小さな子どもと一緒に行く温泉の選び方
2018/02/20
「たまには温泉で日々の疲れを癒したい」。そうは思うものの、小さい子どもがいると旅館に迷惑かも、とか、子どもがお風呂嫌いだしなあ、などの理由で躊躇してしまう方も多いでしょう。そこで今回は、温泉ソムリエとして活躍する渡部郁子さんに、子どもと温泉旅行に行くときの温泉の選び方について教えてもらいました。
温泉選びのポイントは「温度」と「泉質」
温泉ソムリエの渡部郁子です。子連れで全国の温泉をめぐりながら、子どもにやさしい旅館や子どもが喜ぶ温泉の取材を重ねてきました。ここ数年、子どもを連れた家族向けのプランを用意している旅館が増えています。温泉の泉質などと併せて、温泉選びのポイントについてお伝えします。
子どもと温泉をめぐり始めて気づいたことは、温泉の肌への刺激は人によって違うという点です。どんな泉質も温度も気にならない私と違い、肌の弱い息子は「高温の温泉」と「刺激の強い温泉」が苦手です。苦手な温泉に無理に入れれば、子どもは嫌がって騒ぎます。我慢して入らせるのでなく、子どもが苦手でない温泉を選べば、一緒に温泉を楽しめます。子どもが苦手でない温泉とは、「ぬるめ」の温泉であり、「やさしい泉質」の温泉です。それぞれ詳しく見てみましょう。
ぬる湯のすすめ
あなたの家のお風呂の設定温度は何度ですか? 地域や育ってきた環境によって、各家庭で温度が違うので、「熱い」「ぬるい」と思う温度も実は人それぞれです。ちなみに温泉旅館や温浴施設の浴槽の設定温度は、だいたい42℃とされています。これは浴槽を清潔に保つための温度であるという理由が大きいのですが、日本人が最も気持ちよいと感じる温度であるともいわれています。42℃の熱めのお湯は、交感神経を刺激して「リフレッシュ効果」をもたらします。
ただし、子どもにとって42℃は熱すぎます。子どもが小さければ小さいほど、ぬるめのお湯の温泉を選ぶようにしましょう。ではどのくらいぬるいのがいいのか。体が温度を感じない「不感温度」は、体温と同じ36~37℃です。37~40℃のお湯は、副交感神経を優位にする「リラックス効果の高い」、一般的に「ぬる湯」とされています。さすがに不感温度の浴槽を持つ旅館は少ないですが、せめて40℃あたりの設定温度を採用している旅館を選ぶと、どんなお子さんも入りやすいですよ。
ちなみに、浴槽温度を季節によって変えているという旅館も多いです。浴槽がいくつかあり、違う温度を楽しめる工夫のある旅館や、問い合わせてみて、ぬるめに設定しているという旅館を選んでみてください。
泉質について知る
温泉の泉質を知ることはむずかしくありません。旅館のサイトで泉質を公表している施設も増えてきています。泉質の特徴を知れば、温泉を選ぶときの重要なポイントになります。温泉に行くときは、分析表などを確認して、泉質をチェックする習慣をつけてみましょう。
温泉の泉質は大きく分けて10種類です。ただし、泉質は1つの温泉に1つというわけではなく、2つの泉質、3つの泉質が組み合わさっている温泉もあります。温泉について書かれた項目のうち、「温泉の泉質」と書かれているところに注目してみてください。
10種類の泉質とは、単純温泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、二酸化炭素泉、含鉄線、硫黄泉、酸性泉、放射能線、含よう素泉です。
それぞれ特徴的な効果があるのですが、上記の中で「やさしい湯」を挙げるなら、単純温泉です。単純温泉とは、温泉の中に含まれる成分の量が一定値に達していない温泉です。成分が薄いので「やさしい」泉質であり、刺激が少ないので湯あたりしにくいという特徴があります。単純温泉のなかでも、pH8.5以上の「アルカリ性」、pH7.5以上の「弱アルカリ性」の湯は、肌に触れたときのサラッとした感触が人気です。ちなみに「単純硫黄泉」は単純温泉ではなく、刺激の強い「硫黄泉」ですので注意してください。
そのほか、肌への刺激が少ない「入りやすい」泉質は、炭酸水素塩泉と、硫酸塩泉です。炭酸水素塩泉はアルカリ性であることが多く、さらりとした感触が特徴。硫酸塩泉は肌の組成効果が高く肌をしっとり整えるため、翌朝の化粧ノリが違います。
ベビーとキッズのための温泉選び
温泉の「温度」と「泉質」を踏まえたうえで、もうひとつ選ぶポイントがあります。それは、オムツが外れているかどうかで施設を選ぶこと。たとえば赤ちゃんと一緒に温泉に行くなら、多くの人が集まる「日帰り入浴」は避け、宿泊施設を利用すること。また「オムツの子入浴不可」の施設は避けたいもの。貸し切り風呂や部屋風呂がある温泉や、外来入浴を受け付けない温泉を選ぶことをおすすめします。
オムツがとれたキッズと行く温泉なら、温泉プールが併設された施設や、多少騒いでも気にならないほど大きな露天風呂などがある温泉をおすすめします。
ベビーにおすすめの温泉「蓼科温泉 親湯」
長野県茅野市にある「蓼科温泉 親湯」は、北八ヶ岳、蓼科山のふもとにあるリゾート温泉宿。単純温泉を40℃前後で満たした畳敷きの大浴場のほか、2つの露天風呂、3つの貸し切り露天風呂を備えています。赤ちゃん連れにうれしい「赤ちゃん大満足プラン」は、滞在中のオムツ、ミルク、離乳食がすべて使い放題。メーカーもさまざまそろっているので、かさばるオムツや離乳食を家から持ってくる必要がありません。赤ちゃんプランの場合、夕食を部屋に用意していただけるのもうれしいポイントです。
キッズにおすすめの温泉「界シリーズ」
星野リゾートの運営する温泉旅館「界シリーズ」は、子ども連れでも安心して滞在できるサービスが魅力です。たとえば静岡県にある「界 伊東」は、よく温まる塩化物泉を源泉かけ流しで提供。大浴場は40℃前後、そのほか一年中楽しめる源泉プールや足湯があり、楽しく温泉を満喫できます。ほかにも、栃木県日光市にある「界 川治」は、水車小屋があり昔ながらの里山の風情が楽しめる宿。やさしい単純温泉と、和紙の手すき体験などのアクティビティが魅力です。どちらも客室風呂つきのお部屋なら、赤ちゃんとの入浴も安心。
まだまだほかにも子どもと楽しめる温泉はたくさんあります。お子さんの年齢や、一緒に行くメンバー、季節や目的、さらに泉質に応じて温泉を選べるようになると、温泉がますます楽しくなります。温泉選びに迷ったときは、いつでもご相談ください。
◆監修・執筆/アウトドアナビゲーター・温泉ソムリエ 渡部郁子
JFNラジオ「JOYFUL LIFE」ほか、山と温泉と音楽をテーマに様々なメディアで情報を発信中。子どもにやさしい温泉や山、フェス情報など、子どもといっしょに楽しむアウトドアスタイルを提案している。
公式ホームページ:http://www.watanabeikuko.jimdo.com/