季節に合わせた備え、できていますか?
季節の変わり目に衣替えをするように、防災用品も季節対応が大切。たとえば、冬は停電時の寒さ対策など、夏とはチェックしたいポイントが変わってきます。
でも、日常をまわすだけでも大変なのに、非日常を想定した備えまでは手が回らないという方も多いのでは。それなら、暮らしの延長線上で防災を考えてみると、ハードルが少し下がるかもしれません。
筆者の夫は元船員。長期航海で家を空けることが多く、2人の娘をワンオペで育ててきました。「もしものときは、1人で子どもたちを守らないと...!」という思いから、自然と防災意識がアップ。
今回は、10年以上2人の娘をワンオペで育ててきたKota(コタ)が冬に備えておきたい防災アイテム3選をご紹介します。日常と防災を別物にせず、暮らしになじむ「ゆる備え」を始めてみませんか。
1. 携帯用トイレ
寒さでトイレが近くなりやすい冬。もし今災害が起きて、自宅のトイレが使えなくなったら...。
実は、「地震発生後から3時間以内に約4割の人がトイレに行きたくなった」というデータがあるほど、水や食料よりも先に必要になる場合が多いのがトイレ。寒い季節はなおさらです。(※参考:トイレ研究所/平成28年熊本地震「避難生活におけるトイレに関するアンケート」結果報告より)
水洗トイレが使えないときの頼みの綱が仮設トイレですが、発災直後は道路がふさがれて設置が遅れることも。さらに、過去の災害では数が足りなかったケースも多く報告されています。
そうした環境でトイレを我慢をするために食事や水分を控えると、脱水症状などから体調を崩してしまうおそれも。
ところが、水や食料と比べて、家庭で非常用トイレを備える意識はまだまだ低いのが現状です。2025年に内閣府が約1,500人を対象に行った世論調査によると、携帯・簡易トイレを備えている家庭は27.5%と、飲料水の69.8%を大きく下回る結果に。(※参考:内閣府/「防災に関する世論調査」令和7年8月調査より)
ハッとした方は、これをきっかけにぜひ。
わが家は、自宅のトイレにセットして使うタイプと、持ち運びできるコンパクトタイプの2種類をストックしています。コンパクトタイプの方は、防災リュックのほかに、電車通学をしている娘の防災ポーチや車にも入れて。車載分は、長時間移動でトイレが見つからないときのお守り代わりにも。
国が推奨している備えの目標は、1人あたり1日5回×7日分。4人家族の場合は140回分が目安です。
2. カセットコンロ&ガスボンベ
ライフラインが止まると、コンロ類や電子レンジが使えなくなり、調理手段が限られます。そんなときに頼りになるのが、カセットコンロとガスボンベ。セットで備えておけば、電気・ガスが止まっても、温かい食事がつくれて安心です。
温かい食事には、体を内側から温めて体温を保つ効果があるので、冬の災害時は特に重宝するはず。体力をキープできるのはもちろん、気持ちがホッと休まる効果も期待できます。
カセットコンロは2,000〜7,000円ほど、ガスボンベは1本あたり100~300円前後と、比較的お手頃。また、最近のコンロは薄くてコンパクトなタイプも充実しているため、大きな収納スペースも必要ありません。
わが家ではキッチンに収納して、食卓で鍋を囲むときにふだん使いしています。日常的に使うことで、扱いに慣れるだけでなく、子どもに使い方を教えられるメリットも。自然にガスボンベの使用期限(※一般的には製造から約7年)をチェックできるのも良いところ。
国が推奨する備えの目安は、携帯トイレと同じく1週間分。ガス&エネルギーメーカー「イワタニ」の試算によると、気温10℃で大人2人が1日3回、レトルト食品を温めたり、温かい飲み物を飲んだりするのに使う場合、7日間で約9本のガスボンベが必要なのだそう。4人家族なら約18本が目安です。(※参考:イワタニ/「防災対策について」より)
とはいえ、いきなりこの本数をそろえるのは大変ですよね。まずは3日分を目標に、少しずつ買い足してみては。
3. 防寒・保温グッズ
暖房が使えない冬の停電時は、体温の維持が課題に。使い捨てカイロやアルミ保温シート、毛布など、電気を使わずに温まれるアイテムをいくつか備えておくと安心です。
カイロはこの季節、日常的に使う方も多いはず。多めにストックしておき、使ったら補充する「ローリングストック」を実践すれば、切らしてしまう心配がありません。
アルミ保温シートは、体温の低下を防ぐための防寒アイテム。体を包んで熱が逃げるのを防いだり、地面に敷いて冷気を遮断したりと、さまざまな使い方ができます。
コンパクトでかさばらないので、わが家では防災リュックのほか、少し遠出をするとき用の防災ポーチや車にも常備。100円ショップでも手に入るので、気軽に備えを始めたい方にもぴったり。
アルミ保温シートが実際に役立った例として、東日本大震災のエピソードがあります。著者は、プライベートで出かけていた先の都内で被災し、帰宅できなくなりました。たまたま居合わせた帰宅困難者数十人と一緒に、あるビルの一室でひと晩を明かすことになったのですが、その中には妊婦さんの姿が。夜はまだ冷える3月、近くにいた方がサッとアルミ保温シートを取り出して、妊婦さんに差し出していたのが忘れられません。そのときから、これは個人的に欠かせない備えになりました。
災害はいつ、どこで起きるか分かりませんが、1枚持っておくだけで安心感が違います。
暮らしになじむ「冬仕様」の備えを
「気にはなっているけれど、何から始めればいいか分からない」「不安になるからそもそも考えたくない」
防災には、こうしたネガティブなイメージがつきものかもしれません。
でも、今回ご紹介したように、日常でも活かせるアイテムを選べば、防災=特別なことではなく、ふだんの暮らしの延長として取り入れられるのではないでしょうか。少しでも備えを始めることで、安心感がぐんとアップして、毎日をより穏やかに過ごせるようになるはず。
洋服の衣替えと合わせて、防災アイテムもできるところから「冬仕様」にしてみてくださいね。
■執筆/Kota
元クルーズ船乗組員。狭い船室で、4カ月の乗船勤務をスーツケースひとつでこなした経験から、厳選したモノで心地よく暮らすヒントを発信。10年以上の完全ワンオペ育児で身につけた、ムリなく続けられる家事アイデアの紹介も得意としている。
編集/サンキュ!編集部