「血管を見たら、針を刺したくなる」そんな危険?な癖がある人の職業は~お仕事座談会をリポートします

2023/12/08

全国から同じ仕事をしている人を集めて、職業別オンライン座談会を開催しました。
「看護師編」パート2では、普段聞けない業界話や仕事のやりがい、感動エピソードまで。ワーキングマザーとして働く看護師さんの日常に迫ります。


【参加してくださった看護師さん】
●木下さん<仮名> 東北地方在住。 義母、夫、子ども3人(小2・年中・年少)の6人暮らし。総合病院にて病棟勤務。主な業務は、循環器内科、脳外科病棟にて日常生活援助

●佐藤さん<仮名> 関東地方在住。 夫、子ども2人(小5・年中)の4人暮らし。 総合病院ICUにてパート勤務。主な業務は、超急性期の患者さんの全身管理

●尾崎さん<仮名> 関西地方在住。夫、子ども1人(6か月)の3人暮らし。総合病院の循環器病棟にて勤務。現在、育休中。主な業務内容は、心臓カテーテルや心不全、呼吸器の患者さんなどの看護

編集部)
働くママたちに「これは職業病かも」と思う習慣やクセはありますか?ってアンケートしたところ、看護師さんからは「血管見ちゃう」という回答が目立ちました。血管を見ると針を刺したくなるものなんですか? つい、クセでこんなことしちゃうなどあれば教えてください。

とりあえず、血管は見ますね。いい血管持った人を見ると「新人さんに打たせてあげたい」って

佐藤さん)※以下、敬称略)
20~30代の筋肉質で若い男性の血管を見ると「この人、駆血帯なくても採血しやすそう」って思います。

編集部)
すみません、駆血帯って何ですか? 採血をする時に腕にグルっと巻くゴムみたいな、あれですか?

佐藤)
そうです。あれです。ムキムキ血管出てる人とか、つい見ちゃいます! お年寄りも血管が出てるんですけど、お年寄りのはもろくて、同じ「出てる」でも違うんです。

なので、若い男性のいい血管した腕を見ると、この血管、新人さんにやらせてあげたい~ってなりますね。採血の練習としてやりやすそうだから。

編集部)
なるほど~。新人さんにちょうどいい血管っかぁ~。おもしろい。
ほかにもありますか?

「目を貸してください~」って言うのが、看護師だけに通じる言葉かもしれない

木下さん)※以下、敬称略)
看護師って「目を貸してください~」ってよく言うんです。ミスを防ぐためのダブルチェックのことなんですが、一般の人が聞くと目を貸してってどういうこと? ってなりますよね。看護師にしか通じない言葉まわしです。

これを見てほしい、現物をチェックしてもらいたい時に「目を貸してください」って言って、医師やスタッフに確認をお願いする感じです。

編集部)
初めて聞きました。私も使ってみようかな。「編集長、目を貸してください~」とか、言えるかな?

ベビーカーのことを車いすって言ってしまうんです

佐藤)
ついベビーカーのことを「車いす持ってきて」って言っちゃうことがあり、夫に何回か指摘されたことがあります。病院では車いすを扱うことが多いので、たまにベビーカーのことを車いすって言っちゃいます。

尾崎さん)※以下、敬称略)
私もついベビーカーを車いすって言いますね~。

編集部)
それは、パパはもちろん、周りのママたちも「え!何て言ったの?」ってなりそうですよね(笑)
ほかにも職業病だなって思うことはありますか?

尾崎)
子どもの予防接種で小児科に連れて行ったとき、子どもが動かないように抱っこして押さえたんですが、妙に押さえ方が上手だったらしく、初めての子どもなのにどうして? うん?っていう目で医師や看護師に見られましたね。

夫なんて、注射が怖くて激しく泣いてる子どもの姿を見て、隅の方で泣きそうな顔してるのに、私は職員なみに子どもを押さえちゃったりしてるんで。

あれ?みたいな。知らず知らずしている行動が、関係者かなって伝わってしまうようです。

佐藤・木下)
そういうの、確かに看護師あるあるかもですね。うんうん(笑)

編集部)
みなさん、頷いていらっしゃいますね。一つ質問なんですが、病院の問診票って伝わりやすい書き方のコツがあるんでしょうか?
私のような一般人だと「昨晩から熱出て、ずっと汗かいてます~」みたいな、ダラダラ経過を書きがちだと思うのですが、書き方の正解ってあるんですか?

尾崎さんは、アンケートの回答で「問診票がスラスラ書けちゃう」ってありましたが、どうですか?

問診表を完璧に書きすぎて、医師に関係者?ってバレちゃう

尾崎)
問診票はスラスラ書けちゃいますね。5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)で伝えたり、時系列じゃなくて相手が読んでイメージしやすいように書くようにしています。

例えば、発熱の経過だけでなく、アレルギー症状はなし、耳などの不調なし、など医師が考えるであろう予想を先取りして、問診票に細かく書いておく。

先生は忙しいだろうから、口頭であれこれ言うのではなく、あらかじめWEB問診票に細かく書いておくようにしています。お互い、短時間で効率よく納得できるように心がけていますね。

編集部)
ほほ~。

尾崎)
でも、問診票の内容が妙に相手に伝わりやすいみたいで、カルテに付箋で「看護師!」って貼られたことも。

編集部)
確かに。きっと問診票の書き方で、先生も関係者って分かっちゃうんでしょうね~。

こういう症状のときは〇〇か△△が予想される…みたいな、看護師さんだと目論見ができちゃうけど、一般の私たちが真似しようと思っても、ちょっとできない部分ですね。

看護師さんが自分の子どもを病院へ連れて行くところを観察してみたら、勉強になりそう。

ちなみに、医療の知識があると自分の子どもが病気やケガをしたときも慌てないものですか? 多少の熱ではビクともしない、みたいな…。

看護師といえど、自分の子どもの病気やケガには焦ってしまう

尾崎)
そんなことないですよ。この間、夫があぐらをかいた上に子どもを抱っこしていて20㎝くらいの高さから落としたことがあったんです。

1時間くらいずっと泣き止まず焦ったんですが、見た目は痙攣もしていないし、出血もなし。ちょうど金曜日の夜で土日も病院は休み。何とか様子を見て月曜日の朝、医師にみてもらった感じです。

子どもは問題なく大丈夫だったのでよかったんですが、やっぱり、自分の子に突然起こると話は別で、夫が正直引くくらい必死になりましたね。自分でも驚きました。

編集部)
お仕事のときは冷静でも、家で起こると焦ってしまうものなのですね。でも、すぐに痙攣や出血を確認されるあたり、やはりプロな感じがします。

看護師ならではのおもしろい習慣や出来事など教えていただき、有難うございました。
では、ここからは看護師のお仕事について、少し聞かせてもらえますか?

編集部)
毎日、看護師の仕事って本当にお忙しいと思うんですが、日常業務のなかで達成感を感じる時ってどんな時ですか?

点滴がピッタリ終わったとき、よし!って気持ちいい

木下)
点滴の管理ですかね。点滴を時間ぴったりに切り替えられると達成感ありますね。
点滴って滴下計算をするんですが、1分間に何滴って時計で合わせるんです。ただ、患者さんが動くと時間が変わってしまうんですよね。

患者さんってトイレに行ったり、食事したり動くので点滴の落ち具合がズレちゃう。なので、こまめに看護師が合わせて時間通りになるようにするんですが、予定通りにぴたっと切り替えられると、よし! みたいな感じです。本当に小さなことなんですけどね。

編集部)
なんだか、ぴたっと予定通りに終わると気持ちよさそうですもんね。
ほかの方はどうですか?

実は、看取りのタイミングもそうなんです

佐藤)
私の病院では、DNARの方針の患者さんについて、ご家族に大切な連絡をするのも看護師の役目の一つなんです。

編集部)
DNARって?

佐藤)
DNARって心停止もしくは呼吸停止した際、心肺蘇生を行わず終末を迎える患者さんのことですね。血圧が下がってきたり急変して、そろそろ看取りのタイミングが近くなるとご家族に連絡するんですが、そのタイミングを読むのが難しいんです。

連絡が早すぎても家族は病院で長時間待てず一度自宅に戻るなんてことも。でも、家族が帰った後すぐに心臓が止まるなんてこともあるんです。

編集部)
そうですよね。一大事だけどとても判断が難しそう。看取りのタイミングってそもそも読むことができるものなんでしょうか?

佐藤)
正直、読めないことのほうが多いんです。でも、つい先日、連絡してご家族が来てから30分後くらいに息を引き取られて…。その時はほっとしましたね。

ご家族にとってもとても大切な看取りの時間だからこそ、できるだけご家族に最後の時を一緒に過ごしていただきたい気持ちがあります。

編集部)
家族にとってはかけがいのない時間ですものね。改めて、看護師のみなさんの仕事は、いろいろな人生に関わる仕事なんだな~と実感しました。

尾崎さんは日常で何か達成感、感じることありますか?

スパっと読み通りに段取りできたとき、ヤッターって感じ

尾崎)
患者さんの衛生ケアも看護師の業務のひとつなんです。例えば、おむつ交換も1人より2人の方が早いので、スタッフ同士で声掛けををしたり、若い看護師の業務量をリーダーが把握し、きちんと時間内に終わりそうか、他の人の手が必要かなど毎日判断しているんです。

そうやってスタッフみんなで力を合わせ、1日の業務が段取りよく進み、定時で終わったときは、本当に達成感感じますね。

編集部)
忙しい仕事だからこそ、段取り通り、定時に上がれたら嬉しいもんですよね。

編集部)
毎日、小さな達成感を繰り返しながら業務をこなしていらっしゃると思うんですが、ここからは最近あった印象的な出来事などあれば教えてもらえますか?

患者さんのご家族に「話し相手になってくれただけでよかった」と言われたんです

木下)
脳幹梗塞という病気で入院していた患者さんの奥様の話なんですが、「話し相手になってくれただけでよかった、ありがとう!」と言われたのが嬉しかったですね。

もともと夫婦2人で暮らしていた方で、ご主人が倒れてから生きる気力がなく、食欲も下がって痩せてしまったよう。親族も近くにいなくて、近所の方に話すのは自分が辛くなるからイヤだと、周りに話せる人もいなかったご様子でした。

世間話や今後どうしたいか等の話も含め、面会時に1時間ほどゆっくり時間をとって対話したことで、奥様も少し気分が晴れたようです。本当によかったなと思いました。

編集部)
患者のご家族からありがとう! って言われるのは、やりがいの一部ですよね。でも、忙しい業務のなかで1時間の時間を割くって大変なことだと思うんですが…。

木下)
なかなか割けないことも多いのですが、その日はスタッフの人数も多かったので、時間を取ることができたんです。私は家族ケアってとても大切な仕事の一つだと思うんです。

重症度の高い患者さんが多い病棟なので障害が残る場合も多いし、患者さんだけでなく、その家族の心のケアって本当に大事だと実感しています。

編集部)
そうですよね。看護師のみなさんが、そんなふうに患者やその家族のことを思って寄り添って考えていただいてるなんて…。改めて、医療従事者の方にお礼を言いたいです。

「困った患者さん」だった90歳のおばあちゃん。誰もがもう助からないのでは?と思っていたけれど……

尾崎)
私の場合は、心筋梗塞で救急搬送されてきた90代のおばあちゃんの事が印象に残ってますね。その方、点滴は勝手に抜くし、叩く、蹴る、などけっこう大変で。

正直スタッフの中でも「あの人の担当はイヤだ!」みたいになりました。ご家族も患者さんが高齢なので積極的な治療は望まずでした。ご本人も、自分がお孫さんに迷惑かけるくらいなら早く死んだ方がマシと言ったりして。でも話を聞いているうちに、本当は生きたい気持ちがあることも分かって。

家に帰って愛犬に会いたい!ということを聞き出してからは「犬に会うこと」を目標にリハビリを頑張るようにしたんです。そうしたら、そのおばあちゃん、何と自宅に歩いて帰ることができるまで回復して。

編集部)
それはすごい!

尾崎)
ご家族とは、自宅へ戻れるほどにはならないだろうから、施設へって話になっていたんですが、自宅に戻れたんです。正直、ほとんどの医療スタッフもその方は高齢だし亡くなる可能性が高いかもと思っていたくらいでした。

笑顔でお礼を言って歩いて帰っていったおばあちゃん。まさかという感じで、とても印象に残っています。ご家族からもたくさん感謝の言葉をいただいたので、記憶に残っています。

編集部)
まるでドラマになりそうなお話。ご家族も本当に喜ばれたでしょうね、ワンちゃんも。やっぱり生きる原動力って大切!

末期がんのお母さん。どうしても子どもに会わせてあげたくて医師もスタッフも総出で支えた

佐藤)
少し前の話になるんですが、印象に残っているのは、末期がんの患者さんのことです。抗がん剤の影響で心臓をやられ、呼吸器もやられてしまい、人工呼吸器が必要になった患者さんがいたんです。

まだ、40歳くらいで小さい子どももいるママなんですが、命に直結する管が体に入っているので、声は出せず、手も動かせない、意識が朦朧としている状態。声が出せないので筆談なんですが、「子どもに会いたい」って希望が強くありました。

でも、当時はコロナ禍だったので、ICUは小学生以下の面談NGという状況。何とか子どもと面会できるようにするため、人工呼吸器を抜いて、一般病棟に移ることができないか、子どもに会いたいという希望の実現に向けて、医師と話し合いを重ねました。

その結果、無事に管が抜けました。医師もスタッフも総出でその方のバックアップ体制を作ることに。何とか一般病棟の個室に移ることができたんです。

編集部)
ほ~、よかった。

佐藤)
そして、ママと我が子が対面!みんなの希望が叶った瞬間でした。スタッフ一同、本当に感動して…。今でもよく覚えていますね。

編集部)
なんだか聞いているだけで泣いてしまいそう。医療スタッフが一丸となって患者さんの幸せを第一に考えてくださっているからこそ、実現できたことばかりですね。みなさん、素敵なエピソードを聞かせていただき有難うございました。

次回は、看護師さんの困った話、気になる人間模様についてお話を伺います。

*座談会は23年11月にオンラインにて実施。個人を特定されないよう、内容を一部変えている部分があります

イラスト/雨月衣 取材・文/西田有紀 企画/サンキュ!コメつぶ編集部

 
 

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