フルーツが美味しい季節、おうちでつくれる果実酒を仕込んでみませんか。梅酒のほかにも、好みのフルーツでかんたんにつくることができます。
酒税法に違反しない果実酒づくりのコツを、調理師のracssがご紹介します。

どんなフルーツが向いている?
おうちでつくる果実酒は、季節のフルーツでつくると楽しみが広がります。
春ならいちご、夏にはブルーベリー、冬にはゆずなどなど、氷砂糖で漬け込むので甘くて飲みやすい!色もきれいに出ます。炭酸水で割って自家製サワーを楽しみたいですね。
果実酒に向いている果物には、梅はもちろん、オレンジやレモン、ゆずなどの柑橘類、キウイやいちご、いちじくやびわ、ブルーベリーやカラント(カシス)類などがあります。家庭菜園で育てている果実を果実酒にして保存するのもいいですね。
まずは酒税法をチェックしておこう
実は、家庭でのお酒づくりは酒税法によって基本的には禁止されています。これは国の税収を守るためです。
お酒を製造販売するには「酒類製造免許」を取得しなければなりません。酒種ごと、製造場所ごとに許可が必要になる厳しい決まりがあります。
ですが梅酒などの自家用果実酒は、既に課税されたお酒を購入し他のものと混和してつくることから、いくつかの項目をクリアすることを条件に例外的に許可されています。まずはその条件をチェックしておきましょう。
おうち果実酒づくりの条件・漬けてはいけない果物もある

フルーツの中で「ぶどう」は果実酒にするのは禁止!
「マスカットのお酒」なんてきっと美味しいだろうと思いますが、どの種類のぶどう(山ぶどう含む)も酒税法違反になるんです。ご注意くださいね。
なお、国税庁のサイトに掲載されている「 【自家醸造】お酒に関するQ&A」のページでは、ぶどう以外にも自家用であっても使ってはいけない食材として以下のものが紹介されています。
1 米、麦、あわ、とうもろこし、こうりゃん、きび、ひえ若しくはでん粉又はこれらのこうじ
2 ぶどう(やまぶどうを含みます。)
3 アミノ酸若しくはその塩類、ビタミン類、核酸分解物若しくはその塩類、有機酸若しくはその塩類、無機塩類、色素、香料又は酒類のかす
おうち果実酒づくりの条件・度数の高い酒を使用する

家庭で果実酒をつくるときには「アルコール度数20度以上の酒」を使って漬け込むよう指定されています。これは発酵が進んで別のお酒に変化し「酒類製造」になってしまわないためです。
それで果実酒づくりには、ホワイトリカー(甲類焼酎)や果実酒用の日本酒、ジンやウォッカ、ブランデーやウィスキーなどアルコール度数が高いものを使用します。
中でもホワイトリカーは無色で味のクセがなく、果実の色や風味を引き出せるので最もおすすめ!ホワイトリカーの中でも度数の高い35度を選べば、フルーツの成分が早く出てくれますし、カビの心配なく保存ができます。
時間が経つほど濃厚でまろやかな味わいになる自家製果実酒。たっぷりつくって数年保存したいときも度数の高いお酒でつくりましょう。35度のホワイトリカーで果実を漬け込むと果汁等により薄まり、最終的にはアルコール度数が20度前後になるはずです。
おうち果実酒づくりの条件・自家用に限る

家庭で果実酒をつくるときの条件で大事なことは、「自ら消費するため」ということです。(酒税法第43条第11項)
自分と同居の親族が飲むためにつくる「自家用」ならOK。販売はできません。
「じゃあ、友だちといっしょに飲んだら違反になるの?」「友だちにあげちゃいけないってこと?」なんて疑問が湧いてきます。
でも安心してください。国税庁のQ&Aによると、「消費者が自ら飲むために作った梅酒であれば、ホームパーティーに招いた友人にふるまうことや友人に贈答することは、無償であれば問題ありません。」
せっかくきれいにできた果実酒、お友だちといっしょに楽しめるのは嬉しいですね。
かんたん!自家製レモン酒のつくり方手順

酒税法で指定された条件をクリアすれば、果実酒づくりはかんたん!
レモンを例に、おうちでできる果実酒のつくり方手順をご覧ください。
<材料>
レモン 5個(400g前後)
氷砂糖 300g(レモンの重さの半分が目安)
ホワイトリカー 800ml(レモンの重さの2倍が目安)
※レモンの皮も使用します。必要に応じて洗浄してください。
※用意する保存瓶は、広口の密閉できるガラス瓶が最適。お酒の量の2倍以上の容量が入る瓶を用意してください。
1.レモンの皮をピーラーなどで薄くむきます。白いワタの部分は苦みが強いのでなるべく入れないようにします。
残ったレモンの実についている白いワタもできるだけ除去し、実を4分割くらいにします。
2.消毒を済ませた瓶に、氷砂糖とレモンの実を交互に入れていきます。
3.一番上にレモンの皮をのせ、全体が浸かるようにホワイトリカーを注ぎます。
フタをして日の当たらない場所で保管します。
※レモンの皮は長く漬けると苦みが出ます。お好みで1週間から10日後に取り出してください。
4.氷砂糖が完全に溶けた頃から飲めます。1カ月頃から飲み頃に。
※1年以上保存したいときは、腐敗を予防するためにレモンの実を取り出します。取り出したレモンの皮や実は、甘くなっています。そのまま煮てアルコールを飛ばし、ジャムにしても。
果実酒づくりを楽しもう
酒税法に違反しないポイントさえ押さえれば、気軽におうちでつくれる果実酒。
好きな濃さで飲めますし、料理の風味付けに使うこともできますよ。数種類の果物を合わせてみたり、スパイスを入れてみたりと好みの味を追求するのもいいかもしれませんね。
■執筆/racss
調理師・食育インストラクター2級・菜園家。食材を大事に使う節約料理や保存テクなど、毎日の料理が楽しくなるひと工夫を中心に執筆している。「racssblog」では、ごはん雑記や菜園の様子を発信中。
編集/サンキュ!編集部