロールを回収し、肝臓へ戻す働きを持ちます。HDL-Cが少ないと、血管壁にコレステロールが残りやすくなり、動脈硬化の進行につながります。

具体的な脂質異常症の判断基準となる数値は以下の通りです(日本動脈硬化学会)。

・LDLコレステロール: 140 mg/dL以上
・中性脂肪 :150 mg/dL以上(空腹時)
・HDLコレステロール:40 mg/dL未満

以前は血中の脂質の異常には「高脂血症」という名称が使われていましたが、2007年に日本動脈硬化学会のガイドラインで「脂質異常症」に変更されました。HDL-Cが「低い」ケースも含まれるため、より包括的な用語が採用されたのです。

Q.脂質異常症に自分で気づくことはできますか

脂質異常症はLDLコレステロールが高い、中性脂肪が高い、HDLコレステロールが低い、いずれの場合でも症状がほとんど出ません。自覚症状がないまま動脈硬化が静かに進むことが、脂質異常症の最大の問題点と言えます。

脂質異常症は血液検査で分かる数値異常で、体の表面に変化を起こす病気ではありません。異常な脂質は血管の中に少しずつ溜まり、ゆっくり動脈硬化を進めますが、痛みや見た目の変化を伴うことがほとんどないため、自覚症状が出にくいのです。

ごくまれに身体のサインとして、黄色腫(皮膚の脂肪沈着)、眼瞼黄色腫(がんけんおうしょくしゅ:まぶたにコレステロールが沈着してできる黄色いふくらみ)、アキレス腱黄色腫などがみられるケースがあります。これらは、家族性高コレステロール血症(FH)を疑う重要なサインとなります。

また、超音波検査で脂肪肝を指摘される場合には、背景に中性脂肪の高値や、インスリン抵抗性(インスリン[血糖を下げるホルモン]が効きにくくなる)が隠れていることがあります。

心筋梗塞や脳梗塞を発症してから、脂質異常症があったと分かるケースもあります。また、動脈硬化が進行して、下肢動脈虚血(足の血流が悪くなる)として症状が現れることもあります。中性脂肪が著しく高い場合には、膵炎を起こして脂質異常に気づく場合もあります。

Q.脂質異常症を放置することで起こる重大な病気について教えてください

脂質異常症を放置すると、動脈硬化が進行します。さらに動脈硬化が、全身の血管でさまざまな病気を引き起こします。

詳しくは以下の通りです。

・動脈硬化:
動脈硬化は脂質が血管壁に沈着して炎症を起こす病気です。LDLコレステロールは動脈硬化の主要な原因で、LDL高値が長期間続くと、冠動脈疾患・脳血管疾患のリスクが大きくなります。

・心筋梗塞:
動脈硬化が冠動脈で進行し、血管が詰まると心筋梗塞を発症します。心筋梗塞は発症直後の致死率が高い病気です。LDLコレステロールが高いほど、心筋梗塞を起こすリスクも上昇することが分かっています。

・脳梗塞:
動脈硬化は脳卒中の重要な危険因子でもあります。特にアテローム血栓性脳梗塞と強く関連します。脳梗塞は突然の麻痺・言語障害を引き起こし、後遺症が残ることも多いです。

・末梢動脈疾患:
動脈硬化で下肢の血管が詰まると、間欠性跛行(歩行時の痛み)が出現します。進行すると潰瘍・壊死に至ることもあります。

・急性膵炎:
中性脂肪が極端に高い場合(一般に 1,000 mg/dL 以上)には、急性膵炎のリスクが高まります。急性膵炎は、激しい腹痛・嘔吐を伴う重篤な病態です。

脂質異常症は、症状がないまま血管を傷め続け、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞として現れる病気です。気づかないうちに、血管の中では変化が進んでいる可能性があるため注意が必要です。

Q.脂質異常症になりやすい人・注意が必要な人の特徴を教えてください

出典:写真AC

以下に当てはまる人は、脂質異常症になりやすい・注意が必要な人と言えます。

<年齢と性別>
LDLコレステロールの値は、加齢とともに上がりやすくなります。男性では40代以降に増え、女性では閉経後に急増します。

<既往歴>
・2型糖尿病
・高血圧症
・代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)
・甲状腺機能低下症
・腎臓病(ネフローゼ症候群など)

<生活習慣>
・揚げ物・加工肉・菓子・糖質の多い食事、夜遅い食事、アルコールの多飲:中性脂肪が上がる原因となる
・運動不足:HDLコレステロールを低下させる。内臓脂肪を増やし、中性脂肪を増やす
・喫煙:HDLを低下させ、動脈硬化を加速させる

<遺伝>
・ 家族性高コレステロール血症の人:
家族性高コレステロール血症は、遺伝によってLDLコレステロールが非常に高くなる病気です。若い頃からLDLが高値(180〜200 mg/dL以上)となります。

家族性高コレステロール血症になる方は、若い年齢で心筋梗塞を起こした家族がいるケースが多いです。また、身体的な特徴として、アキレス腱肥厚(厚くなること)・まぶたや肘などに黄色腫が見られることがあります。

<家族歴>
・家族歴がある:
両親や兄弟に脂質異常症や心筋梗塞や脳梗塞を起こした人が多い場合、特定の遺伝子多型(遺伝子の個人差)の影響で、LDLコレステロール・中性脂肪が上がりやすくなる可能性があります。

Q.脂質異常症を予防・改善するために日常生活でできることはありますか

脂質異常症の予防や改善には、食事療法や運動療法が有効です。

<食事療法>
・糖質のとりすぎを控える:
白米・パン・麺の量を少し減らす、夜遅い時間の炭水化物を避ける、甘い飲み物・お菓子を控えると、特に中性脂肪の改善につながります。

・脂質の質を変える:
揚げ物・加工肉・バター・ラードの摂取を控える、魚(特に青魚)の摂取を増やす、オリーブオイルやナッツを適量摂るとLDLコレステロールの改善につながります。また、野菜・海藻・きのこに含まれる食物繊維には、LDLコレステロールを下げる効果があります。

・アルコールを控える:
アルコールは中性脂肪を大きく増やします。特にビール・日本酒・ワインは影響が大きいとされます。

・食べる順番や食べ方を工夫する:
食べるときは「野菜→たんぱく質→炭水化物」の順に食べましょう。また、早食いをやめ、夜遅い時間の食事を避けることも有効です。

<運動療法>
・有酸素運動:
脂質異常症の予防・改善に最も効果が高いとされる運動療法です。目安は週に150分以上で、分割して行ってかまいません。1日30分のウォーキングを週5日行うなどするといいでしょう。

・筋トレ:
筋肉量が増えることで基礎代謝が上がり、脂質が上がりにくい体質を作ります。スクワットや腕立てなどを週に2~3回行いましょう。重いダンベルなどを使わなくても自重(自分の体重そのものを負荷にして行う運動)で十分です。

・座り過ぎを避ける:1時間に1回は立ち上がるようにしましょう。

なお、次のケースでは薬物療法を必要とします。

・LDLコレステロールが非常に高い(160〜180 mg/dL以上)
・家族性高コレステロール血症の疑いがある
・糖尿病・高血圧・喫煙などによる動脈硬化リスクがある
・心筋梗塞や脳梗塞の既往歴
・中性脂肪が非常に高い(500 mg/dL以上)

脂質異常症は気づかないうちに静かに進む病気です。しかし、正しく理解し、食事や運動といった生活習慣を見直すことで、未来の重大な病気のリスクを大きく減らせます。今はなにも感じていなくても、早めに血液検査を行い、現在のコレステロールや中性脂肪の状態を確認してみましょう。

教えてくれたのは・・・

用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニック 菊池真大院長

慶應義塾大学医学部卒業。東海大学医学部客員准教授。米国ペンシルバニア大学消化器内科元博士研究員。日本アルコールアディクション医学会理事。日本総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本肝臓学会専門医、日本内視鏡学会専門医、日本人間ドック健診専門医、日本病態栄養学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。2024年、メタボとロコモを同時予防管理する「用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニック」を東京都世田谷区に開業。

取材/文:山名美穂
編集:サンキュ!編集部

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