手をつないで木の周りを回る子供と女性

親子と寄り添う保育士の仕事。もっとやりたい!でも時間が無い!毎日感じるジレンマをどう解決するか?

2024/01/26

さまざまな困難がありつつも、自分らしく働く道を模索している女性を取材している本企画。今回は、保育士の東智子さん(仮名・38歳)です。子どもとお母さんに寄り添いたいというライフワークを見つけ、自分の家庭も守りながら、仕事を続けています。

障がいのある子の保育。親の気持ちをどう支えてあげられるか、毎日悩みました

編集部:保育士としてお仕事をされていますが、この仕事を志したきっかけを教えてください。

東:高校性の頃から障がい児施設のボランティアに行ったりしていて、それで興味を持って保育士を目指すようになりました。

短大を卒業した後、一般の保育園に勤めました。その後、アパレル関係の仕事をしたこともあったのですが、やっぱり私は保育の仕事がしたいんだと気づいて。

ハローワークで探していたところ「市の契約職員として肢体不自由児の施設はいかがですか?」と声がかかり、計4年、施設で働きました。

編集部:一般の保育園とは違いますか?

東:車椅子が必要だったり、寝たきりだったりなど、肢体が不自由な子は、親子で一緒に通園することがほとんどです。

保育の合間にリハビリをします。理学療法士、作業療法士、言語療法士、心理士さんもいて、その一貫に保育がある形になります。

私は0歳児も担当していたのですが、生まれてすぐ障害があってそのまま入院した子もいます。そのお母さんとお話する機会もありました。

保育士はセラピストやお医者さんより身近だったりするので、親御さんと直接話をすることも多くて。それで「今ちょっとしんどそうですよ」とか、セラピストさんに伝えたりしながら一緒にやっていました。

20代、若かった自分の仕事は手探り

編集部:重要なお仕事でしょうが、大変なことも多そうです。

東:はい。もうドンって気持ちが重くなる日もありました。

まだ障害を容認できない親御さんもいて、いろんなことが不安で心配で、突然わーって泣き出してしまったりとか、園に来られなくなっちゃうお母さんもいたりしました。

その時私はまだ若くて20代半ばで、なんとかお母さんたちに寄り添いたいなとか、子どもたちが良くなってくれたらいいなって思ってはいても、アプローチの仕方がまだまだわかっていませんでした。

今だったら自分も子育てをしていてわかったこともあるし、また違うアプローチができたかもしれないんですけど、当時は手探り過ぎて。どうやってあげたらお母さんが楽になれるのかなと、一回悩み出すと結構辛かったです。

教育方針って、園によって全然違う。今の勤め先に共感

編集部:その後は出産もあって、一度その仕事を離れたんですね。

東:その頃に今の夫と出会って結婚を考え始めていて、他の先生から「もし妊娠を考えてるなら、何十キロも抱えて滑り台を滑ったりとか車椅子運んだりするのは初期は危ないから、一回離れたら」と言われました。

確かに、妊娠中に不安になったりするかもしれないなって思い、一回辞めて、出産後に今の職場に就職し直したんです。

編集部:それから勤め始めたのが、現在も務めている園ですか?

東:子ども園に一度勤めてから、今の園に入りました。今、8年目です。

今務めている保育園は、子ども主体の教育方針なんです。

頭ごなしにコレやれアレやれじゃなく、例えばブドウの切り絵を作るにしても、あらかじめムラサキの三角の紙を用意するんじゃなくて、たくさん色紙を準備して、子どもが自由に考えて作ります。

子どもたちの思いで、大人が想像していなかったようないろんな作品ができて、それをさらに伸ばしていくみたいな感じの園なんです。そういう考え方が、わりと障害児保育と繋がるところがあります。保育士側の準備は大変なんですけどね(笑)

編集部:素敵な園ですね。

東:職員の教育にも熱心なんです。趣味など自分の幅を広げましょうという制度があって、研修費を支給してくれて、エンターテインメント力を高める目的なら、その研修費でUSJに行くのもアリとか。

私は以前は全然本とか読まなかったんですが、その手当てのおかげで本を買うようになって、すごく読むようになりました。本当にいろいろ勉強させてもらってます。

時短だからといって仕事が減るわけではない。もっとやりたい気持ちとのせめぎ合い

編集部:保育って、やろうと思うとどんどん可能性が広がりそうです。

東:そういう意味では、時間が足りないんです。時短勤務だとしても、仕事量が減るってことはないんですよね。

私は8年目なので、若い先生が引き受けてくれることもあるのですが。やらなきゃいけないことはたくさんあるので、9時から4時じゃ全然落ち着かないです。

土曜日の出勤の時に早く行ってやったり、残業させてもらったり。保育計画とか、制作の準備とか、写真の販売とか、次から次に仕事があります。それでも今の園は、業務の一部を業者さんに外注して、効率化はしてはいるのですが…。

時短勤務は最後まで見れないのが切ない
時短勤務は最後まで見れないのが切ない

親御さんに寄り添いたいという気持ちがあるのに、お迎えの時間までいられないことも切ないんです。周りの人はみんな代わってくれるけれど、本当は、お迎えにきた親御さんとおしゃべりをして直接伝えてあげたいのにとか、子どもたちにももっとやってあげたいことがあるのに、時短だと難しいことが多くて、ジレンマを感じます。

「午後4時に退勤」が難しい…

編集部:ちなみに1日のスケジュールは?

東:5時くらいに起きて、朝ごはん、子どもたちと自分の準備をして、7時45分には家を出ます。子どもたちを保育園に送り届けて、8時半ぐらいには職場に着いて、ちょっとメールを確認したり前の日の帰った後のことを確認したりとかして、9時から出勤、そのまま4時まで働きます。

ただ、大体4時にあがれないんですよね。お迎えの時間だったり、おやつの後でバタバタしてるとか、赤ちゃんのクラスだとちょうど眠くてフニャフニャ言ってる時間なので寝かせとかなきゃとか……。

お昼休みに確認できなかったことを上司の先生に相談したりしていたら、もう4時半くらいになっちゃって。仕事ってなかなか割り切れないものがあってついつい…。

自分の暮らしや子育てと、保育士として子どもや親御さんにしてあげたいことの間で揺れ動くという東さん。今は産休や育休、時短勤務などでプライベートに重きを置きつつも、これからの仕事についても考えています。次回は、将来を見据えたキャリアアップについてもおうかがいします。

【お話を聞いた人】
●東智子さん(仮名・兵庫県・38歳)
夫、長女6歳、長男4歳、二男0歳の5人家族。結婚7年目。高校生の時の障害児施設ボランティアを経験したことから保育士を志す。育休などを挟みながら現在の保育園は8年目。

○お仕事データ
勤務形態 正社員
勤務時間 時短勤務(9:00~16:00)※現在育休中
年収 約300万円
お仕事内容 保育園教諭

東智子さん(仮名・38歳)
東智子さん(仮名・38歳)

イラスト/すぎやまえみこ 取材・文/尾崎真佐子 企画/サンキュ!コメつぶ編集部

 
 

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