【連載】熟れすぎMANGO VOL.136
2018/01/10
ちはるの老眼鏡!?「ノンフィクション人生」
お陰さまで、15周年です!
私の経営するカフェ、「チャム・アパートメント」は、15周年を迎えた。青山の路地裏で小さなお店から始めて、その2年後、目黒に移転しての15年間。開店当時は小学校2年生だった息子も23歳の青年になった。私もアラサーからアラフィフになっちまってる。時の流れは本当に早いものだと実感する今日この頃だ。
始めたばかりの頃は、経営の「け」の字も分からず、少しお金が入れば、すぐに内装や備品を買いまくり、体裁や見てくればかりを重視する最悪のオーナーだったと思う。
そんな私を叱咤激励し、一緒にチャムを守ってきてくれたスタッフ達がなによりの財産だ。この15年の間、チャムで働いてくれた子達はどの位いるのだろう。アルバイトをいれると、ざっと100人近くになるのかな。出会いや別れ、喜怒哀楽、様々なスタッフと抱えきれない物語があった。それらは芸能界しか知らない世間知らずな私にとって、本当に貴重な経験だったし、沢山の事を学ばせてもらった。
15年前、カフェブームで、街にはコーヒー店が一気に増え始めていた。チャムが開店して2、3年は「カフェのインテリア」と雑誌に紹介されれば、お客さまがずらーっと並ぶほどだったが、お洒落なカフェが当たり前になり、雑誌を握りしめていた人達の手には、いつのまにかスマートフォンが持ち替えられた。ネットでお店を点数付けする事が常識となり、それがお客さまの当たり前の価値観になる。そして、趣のある大好きだったお店は街から次々と消えていった。私もその大きな変化になかなかついていけず、何度も店を閉めてしまおうと思った。
でもそんな時、「まだ方法はある」と支えてくれたスタッフ達に心から感謝している。「あの、ちょっとお話があるのですが…お時間いただけますか?」神妙な顔つきのスタッフにこう切り出されると、内心ドキドキして逃げ出したくなる。
こういう場合、大抵は「お店を辞める」というお別れの話を聞くことになるからだ。女の子も多いので、別れ話の多くは「結婚」や「妊娠」など、おめでたい事も多い。
他にも「就職が決まった」「独立して店を始めます!」など、裏切り者!と思いつつも、笑顔で送り出してあげなくちゃいけない場合はかなり辛い。卒業式の時に先生が流してくれた涙の訳を深く理解できる気がする。立派になって巣立っていくのは本当に喜ばしい事だけど、置いてきぼりにされるような寂しさも拭えないのだ。でもね、別れがあるから出会いがある。これもこの店で学んだ事。「私はずっとここにいるから、いつでも帰っておいで!」
強がりでも、そう言って送り出せるようになった自分を少しだけ誇らしく感じている。
文/ちはる
ちはる/テレビ、CF、著書の企画などで活躍中。12年、14歳年下の旦那くんと再婚。目黒でカフェ「チャム・アパートメント」を経営。