ナリスローズガーデン「バラ栽培は子育てのよう」棘と茎にも美容成分を発見!減農薬にも挑戦中

2023/10/16

バラの花びらでつくる化粧品に、これまで廃棄していた棘と茎も活かしています!廃棄も農薬もさらに減らしていこうと、バラを栽培するナリスローズガーデンの鎌田哲也さんはいいます。バラ栽培の魅力について教えてもらいました。

ナリス化粧品 ナリスローズガーデン 鎌田哲也さん 1973年宮城県生まれの50歳。車のディーラーの営業マン...

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●プロフィール
(かまだ てつや)1973年宮城県生まれの50歳。車のディーラーの営業マンを経て31歳で化粧品の原料となるバラの生産を手掛ける会社に転職し、バラ栽培の道に。2020年の事業統合を経て現在は敷地面積1万坪を超えるナリス化粧品直営のバラ園「ナリスローズガーデン」(宮城県登米市)でバラの生産管理の責任者をつとめる。妻と13歳の長女の3人家族で趣味はキャンプ。いちばん好きなバラの品種は日本原産の「正雪(まさゆき)」。

バラの花びらでつくる化粧品に、これまで廃棄していた棘と茎も活かす。「捨てるところを減らす」のも愛情

大変だけど感動は格別。バラ栽培は子育てのよう。

鎌田さんがバラ栽培の仕事に出合ったのは、20年ほど前。「バラといっても観賞用ではなく、化粧品の原料にするためのバラ栽培です。生産効率を上げるためには花を大きく健康に育てる必要がありますが、バラは病害虫がつきやすく、とにかく手間がかります」。販売元が“安心・安全”をモットーとするコープ化粧品ということもあり、農薬の使用は最低限。「花に直接水を当てない、虫を寄せつけない、でも過保護にし過ぎないなど、非常にきめ細かく対応しています。バラ栽培は僕にとって子育てのようなもの。だから大輪のバラが咲いたときの感動は格別で、バラの仕事は僕の誇りです」。

宮城、秋田、岩手の県境に位置する栗駒山の南東にあるくりこま高原に広がるバラ園。澄み切った空気ときれいな水が健やかなバラを育む
生のバラを使ったエイジングスキンケア「フリーリア」シリーズは日本生活協同組合連合会(CO・OP)で販売。右のふきとり化粧水は180mlで1950円、左のジェル状乳液は85gで1950円

生産者にとっては棘や茎もバラの一部。花と同じ思い入れがあるから、廃棄するたび心が痛んでいました

丹精込めて育てたバラのうち、使用するのは花びらと子房のみ。それ以外は廃棄。バラのごく一部にしか利用価値がないことにいたたまれなさを感じていたと鎌田さんは話します。「仕事だから淡々とやりますが、廃棄は悲しい仕事ではありますね。僕らが扱うバラには全長2mにもなる種類もあって、そんなバラの棘は太くて鋭くて刺さるとものすごく痛い。棘と茎を廃棄する作業と廃棄コストも大きな課題でした」。

バラの栽培に欠かせない剪定のたびに、たくさんの茎と棘を廃棄する。茎はかさばり、鋭い棘は刺さって痛く、使い道もないとされていた、いわば「やっかい者」だった
化粧品に配合するバラの花びらには厳しい品質基準がある。キズなどダメージを受けている花びらと同時に、美容成分が含まれない「がく」と「おしべ・めしべ」なども廃棄

育てる苦労を吹き飛ばす、圧倒的な美しさ。だからバラ栽培はやめられない

水分や栄養の管理、病害虫対策などバラ栽培にはこまやかな対応が必要な分、バラが花を咲かせたときの喜びは格別。「色とりどりのバラが凛と咲いている姿を見ると、育てた苦労は一瞬で報われます。バラ栽培は楽しいですよ」。

化粧品にはさまざまな種類のバラを組み合わせて使う。白いバラは鎌田さんが「いちばんの推し」と話す「正雪」、深紅は「ブラックゴールド」、ピンクと黄色は「ダブルデライト」

「棘と茎にすごい美容成分が含まれている!」研究所からのメールに、バラ園のスタッフが色めき立った

バラの生育過程で棘を取り除くとバラに元気がなくなるので「棘には秘めたパワーがあるのかも?」と感じつつ、まさか美容成分になるとは、と鎌田さん。「とくに棘には肌の老化を遅らせる抗酸化成分が多く含まれていると聞いたときはうれしかったですね」。

(右)生のままでは加工がしにくいので、乾燥させて使用する (中央)加工しやすいように粉砕 (左)窯で棘と茎から抽出したエキス。美容成分を豊富に含む
「今まで捨てていた物が実は使えるって、私たち生産者には大きな喜びですよね」「棘は“腕に傷を作る悪者”だったけれど、それが役に立つなんて驚きよ」

廃棄も、農薬も、さらに減らしていこう。私たちの挑戦は続きます

農薬の代わりにライトを使用。バラにUVBライトを当てることで、バラの自己免疫力が上がって病気になりにくくなり、UVBライトと誘蛾灯のダブル使用で、バラに卵を産みつける虫が激減したといいます。「今後もさらなる減農薬を目指します」と鎌田さん。

参照:『サンキュ!』2023年11月号「あしたを変えるひと」より。掲載している情報は2023年9月現在のものです。撮影/tsukao 取材・文/宇野津暢子 編集/サンキュ!編集部

 
 

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