捨てるしかない、けど捨てられない…そんな服を、めちゃくちゃ素敵によみがえらせる方法があった!
2023/02/16
倉庫に眠る服を1着でも減らしたい!「黒染め」にすればキズも汚れも味となってよみがえる!アパレル会社の新たな挑戦、フロムストック。衣類ロスを減らし、地球環境と洋服のワクワク感を両立する事業について教えてもらいました。
<教えてくれた人>
アダストリアグループ
アドアーリンク フロムストック担当 舘野香梨さん(38歳)/神奈川県
たてのかおり●幼少期は親の仕事の都合でフランスに4年暮らすも、高校生までは服に興味なし。大学時代に「服」欲が開花。30代の今は自分の服より「娘の服が欲しい!」という衝動を抑えるのが大変(笑)。夫と長女(3歳)の3人家族。
History
●2003年(19歳)安くてかわいいブランド"ローリーズファーム"にハマって、服好きに。
●2004年(20歳)学生アルバイトとして同グループ"グローバルワーク"のショップ店員に。
●2007年(23歳)大学卒業後、正社員として入社。
●2018年(34歳)新規事業に特化した部署に異動。衣類ロスの現実を実感する。
●2019年(35歳)黒染めで余った服をよみがえらせる「フロムストック」事業に携わる。
●2021年(37歳)産休·育休を経て「フロムストック」事業専任に。主にオンラインストアの管理·運営を担当。
残された服の山を見てハッとした。「ただ服を売ればいいだけじゃないんだ」
大学卒業後、念願かなって大好きだったアパレル会社に就職。20代は使えるお金の多くを洋服代に充てていたと舘野さんは言います。「当時の私は自己肯定感が低くて、洋服は自分に自信を持つためのアイテムでもあったんです」。所有する服は200着以上。毎週末のように服を買う一方で、たくさん捨ててもきました。
服を別の視点から見るようになったきっかけは「衣類ロスを減らす」目的で立ち上がった他部署への異動。さらに自身の出産も重なり「娘が大きくなったときにどんな地球になっているか考えると、私は服をただ売ればいいわけじゃない。売る側として"地球環境"と"洋服のワクワク感"を両立させる方法を考えなくちゃいけない、と思うようになりました」。
このブランドがいつかなくなることが一番の理想
舘野さんが携わる「フロムストック」は、売れ残って倉庫に戻った「廃棄する服」を黒染めして付加価値をつけ、新たに売る事業。「社内で衣類ロスの勉強会をしたとき、キズや汚れも"カッコよさ"として生かせて、環境にかける負荷が少ないのが"黒染め"でした」。素材や商品ごとに染め上がりの色が異なり、強い個性が出るのも黒染めの面白いところ、と舘野さん。「一番の理想はフロムストックというブランドがなくなること。服を処分しないで済むサイクルをどうつくっていくかが、私たちアパレル業界の課題です」。
数字で見る衣類ロス
日本では1日当たりトラック130台分の服が焼却・埋め立てされている!
日本で1年間に販売される衣類は約81.9万トン、そのうち約48.4万トンが「ごみ」として焼却・埋め立て処分に。作る過程でも捨てる過程でも環境負荷が高いのがアパレル業界の現状。
※環境省サイト「SUSTAINABLE FASHION」より
ちなみにアダストリアでは焼却処分ゼロ。
東京の「染め」の職人たちが環境に優しい染料で染める
フロムストックの黒染めを行うのは、染料と排水に配慮し、環境への負荷を極力抑える東京・墨田区の染色加工会社「大染」。新品のまま廃棄されるはずだった服が日本の伝統的な染めの技術でもう一度よみがえる。
1枚1枚仕上がりが違うから面白い
綿やウールは染まるけれどポリエステルは染まらないなどの特徴から、全部真っ黒にはならない。「ステッチだけ元の服の色だったりと、仕上がりはさまざま。それが面白いんです」。ニットの価格は8000円~。
糸くずを出さないように元のブランドタグはそのままに
「フロムストック」のタグの下には元のブランドタグが。「元のタグを外す工程を加えると糸くずが出て染め窯が詰まる恐れがあるので、タグはあえてそのままに。コスト増も抑えています」。
おしゃれは大好き!だけど買う前に本当に欲しいかを考えるように
「知れば知るほど問題の根深さに気づかされる衣類ロス問題。おしゃれが大好きで、これからも娘と一緒にファッションを楽しみたいから、服を厳選して購入するように。ブランドではリメイクにも挑戦してみたいです」。
参照:『サンキュ!』2023年3月号「あしたを変えるひと」より。掲載している情報は2023年1月現在のものです。撮影/大森忠明 構成/岡部さつき(風讃社) 取材・文/宇野津暢子 編集/サンキュ!編集部