天気予報でよく聞く「平年並み」の「平年」って何?「平均」とは違うの??気象予報士が解説
2024/04/19
天気予報を聞いていると、よく「今日は平年並みの陽気でしょう」とか、「平年を下回って寒くなりそうです」といった表現が出てきます。
なんとなく「平均」みたいなものかな?とは思いますが、具体的に「平年」って何なのでしょうか。
もし「平均」なのだとしたら、いつの「平均」…?
今回は、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、知っているようで知らない天気のコトバを解説してもらいます。
「平年」は“直近”の30年平均
「平年」というのは、直近の30年間の平均値のことです。
気象庁では、気温、湿度、気圧、風速、降水量、積雪量…などなど、すべての気象要素について「平年」の数字を計算して公表しています。
さらに、桜の開花日や、猛暑日・真夏日などの日数、梅雨入りの時期についても、「平年」が何カ月月と何日なのか計算されています。
これらすべての数字を毎年新たに計算し直すのは大変なので、「平年」の計算は10年に1度だけ行います。つまり、今使っている「平年」は1991年~2020年の平均で、あと7年経って2031年になったら2001年~2030年の平均に更新される、という具合です。
そのため、「平年」は“直近”の30年間の平均ということになります。
日本だけじゃない!「30年平均」は世界の標準
じつは日本の気象庁が独自に30年間の平均値を使っているわけではなく、気象に関する国際機関である「世界気象機関」でも30年平均を「平年」として使っています。
気温にしても降水量にしても、自然の影響でアップダウンを繰り返すため、30年くらいのスパンで平均を取れば、たまたま高かった年とたまたま低かった年が相殺されて、合理的な平均値が得られるためです(あとは、昔、最初に平年値を計算しようとした際に、30年前よりも古いデータが手に入りにくかったというオトナの事情もあります)。
「平年」の変化を追ってみると…
前述のとおり平年値は10年ごとに更新することになっていて、今から3年前の2021年にも平年値の更新がありました。
つまり、それまでは1981年~2010年の平均を使っていたのが、1991年~2020年の平均に変更された、ということになります。
単純に考えて、地球温暖化や都市化が進んでいることから、1981年~2010年の平均よりも、1991年~2020年の平均のほうが暑そうですが、実際どのくらい暑くなっていたのでしょうか。
たとえば最高気温が35℃以上になる「猛暑日」の日数は、ほぼ全国的に増加していて、約2倍になっていた地域も。
一方で、最低気温が0℃未満になる「冬日」の日数は広い範囲で減少し、とくに南関東では約半分に減りました。
ある年だけがたまたまそうなっていたわけではなく、30年を平均してもなお、これだけ変化しているわけですから、気候変動によって私たちが「新しい日常」のなかにいることがよくわかります。
天気予報で「平年」と言われたら?
天気予報では、気温や降水量などさまざまな要素について「平年より多い」や「平年より高い」といった表現がされます。天気予報でそういった説明を聞いたときは、平年から大きくはずれたものは“準備がしづらい”と思っておく必要があります。
たとえば「平年を大幅に下回る気温」と言われたら、通常ならもっと暖かいはずの時期に寒くなってしまうということなので、近くのお店に慌てて防寒グッズを買いに行っても手に入らないかもしれません。
また、もし5月に「平年を大きく超える降水量」と言われたら、6月なら大雨に対して準備万端のダムがまだ本格的に使えない可能性もあり、いつも以上に個々人の備えが必要になってきます。
天気予報で「平年より…」というフレーズを聞いたら、早めに準備して後悔しないようにしておきたいですね。
■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。
編集/サンキュ!編集部