足がつったら揉まずに「伸ばす」が正解!こむら返りの正しい対処法と受診の目安

2025/12/25

こむら返りは、水分不足や冷えから血流障害・臓器の病気まで、さまざまな原因で起こります。

注意すべきサインや受診の目安、予防策や応急処置などについて、用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニックの菊池真大院長に聞きました。

子育て・心理分野を得意とするチャイルドコーチングアドバイザー、LABプロファイル(R)プラクティショナー。子...

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Q.こむら返りが起こる原因を教えてください

こむら返りは、ふくらはぎの筋肉が突然強く収縮して起こる筋痙攣で、いわゆる「足がつる」状態のことです。筋肉が硬く張って動かしにくくなるのが特徴で、一過性のものであれば数秒〜数分でおさまります。

こむら返りを起こす原因は、生活習慣や一時的な状態に関連するものから、全身性の代謝・循環障害や臓器不全などの重大な病気によるものまで、幅広く存在します。

生活習慣や一時的な状態に関連するもの
・脱水・冷えなど:水分不足や長時間の同一姿勢、運動後などに起こりやすくなる
・妊娠:下肢の血流変化やミネラル不足の影響によるもので、夜間に起こりやすい
・ミネラル不足(マグネシウム・カルシウム・カリウム):バランスの悪い食事や下痢、発汗、利尿剤使用などで起こる

軽度~中等症の病気によるもの
・貧血:酸素供給不足により筋肉の痙攣が起こる
・糖尿病:末梢循環障害や神経障害によって引き起こされる
・甲状腺機能異常:代謝異常で筋肉の収縮・弛緩が乱れる
・下肢静脈瘤:血流のうっ滞によるもので、特に夜間に起こりやすい

重大な病気によるもの
・慢性腎不全:電解質異常や尿毒症で筋痙攣が起こりやすくなる
・肝硬変:代謝障害・低アルブミン血症で筋肉が過敏になることで起こる
・深部静脈血栓症:血流障害に伴い、強い痛みと痙攣を起こす。血栓による塞栓のリスクにも注意が必要
・閉塞性動脈硬化症:下肢の血流障害で夜間に起こりやすく、歩行障害を伴うこともある
・脊髄疾患:神経圧迫によって慢性的な筋痙攣が生じる

Q.大きな問題がないこむら返りと、注意が必要なこむら返りの見分け方を教えてください

出典:写真AC

以下のタイミングや原因で起こるこむら返りは、大きな問題がないことが多いです。

・運動直後や長時間立ち仕事の後:筋肉疲労による一過性の痙攣
・水分不足や汗をかいた後:脱水や電解質(ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム)の不足が原因
・冷えや寝姿勢の影響:冬の夜間や足元の冷えによる血流の悪化が原因
・妊娠や加齢:血流やホルモンの変化による一時的な症状

これらは生活習慣や環境調整で改善が期待できます。水分補給・ストレッチ・保温などの対策が有効です。

一方、次のようなこむら返りには注意が必要です。

・頻繁に繰り返す:週に何度も起こる、または数カ月続く
・しびれ・むくみ・血管の浮き・だるさを伴う:下肢静脈瘤や血管疾患の可能性
・原因が思い当たらないのに多発する:肝硬変など肝疾患のサイン
・しびれや感覚の鈍さを伴う:糖尿病・腎不全・脊柱管狭窄症など慢性疾患に関連
・夜間頻発して生活に支障をきたす:血流障害や神経障害の可能性

Q.重大な病気が背景にあるこむら返りでは、どのようなサインや症状が一緒に出やすいですか

単なる疲労や脱水によるこむら返りであれば一過性で終わりますが、むくみ・しびれ・皮膚の色の変化を伴う場合は、血管や臓器の病気が背景にある可能性があります。

また、夜間に繰り返す、生活に支障が出るほど頻繁に起こる場合は、糖尿病や腎臓・肝臓の病気が隠れている可能性があります。

Q.こむら返りで病院を受診する目安を教えてください

頻度と随伴症状(ずいはんしょうじょう:同時に現れる症状)・背景疾患の有無が、病院を受診する判断の目安となります。

頻度・持続
・週に何度も繰り返す
・数分以上続く強い痛み
・数カ月以上慢性的に続く

随伴症状
・しびれ・感覚鈍麻(かんかくどんま):末梢神経障害や糖尿病性ニューロパチーの可能性
・むくみ・血管の浮き:下肢静脈瘤や深部静脈血栓症の可能性
・皮膚色調の変化(蒼白・紫色):血流障害や閉塞性動脈硬化症の可能性
・全身症状(倦怠感・黄疸・浮腫):肝硬変や腎不全など臓器不全のサイン

背景疾患
・糖尿病・腎疾患・肝疾患・甲状腺疾患など慢性疾患を持っている
・透析中・肝硬変の既往がある

受診は、症状に応じて、整形外科・内科・血管外科が主な相談先となります。

Q.こむら返りを起こしやすい人や、注意が必要な人の特徴を教えてください。また、予防法や改善に有効なセルフケアはありますか

こむら返りを起こしやすい・注意が必要な人の特徴は以下の通りです。

・高齢者:筋肉量の減少・血流低下で夜間に頻発
・妊娠中の女性:血流変化やミネラル不足で下肢に起こりやすい
・運動不足または過度の運動:筋肉疲労や柔軟性低下が原因
・脱水になりやすい人:汗をかきやすい、利尿剤を使用している
・冷え性の人:冬や冷房環境で血流が悪化しやすい
・慢性疾患持ちの人:糖尿病・腎疾患・肝疾患・甲状腺疾患などで電解質バランスが乱れやすい
・薬を服用している人:利尿薬、降圧薬、スタチンなどが副作用で筋痙攣を誘発することがある

また、こむら返りの予防・改善には、水分補給・ミネラル摂取・ストレッチ・冷え対策が有効です。具体的には次のようなケアが挙げられます。

・ 水分補給:日中こまめに水を飲む。就寝前にも少量を摂取する
・ミネラル摂取:カリウム(バナナ)、カルシウム(乳製品)、マグネシウム(豆類・海藻)を意識して摂取する
・ストレッチ:寝る前や運動前にふくらはぎ・足首を伸ばす
・冷え対策:靴下・レッグウォーマー・湯たんぽで足元を温める
・生活習慣改善:過度な飲酒・カフェイン摂取を控える。十分な睡眠時間の確保と規則正しい生活リズム

また、こむら返りが起こったときは、応急処置としてつま先を手前にゆっくりと引いて筋肉を伸ばしましょう。

教えてくれたのは・・・

用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニック 菊池真大院長

慶應義塾大学医学部卒業。東海大学医学部客員准教授。米国ペンシルバニア大学消化器内科元博士研究員。日本アルコールアディクション医学会理事。日本総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本肝臓学会専門医、日本内視鏡学会専門医、日本人間ドック健診専門医、日本病態栄養学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。2024年、メタボとロコモを同時予防管理する「用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニック」を東京都世田谷区に開業。

取材/文:山名美穂
編集:サンキュ!編集部

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