「神宮大麻(じんぐうたいま)」という言葉を聞いたことはありますか?神宮大麻とは、毎年多くの人がお参りに来る三重県伊勢市にある伊勢神宮のお神札(おふだ)です。実は数ある日本の神社の中でも、全国の神社で受けることができるのは唯一「神宮大麻」だけです。
その理由とお神札の受け方、受けた後のおまつりの仕方についてご紹介します。
昔から特別な神社として敬われてきた伊勢の「神宮」
もうすぐ令和5年。家族や友人との初詣を楽しみにしている人も多いのではないでしょうか?
初詣は昨年の感謝を捧げて、今年1年の無事を祈願するもの。神さまに日ごろの感謝をお伝えし、家族の健康と幸せを祈って、明るく新年のスタートを切りましょう。
参拝する神社は、地元の守り神(氏神さま)が基本ですが、お参りは何回しても良いもの。氏神さまにお参りしたあと、行ってみたい神社を訪ねるのもお正月ならではの楽しみです。
中でも、昔から特別な神社として敬われてきたのが、三重県伊勢市にある伊勢の神宮です。伊勢の神宮は125からなるお社の総称で、正式には「神宮」とお呼びします。
神宮の歴史は、さかのぼること約2000年前。皇女である倭姫命(やまとひめのみこと)が、日本神話、天の石屋戸(あまのいわやと)に登場する天照大御神(あまてらすおおみかみ)の社を、伊勢の五十鈴川のほとりに建てたことがはじまりと言われています。
以来、神宮は皇室の御祖神(みおやがみ)であると同時に「日本人の心のふるさと」として「お伊勢さん」「大神宮さん」と親しく呼ばれてきました。江戸時代には伊勢参りを行う伊勢講が流行し、日本全国から多くの参拝者が集まりました。
神宮以外の神社でしか受け取れない特別なお神札「神宮大麻」
その神宮のお神札(おふだ)を、家の近くの神社で受けることができるのをご存じですか?
お神札とは、参拝の際などに神社で頒布(はんぷ)される紙・木製の札のこと。毎年新しくして、新たな活力をいただくものとされています。
神宮のお神札は「神宮大麻(じんぐうたいま)」と呼ばれ、神宮で奉製された後、正月を迎える前から日本全国の神社を通して受けられます。
神宮大麻の「大麻」は、本来「おおぬさ」と読み、神々への捧げ物、お祓いの際に用いられる木綿や麻を指します。現在「大麻」には大きく分けて「頒布大麻」と「授与大麻」の2種類があります。
「頒布大麻」は、全国の氏神神社を通して受けられる大麻、つまり神宮大麻のことです。国の平安と全国の家庭の無事、国民一人ひとりの幸福を祈り、国のすみずみに天照大御神の御神徳(ごしんとく)が行き渡るように祈念されたお神札です。
「授与大麻」は伊勢神宮の神楽殿で授与されている大麻のことで、神宮に参拝された方々の個人的なお願いも含めた参宮の「しるし」として、また、それぞれの祈念が込められたお神札です。
伊勢の神宮で直接お神札をお受けになった方も、神宮大麻と合わせておまつりしましょう。
お神札を受けたら、自宅におまつりしよう
新年を迎えてお神札を新しくすることは、神さまが新たなおちからでお守りくださるということ。お神札を受けたら、家族の健康や安全などを願いつつ、おうちにおまつりしましょう。
お神札は通常、上の写真のような神棚におまつりします。神棚のない場合は本棚の上など⽬線より上の清浄な場所におまつりします。最近では、現代の生活様式に合わせてデザインされたモダンな神棚や、少ないスペースでもおまつりできる卓上型の神棚・お神札立てなどもあります。
神棚やスペースに合わせて、米、酒、塩、水、左右に榊などをお供えするのも良いでしょう。形にとらわれず、毎日手を合わせてお祈りすることが大切です。
江戸時代には約9割もの世帯が伊勢神宮のお神札をおまつりしたそうです。令和5年は地元の氏神さまのお神札と一緒に、神宮大麻をおまつりしてみてはいかがでしょう?
協力/神社本庁