4月頃からの長い自粛生活があったことから、今年は“暑さに少しずつ慣れる”というプロセスがないまま夏を迎えました。今年の夏はどのように熱中症を予防したらいいのか、Naoko女性クリニック院長、高宮城直子さんに話を聞きました。
今年の夏、特に気をつけたいことは?
“STAY HOME”やマスクが熱中症を引き起こす大きな要因になるのでしっかり注意が必要!
体が暑さに慣れぬまま、本格的な夏に突入!
4〜5月にかけて“STAY HOME”で、あまり外に出かけることなく家で過ごしていた方も多いと思います。例年なら春から夏にかけて、少しずつ暑さに体を慣らしていくのですが、今年は“夏が来た”という意識がないまま、夏を迎えています。
体は、冬から春、夏へと季節が移り変わって中で、汗腺を冬モードから夏モードへとチェンジしていきます。低い体温でも汗をかきやすくして、汗の量を増やします。汗をかくと皮膚から水分が蒸発することで、体温を下げるのです。こうすることで、暑い中でも比較的楽に過ごすことができます。
この暑さに対応するためのプロセスのことを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」といいますが、今年は夏モードにチェンジすることなく、夏を迎えてしまっているので、自分で意識して「暑熱順化」をする必要があります。
マスクや運動不足も、熱中症の要因に!?
そして今年の夏は、暑い中でもマスクの着用が求められます。夏なのにマスクをしていると息苦しいですし、人は口から息を吐くことでも熱を放出しています。ソーシャルディスタンスが保てる場所や周囲に人がいない時には、マスクは外すようにしましょう。
そして運動不足も熱中症の要因になります。STAY HOME期間が長かったので、筋力が低下している人も少なくないかもしれません。筋力があると代謝が上がり、発汗能力も高まります。筋力が低下していると汗をかく力も低下していることがありますので、注意が必要です。
暑さに慣れるため、何をしたらいいの?
今のうちにできる対処法をご紹介します。
シャワーで済ませず、湯船につかる
汗腺を夏モードにするためには、暑さを経験して汗をかく練習をすることが必要です。夏はシャワーだけで済ませることが多いですが、ぜひ湯船につかって汗をかくようにしてください。サウナに行くのもいいですね。
運動不足を解消して筋力アップ
筋力が低下すると汗をかく力も落ちてしまいます。ウオーキングをしたり、家の中でスクワットをしたり、ヨガをしたり、少しずつ筋力を高めていきましょう。また車で移動することが多い場合は、近くのスーパーまで歩いて出かけるなど、意識して体を動かしましょう。
外の気温に慣れる
エアコンが効いた室内ばかりにいると、暑さに慣れることができません。まずは朝や夕方などに外で出かけて、外の気温に慣れるようにしましょう。散歩に出かけたり、庭やベランダでガーデニングをしたりするのもいいですね。
熱中症は、どんなシーンで起きやすい?
意外なシーンでも熱中症になる場合もあるので注意が必要です。
暑い室内で作業をしているだけで、発症することも
熱中症というと夏の炎天下で起きるというイメージがあるかもしれませんが、家の中など思わぬ場所でも発症します。
エアコンをつけずに、窓を開けて扇風機をつけている室内で過ごしている時でも起きます。寝ている時も、体が冷えるからといってエアコンをつけずにいると熱中症になることがあります。
いつも車移動ばかりで、あまり歩かない人も注意が必要です。イベントやオープンキャンパスなどで、暑い中歩くことで熱中症になることも多々あります。
熱中症のサインには、頭痛や吐き気も
では、どんな症状があれば熱中症を疑うべきでしょうか。意外な症状としては頭痛があります。「なんだか頭が痛いな」という時には、暑い場所にいなかったかなど、自分の行動を振り返ってみましょう。
□めまいがする
□顔がほてる
□頭が痛い
□吐き気がする(食べようとすると吐き気がする)
□からだがだるい
□体温が高い、肌が異常に熱い
□ふらふらする
涼しい場所へ移動し、体を冷やす
このような症状が見られたら、すぐに涼しい場所に移動し、濡れタオルや保冷剤などで、わきの下や首、太もものつけ根などを冷やします。同時に、経口補水液やスポーツドリンクなどで水分補給をしましょう。こうした対策をしても症状が治らなかったり、意識がなくなるような場合にはすぐに医療機関を受診てください。
熱中症にならないため、どう予防したらいいの?
飲み物の選び方や服装について紹介します。
水分補給は、ナトリウムやカリウムも入っているものを
汗をかくと、ミネラル(ナトリウムやカリウムなど)も一緒に排出されます。水分を摂る際は、電解質のバランスを整えるために、ミネラル分を含んでいる麦茶や経口補水液、スポーツ飲料なども飲むようにしましょう。
服装は、風通しのよいダボっとしたものを
汗をかいても乾きやすい、風通しのよいだぼっとしたものがおすすめです。ピタッとした洋服を着る場合には、高機能繊維などを使ったサラッとした汗がかわきやすいものを身につけましょう。
湿度にも気を配る
蒸し暑い(湿度が高い)と、皮膚から出た汗が蒸発しにくいので、熱中症になりやすくなります。窓を開けたり、扇風機を使ったりしていても、湿度が高いと発症リスクは高くなりますから、エアコンを使って湿度もコントロールしてください。
眠るときは、一晩中快適な温度に設定
眠るときの冷房は体に悪いから、できるだけつけたくない・・・という人は多いかもしれません。しかしタイマーなどで切れる設定にしていると、夜中に暑さで目覚めてしまいます。26〜27度くらいの温度設定で、一晩中つけておくほうが熟睡できます。冷えが心配な場合は、肌ぶとんやタオルケットを上手に使いましょう。
子どもは、親が定期的に水分補給をさせる
小学校に入るくらいになれば、子どもは喉が渇けば自分で飲み物をほしがります。しかし乳幼児は意外に暑さに鈍感で、親が意識して水分補給をさせることが大切です。「お水、ほしい?」と水分補給を促してみて、ほしがるようなら飲ませてあげてください。
ベビーカーを利用することも多いと思いますが、大人は150〜160センチぐらいの場所で32℃、地面に近いベビーカーの子ども(50センチぐらいの場所)は、35℃以上の暑さにさらされています。
顔が赤い、息が荒い、ぼーっとして元気がない、ぐったりしている、呼びかけても反応がにぶい、水分を飲むのを嫌がるような場合には、熱中症にかかっている可能性がありますので気をつけてあげる必要があります。
また赤ちゃんは冷房が体に悪いのでは?と考える親御さんもいますが、赤ちゃんも大人と一緒です。快適な温度になるようエアコンを使用してください。
暑さにしっかり慣れて、熱中症を予防していきましょう!
(監修者 プロフィール)
高宮城直子(たかみやぎ なおこ)
Naoko女性クリニック 院長
佐賀医科大学(現 佐賀大学医学部) 卒業。同大学産婦人科学教室入局。琉球大学医学部産婦人科学教室、糸数病院、アメリカ合衆国コーネル大学医学部生殖医学センター留学、ウィメンズクリニック糸数勤務などを経て、2010年にNaoko女性クリニック開院。産婦人科専門医で漢方にも詳しい。女性医療ネットワーク理事。
取材・文/渡邉由希