「フレイル」とは、筋力や活力が低下した状態のこと。高齢者の問題と思われがちですが、コロナ禍の影響もあって、実は若い世代にもフレイル対象者が増加しています。
そこで伊藤園では2022年9月9日、「今日からはじめるフレイル予防」をテーマに「第7回 伊藤園健康フォーラム」をオンライン開催。そこで紹介されたフレイル予防のポイントと、お茶の効果についてご紹介します。
【かんたんテスト】あなたのフレイル度をチェック!
まずは上のイラストの「かんたんフレイルチェック」をしてみてください。
5項目のうち、3項目以上当てはまる場合は「フレイル状態」、 1〜2項目当てはまる場合は「プレ・フレイル(フレイルの前段階)」の疑いがあります。
フレイルとは「筋力や活力が低下した状態」で、近い将来に要介護へと進展する危険性が高まっている状態です。さらに、高血圧、糖尿病、認知症など、さまざまな慢性疾患のリスクと関連することも指摘されています。
これまでは、加齢によってフレイルから要介護の状態に進むものとされてきましたが、「フレイル状態」や「プレ・フレイル」の際に食事や運動などの習慣を見直すことで、健康な状態に改善できることが明らかになっています。
特に若いときから対策を始めることが、健康を保つ上でとても重要。上の「かんたんフレイルチェック」で当てはまらなかった人も、日ごろから対策をすることが大切です。
どのようなことに気をつけ、何を始めれば良いのか、「第7回 伊藤園健康フォーラム」で紹介されたポイントをご紹介します。
フレイル対策は30・40代から!ポイントは「栄養・運動・社会参加」
「第7回 伊藤園健康フォーラム」では最初に、筑波大学 人間系 教授・山田実氏による基調講演「今から備えるフレイル対策 ―100年人生を見据えたミドル・シニア世代からできること―」が行われました。
実は筋肉(骨格筋)は、だいたい40歳頃から加齢による変化(衰え)があることがわかっているのだそうです。そのため、30・40代からしっかりと運動習慣を身につけ、筋肉の量をなるべく蓄えておくことが、高齢期の筋肉の状態を大きく左右します。
すでにフレイル状態、プレ・フレイル状態になってからでも、フレイル対策をすることで、健康な状態へ回復することは十分に可能。ウォーキングやスクワットなどの筋トレなど、無理せずできるものから取り入れましょう。
フレイル対策には、運動以外にも「栄養」「社会参加」があり、これをオート三輪に例えたのが上のイラストです。
「特に重要なのが、社会的フレイルです。先頭の車輪である「社会参加」をすることによって、結果的に後輪の「運動」にも繋がり、食事もおいしくとれるようになります。
若いうちから町内会活動や自治会活動、行きつけのお店を持つことなど、同じ興味を持つ仲間と定期的に活動し続けることが重要です」(山田氏)
たんぱく質と抗酸化物質(緑茶など)をしっかりとることがカギ
次に、医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 身体活動研究部 行動生理研究室 室長の南里妃名子氏による講演が行われました。テーマは「フレイル予防のための健康な体づくり ―食事からのアプローチ―」。
南里氏の研究によると、なんと40・50代の約2割がフレイルに該当しているとのこと!やはり南里氏も、40代からの予防・改善に取り組むことが重要だと言います。
フレイルのリスクは太り過ぎでもやせ過ぎでも高くなるので、食事はフレイル予防・改善の観点からとても重要なポイント。特に留意したいのが「タンパク質」と「抗酸化物質」をしっかりとることだそうです。
「たんぱく質の摂取量が多いほど、フレイル該当率が低くなることが分かっています。たんぱく質は1食につき、片手の手のひらサイズの量を目安にとりましょう。これによって1日に必要な量をとることができます」(南里氏)
もう1つの抗酸化物質とは、体を傷つける活性酸素を取り除き、酸化の働きを抑える物質で、野菜や果物、緑茶などに多く含まれています。これが不足して体内の活性酸素の産生が過剰となると、慢性炎症や生活習慣病、がんなどと並び、フレイルのリスクを増大させる原因になると言われています。
「特に緑茶には“カテキン”という抗酸化物質が多く含まれています。これまでフレイルと緑茶との関連については報告が少なく、まだよく分かっていない部分もありますが、私たちの調査データを検討したところ、緑茶の摂取が多い人ほど飲まない人たちに比べてフレイルの該当率が低いという結果が得られています」(南里氏)
その他、1日3食しっかりとり、1日2回以上は主食・主菜・副菜 を組み合わせこと心がけたいポイントです。
お茶を介したコミュニケーションをプラスして、メリハリのある生活を!
最後は三菱総合研究所 ヘルスケア&ウェルネス本部 健康・医療グループ 主席研究員の大橋毅夫氏をモデレーターに、伊藤園中央研究所所長・衣笠仁氏も加わって「健康長寿のカギを握るのは何か」について議論が行われました。
衣笠氏は「生活習慣病を持っていると、その後にフレイルになるリスクが高いということから、40代・50代は生活習慣病に対する対策も必要です」と注意を促します。
緑茶に含まれる「ガレート型カテキン」には脂肪の吸収を抑制する効果があることが、伊藤園中央研究所で明らかになっています。その観点からも、緑茶を生活に取り入れることが健康長寿にも有効と言えるでしょう。
南里氏はさらに「緑茶には抗酸化物質の効果に加えて、一緒に飲みながら話をする機会ができることでコミュニケーションの部分でも良い影響があるのではないか」と、緑茶が「社会参加」にも有効であることを指摘。お茶を飲みつつ会話をしながらゆっくり食事を楽しむことが、フレイル予防にもなるのはうれしいことですね。
「運動・食事・社会参加という3つのフレイル対策を生活に取り入れるには、ダラダラとした1日を過ごさないということも重要です。メリハリを持った生活をするためには、やはり規則正しい生活習慣を身につけていただきたい。それが健康長寿の第一歩だと言えるでしょう」(山田氏)
「人生100年時代」 と言われる現代、今のうちからフレイル対策をして「健康長寿」を意識していきたいですね。
伊藤園ではこれからも健康性とおいしさを科学的に明らかにし、人々の「食」をいっそうおいしく楽しいものにする取り組みを進めていきます。
協力/株式会社伊藤園