子育てを犠牲にしたくない。キャリアも積みたい。両方叶える人生は手に入りますか?~看護師ママの座談会リポート

2023/12/08

雑誌「サンキュ!」のモニターの中から、全国の看護師のみなさんを集めてオンライン座談会を開催。日常の悩みから笑える話まで、4回にわたって紹介してきました。最終回では、働くママとして気になるキャリアをテーマに語っていただきます。

【参加してくださった看護師さん】
●木下さん<仮名> 東北地方在住。義母、夫、子ども3人(小2・年中・年少) の6人暮らし。総合病院にて病棟勤務。主な業務は、循環器内科、脳外科病棟にて日常生活援助

●佐藤さん<仮名> 関東地方在住。夫、子ども2人(小5・年中)の4人暮らし。総合病院ICUにてパート勤務。主な業務は、超急性期の患者さんの全身管理

●尾崎さん<仮名> 関西地方在住。夫、子ども1人(6か月) の3人暮らし。総合病院 循環器病棟にて勤務(現在、育休中)。主な業務内容は、心臓カテーテルや心不全、呼吸器の患者さんなどの看護


編集部)
今日お集りのみなさんは、看護師としてのキャリアも10年以上と長い方ばかり。30代のワーキングマザーとして、今後のキャリアについてお話を伺ってもいいですか?

キャリアを積む時期とそうじゃない時期を分けて考えてもいいと思ったら少しラクになった

木下さん)※以下、敬称略
以前、サンキュ!5月号の特集「女性の働き方とお金大調査」を読みました。キャリアを積む時期と子育て優先の時期を分けて考えてもいいんだよっていう記事を見て、救われた気がしたんです。

編集部)
救われたとは、どういうことでしょうか?

木下)
子育て中もがむしゃらにキャリアを継続しなきゃと思ってたんですが、子育てを優先して仕事を少しペースダウンするのもアリかなって思えて気がラクになりました。

今まで10年くらい病棟勤務でキャリアも積んだんですが、やっぱり子ども達が小学生に上がると、学習面をきちんと見てあげたくなって。

でも、今の自分では余裕がなく時間を捻出できない事を悩んでたんです。この記事を読んで、キャリアを積む時期とそうでない時期の見極めって大切なんだな~って思いました。

編集部)
なるほど~。

木下)
子どもが小さい頃は少しキャリアの積み上げは置いておき子育て中心で過ごす。子どもが小学校になり手が離れたらキャリアを積み直す時期かなって記事では紹介されていたんですが、私の場合は、今はキャリアの優先順位を下げて、親として子どもの宿題を見てあげたり家族と過ごす時間を優先したいと思ったりしています。

編集部)
そうなんですね。今後は仕事を少し減らしたり、辞める事など考えたこともあるんですか?

子育てに重きを置いて、少し休みたい気持ちもある

木下)
そうですね。正直辞めてもいいかなって思うときもあります。フルタイムじゃなくパートで働くことも考えてみたり。

看護の仕事は自分でも十分キャリアを積めたかな、やりきった感があるので別の業界にチャレンジする、なんていうのも楽しいかな?と思うことも。

あとは、後輩育成に向いていると上司から言われたことがあるんです。後輩の悩みを聞いたり成長を見守ることにもやりがいを感じていたので、そういった方面に力を入れるのもいいのかなと漠然と思ったりしています。

編集部)
いろいろな選択肢を考えていらっしゃるんですね。次のステップが楽しみですね。

ほかの方は、どんな風にこれからのキャリアについて、考えていますか?

チャンスが巡ってきたときにつかめる自分でありたい

尾崎さん)※以下、敬称略
私の場合は、今育休中で、保育園が無事決まれば春に復帰したいと思っているところです。両親も遠方で頼れないので、もし保育園に落ちたら、割り切って仕事を一度辞めるしかないかなって。

編集部)
そうなんですね。

尾崎)
先ほどのキャリアの積む時期かどうかの見極め、とても勉強になるお話ですね。私の場合は、今まさに子どもを優先する時期なのかと。

でも、自分としては子育て優先の時期であっても、チャンスが来た時につかめる自分を作っておく事、今のうちの下準備も大切かなって思ったりしています。

編集部)
何か下準備として考えていることはあるんですか?

尾崎)
育休中の今のうちに看護以外のことをやってみようと思っていて、とりあえずファイナンシャルプランナーの勉強を始めたところです。

編集部)
すごい。でも、なぜファイナンシャルプランナーの勉強なんですか?

尾崎)
私、看護師の業界でしか働いたことがないので、一般常識がないなって思っていて。先日も妹に「お姉ちゃんの電話の出方は一般企業だと通じないよ」って言われたところです。

世の中のこと、お金の勉強にもなるファイナンシャルプランナーの資格をまずは学んでみようと思ってます。

編集部)
さらに視野が広がりそうですね。今、まだ子どもに手のかかる時期なのに、その向上心すごいと思います。

尾崎)
有難うございます。
あの、一つこの場で先輩ママのみなさんに相談したいことがあるんですが、いいですか?

編集部)
もちろんです。せっかくの機会ですから。

尾崎)
もし保育園に無事入れて復帰できたとしても、子どもの急な病気で休むことも多そうだし、いろいろ不安も多くて…。

そのあたり、どうやって乗り切ったか、職場での立ち振る舞い方など対処法あれば教えていただけますでしょうか?

子どもの病気で急に休んだりしそうで、心配…。まったく遠慮することはないですよ!

佐藤さん)※以下、敬称略
私は、子どもが6か月のとき復帰したんですが、1歳になるまでは月の半分くらい熱出して休んでいました。

近所に住む母に子どもを看てもらっていたんですが、当時の上司に「業務の事は気にせず休んでいいよ」って言われて気がラクになったのを覚えています。

普段まじめに頑張っている姿を見ていれば、周りも大丈夫だよって声をかけてくれるもんだと思いますよ。お互い様の事。1人休んでも、忙しくはなるけど何とかなるもの。心配しなくて大丈夫です!

尾崎)
そう言っていただけると有難い。

佐藤)
あと、1人目の時は3歳まで病院併設の保育園だったので、すぐにお迎えに行けたのはよかった部分ありましたね。そういった病院も選択肢の一つにしてもいいのかも。

尾崎)
なるほど~。

木下)
私も子ども3人いるんですが、けっこう休みますよ。子どもが熱を出すことはよくあるし、体調不良で有休なくなっちゃう感じです(泣)。

昔は、未婚の先輩が多いと急な休みを言いづらかったりしましたが、そもそも有休をもらうことは、働く上で当たり前の権利だし。

遠慮なく、子どものために休みたいんです、私にとって子どもは一番なんです!って正々堂々としていればいいと思います。

尾崎)
心強いお言葉。

木下)
あとは気にしすぎないこと。自分のメンタルケアも大切ですよ。そして、佐藤さんも言っていたように、みんなお互い様って思っているから、周りはそこまで気にしていないものです。安心して大丈夫!

そして、朝はどうしてもやることが多いので、朝の時間は子どもと自分のことだけやるようにして、あとの家事は全部夜に回すのもいいかもですね。

尾崎)
確かに。お二人からアドバイス、温かいお言葉聞けて安心しました。今日は本当に皆さんとお話できてよかったです。

編集部)
看護師の仕事に関わらず、育休中のみなさん、復帰するときに一番悩むところですもんね。少し不安な気持ちが和らいだようでよかったです。

ところで、佐藤さんは、正社員からパート勤務に働き方を変えてお仕事されていると思うんですが、何かきっかけがあったんですか?

佐藤)
私は、もともと大学病院で長く働いていたんですが、やっぱり子どもの保育園の送り迎え等時間的にムリなことが多くなってしまって、パート勤務に切り替えました。

編集部)
そうでしたか。

佐藤)
朝8時に勤務開始なんですが、とにかく職場に早く行きたくて。看護師にとって朝イチの患者さんの情報収集って大切なので、30分前には着いておきたいんです。

そうなると7時の早朝保育に子どもを預けるんですが、門の前で7時前から待機し7時になると同時に即行子どもを先生に引き渡して病院に行くみたいな…、それでもギリギリなんですよね。

編集部)
それは大変ですね。

佐藤)
お迎えもまた問題で、仕事柄時間通りのお迎えはムリなことの方が多くて。でも、保育園の先生からは必ず18時までに来てください!って言われるし、結局夫にお迎えはお願いしていました。

でも、夫も仕事があるので、だんだんギクシャクすることが増えてしまい、パート勤務に切り替えた感じです。1年経ちましたが、正直、正社員に戻りたいですね。

編集部)
いろいろご苦労されたんですね。ちなみに、正社員に戻りたいのはどうしてですか?

パートだとやりがいの一つが減る感じ。正社員は何といってもボーナスが魅力


佐藤)
今は9時~14時までのパート勤務なんですが、パートだと患者さんの担当につくことがあまりできないんです。普段はおむつ交換や清潔ケアなどをしたり、ICUから一般病棟に異動する患者さんのサポート、他病棟のヘルプなどを担当しています。

もちろん、やりがいあるんですが、やっぱり患者さんの担当を持ちたいし、技術や知識の積み上げも今のままだとあまりできないので、やりがいの一つが減る感じがして…。

編集部)
やりがいが減ってしまうと感じていらっしゃるんですね。いつ頃までに正社員に戻ろうとか、考えていますか?

佐藤)
下の子が小学生になったら正社員に戻りたいと思っています。正社員はボーナスがあるのも大きいですし!

編集部)
やりがいと収入面で考えると正社員に戻りたいってことですね。

佐藤)
はい、そうです。パートになって小5の長女の塾の送り迎えができるようになったものの、塾代ってけっこうかかりますよね。今度はお金がかかるようになって(泣)。

最先端の治療方法が学べる大学病院のICUに未練がある。体力があるうちに戻りたい

佐藤)
あとは、大学病院で働くことに未練があるので、戻りたいと思っています。ICUで最先端の治療法を学びたいし、重症な患者さんの看護など、大学病院でしかできない治療に関わりたいんです。

それには、体力、頭も使うので、年齢的にもギリギリかなと思っていて。それに、木下さんのように看護師として満足できるまで勉強した、働いたとは、自分ではまだ思っていなくて。

まだ中途半端かなと思っているので、もう一度チャレンジしたいんです。

編集部)
自分のキャリアについて真剣に考えていらっしゃいますね。またチャレンジして、キャリアを積んでいけるといいですね。

佐藤)
そうできればいいなって思っています。木下さんのように、自分で満足できるまでICUで働いたら、次のステップとして訪問看護や患者さんと長くお付き合いのできる仕事にも興味があります。

編集部)
本当に看護師が天職なんですね。

尾崎さんも頷いてましたが、将来のキャリアとして何か考えていることありますか?

旅行に行きたいという最後の夢を叶えてあげたり、看護のその先にも興味がある

尾崎)
私の場合、まずは職場復帰できるかが現実問題としてあるんですが、やりたいこととして、何となく考えていることはありますね。

今までいろいろな部署を経験したものの、病院でできることって限られているんです。特に、救急の患者さんの場合、命を救うことがすべて。

でももうひとつ、余命が見えてしまった人が、旅行に行きたい!同窓会に出たい!とか…そういった夢を叶えてあげるサポートにも興味があって。

ゆとりのある看護というか、患者さんの背景を知ったうえで寄り添った援助ができる仕事もいいな~、なんて思ったりしています。

編集部)
ステキなお仕事ですね。看護師の知識や経験がないとできないし、より患者さんとの関わりを深くもてる内容になりそうですね。

みなさん、しっかりとキャリアを積み上げてきた方ばかりですが、それぞれに思いをもって、次のステージに進もうと考えていらっしゃることがよく分かりました。

話を聞いているうちに、看護師でなくても、「自分のキャリアって、人生ってどうだろ?」と考えさせられるきっかけを与えてもらった気がします。

編集部)
本当に素敵なお話を聞かせていただき有難うございました。最後に、この記事を読んでくださった読者の方へ、特に子育てしながら頑張っている看護師さんに向けて、ひと言メッセージをお願いします。

女性メインの職場だからこそ、辞めないでずっと続けてほしいな

木下)
仕事と子育て、家庭の両立は大変だと実感しています。でも、看護師はまだまだ女性中心の社会なので、辞めないでずっと続けてほしいなって(自分は辞めようか悩んでますが…)。子育ての経験があるからこそ、より患者さんに寄り添える部分もあると思うんです。両立は大変ですが、疲れたら休む、自分に折り合いをつけて頑張ってほしいです。

頼る手は頼って!ムリせず行きましょう

佐藤)
きっと職種に関係なく、出産子育てで大変な時期、仕事が大事な時期ってあると思います。保育園の先生や周りの人にいっぱい頼って、ムリせず両立できたらいいのかなと。「頼れる手は頼って!」って感じですかね。子どもの事で同僚に迷惑かけたとしても、申し訳ないなんて思わなくてOK!ママ自身のメンタルも大切にしてほしいと思います。

子育ての経験で視野が広がりキャリアアップにも。毎日自分を褒めてあげよう!

尾崎)
遠い未来のビジョンを持っていると、チャンスが来たときにつかめるような気がしています。子育てをすることで視野も広がり、新たな視点も持てるようになれるのではと楽しみな部分も。忙しいので仕事柄、効率を求めがちですが、育児は非効率なことの連続。仕事との両立は大変ですが、ほどよく肩の力を抜いて頑張りましょう。毎日の自分をたっぷり褒めていきましょうね!

編集部)
素敵なメッセージ有難うございます。座談会に参加できなかった方からも温かいメッセージが届いているのでご紹介させてください。

「子育て世代の看護師さんへ
子どもは大きくなるから今を頑張って!母の背中を見てますよ~、と伝えたいです。また、キャリアで悩んでいる人も多いと思います。私も転職を繰り返し、20年で3つの病院を経験。また来年転職予定です。息子3人を産んでから認定の教育課程にも進学しました。結婚や出産、転勤や仕事の内容で悩むくらいなら転職もアリ!休職したり、一度看護の仕事から離れるのもいいかと思います。

戻りたいときは国家資格でよかった~!と思えますよ。泣いても笑っても怒っても落ち込んでも生きてれば朝が来る。何度でも立ち上がりましょう。日本の看護師の皆さ~ん、力抜いて頑張っていきましょう」


きっと今読んでくださっている皆さんも、職業が違う方でも、自分のことは後まわしにして仕事と家事、育児に必死で走り回っている方が多いのではないでしょうか。

この記事を読んで、少しでも「肩の力をぬいていい」と思えたり、一方で仕事のやりがい、キャリアの積み方、自分の人生について、改めて考えてみる機会となったり、ヒントを見つけていただけたら嬉しいです。

*座談会は23年11月にオンラインにて実施。個人を特定されないよう、内容を一部変えている部分があります

イラスト/雨月衣 取材・文/西田有紀 企画/サンキュ!コメつぶ編集部

 
 

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