【連載】書店員は、見た!「子育てに、涙や白目はつきもの!?」
2019/03/12
『サンキュ!』の取材でお会いしたYさん。書店の案内カウンターで働いています。毎日、本を探す人々から、さまざまな問い合わせを受ける日々。そのなかにある人間ドラマのあれこれをお伝えしています。
子育てに、涙や白目はつきもの!?
皆さま、こんにちは。今日も息子から「クソババア」と言われました。書店員Yです。あれだよね、順調に思春期を迎えた証拠として、クソババアと言われたら子育ては成功だって言うじゃない? 私の子育て、成功してるわー(白目)。
悩める母というのは、この世にたくさんいるもので……。先日、娘と図書館に出かけたときのことです。ベンチで本を読んでいたら、娘が突然慌てだし、「ママ、ティッシ!」と言うのです。鼻みずでも出たかとティッシュを渡し、ふと顔を上げると。わお。泣いている若いお母さんにティッシュを渡す娘の姿が!
行きがかり上、話を聞くと、「育児に悩んでいるけれど、引っ越してきたばかりで話せる相手もいなくて。地元のいちばん仲のよい友達に電話しようとも思うけど、未婚で仕事が忙しいみたいで」と、なかなかの重い悩み。そりゃ、涙も出ちゃうよね!
そのとき、私は話を聞くことしかできず、お別れしたのですが、数日後、彼女はスッキリした表情で書店に顔を見せてくれました。その日はご主人がお休みで、お子さんの面倒を見ているので気晴らしに出かけてきたら?と提案してくれたそう。そして聞けば、私のことを以前書店で見かけたことがあって、わざわざお礼を言いに来てくれたのです。
「おすすめの本を教えてほしい」という彼女に、育児の合間にも読みやすい2冊の本を紹介しました。
『みしのたくかにと』。息子が小さいころ、育児に悩んでいた私に、先輩ママが教えてくれた絵本なのです。子どもに読み聞かせても楽しい童話の顔をして、実はお母さんへのメッセージが詰まっていますよ!
もう1冊は、『Aさんの場合。』。同じ会社で働く、独身のAさんと既婚子ありのBさんの2人の視点で物語が展開。女性ならばきっと、Aさん、Bさん、どちらの気持ちもわかるのではないでしょうか。
図書館で彼女に会った日の帰り道、娘が「大人も泣くんだねー」とつぶやいていたのが印象的でした。大人も、悲しい日も寂しい日も、すごくうれしい日だってあるのよ。ママも子どものころは、大人にもそんな日があるって知らなかったな。「そういえば、ママってしょっちゅう泣いてるよね」。娘よ、いつか君も知るかもしれないが、母親って世界一涙もろい生き物なんだぜ。
*個人情報が特定されないよう一部脚色しています。
Yのおすすめする本
太っちょのおばあさんがまいた種が、王子を救う。そんな外国の童話のような絵本『みしのたくかにと』ですが、子育てのヒントもいろいろ。不思議なタイトルの種明かしは、ぜひ本の中で。『Aさんの場合』は、独身のAさんと既婚子ありのBさんの、2人の女性の視点で描かれる軽いタッチの16コマ漫画。とかく対立軸で描かれがちの視点ですが、人にはそれぞれに幸せがあり、悩みがあり、登場する女性たちにだれもが共感できるはず。
<書店員Yさん>
日本海側の町にある書店に勤務。1男1女の母。最近、突然日本史に興味がわき、古代日本が舞台の本から読み始めたのだそう
イラスト/泰間敬視 文/書店員Y 構成/加藤郷子
『サンキュ!』2018年12月号より抜粋