【危機管理のスペシャリストに聞く】親子で防災について考えるとき、何から取り組むべきか?

2019/08/30

いつ起こるからわからない災害。自分と家族の身を守るため、日ごろから防災の取り組みをしている方は多いと思います。今回は、危機管理のスペシャリストのなどの取材を通じて、親子で取り組む防災について考えてみます。

避難訓練は「ただ言われたことをやる」だけでは意味がない?

筆者の息子が通う幼稚園では、避難訓練の一貫として「引き渡し訓練」が行われています。実施は平日ですが、事前に「全園児が一斉帰宅する際に、両親のどちらかが園児を迎えに来ること」という案内が届くので、あらかじめ仕事を休めるよう調整し、指定時間に迎えに行くことはできます。

しかし、ふと疑問に思ったのです。

本当に災害が起きたとき、両親がどちらも仕事などで自宅を離れていたら、迎えに行くまで何時間かかるだろうか?それ以前に、そもそも迎えに行けるのだろうか?何時間も迎えに来ない親を待つあいだ、子どもたちはどこに避難するのか?

避難訓練は「ただ言われたことをやる」だけでは、いざという時に役立たないかもしれない、という危機感を抱きました。

そこで今回は、実際に被災したときのために、何を準備しなければならないのか?特に小さな子どもを持つファミリーが備えておくべき防災準備について、危機管理のスペシャリストとして活動し、代々木公園でのキャンプ体験を通じて防災について学ぶ取り組み「SHIBUYA CAMP」で講師を務める浅野竜一さん にお話をお聞きしました。
(取材・文/みらいハウス 福井良子)

教えてくれたのは・・・浅野竜一さん(ミッショントレーナー/危機管理コンサルタント)

千葉県警察官、警備会社での身辺警護などを経験後、2007年、企業への危機管理教育、及び官公庁に対してコンサルティングを提供する国内唯一の民間企業ZOASを設立。防衛省における陸上自衛隊の海外派遣部隊や教育部隊、航空部隊に対する訓練指導、技術提供、教育などを行っている。

子どもを「どう迎える」だけでなく「誰が迎えるか」の準備が大切

白い背景の上の家族の肖像画
monzenmachi/gettyimages

冒頭でも紹介した災害時の「引き渡し」問題。この点について、浅野さんの意見を聞きました。

◇◇◇◇

「引き渡し訓練」は多くの保育施設、学校で行われていますが、「引き渡しができない」という可能性まで考えて実施しているところはほとんどありません。大規模災害時は保護する先生たちも被災者となりますから、子どもたちの保護にも限界があります。その限界を越えたらどうなるのか?ということまでは決まっていないのが実情です。

だから、まず親が考えるべきことは「被災したとき、誰が子どもを迎えに行けるのか?」を把握すること。両親のどちらかが、常に迎えに行ける状況であれば問題はありません。しかし、自宅とオフィスが離れていれば、何日も帰宅できない可能性が高い。また、都心部では交通期間の混乱を防ぐために「一斉帰宅抑制」を実施する企業もあります。つまり、両親が共働きで、かつ職場が自宅から離れた都心部の場合、子どもを迎えに行くことはまず無理と考えたほうがいい。であれば、ふだんからできる準備としては、親戚や、近所で頼れる知人などに災害時の対応について事前に相談しておくことになります。

72時間を生き抜くために、準備すべきこと

ベクトル。モックアップを作成します。白いバックパック バッグ シリンダー
urfinguss/gettyimages

災害はいつ起こるかわからないもの。自宅にいるとき被災した場合、事前準備をしているかどうかが、生死をわけると浅野さんは話します。

◇◇◇◇

人命救助において「72時間の壁」という言葉があります。災害によって救助を必要としている人の生存率が72時間(3日間)を経過すると大幅に下がることから、生死を分けるタイムリミットと言われています。

生存率を高めるためには、なによりも備えることが重要です。たとえば、家庭内であれば倒れてくる危険性がある棚の位置を事前に確認し、加えて倒れないように固定することで、下敷きになる可能性を減らすことができます。

また、備蓄品と非常用の持ち出し袋も準備しておく必要があります。備蓄品と持ち出し袋を混同している人もいますが、持ち出し袋は避難所などへ行くときに持ち出すもので、備蓄品は災害によってライフラインなどが機能しなくなった場合に備えて、数日間を生き延びるために自宅に備えておくものです。だから、持ち出し袋に大量の水や食料を入れてしまうと、重くて持ち出せないから意味がありません。

私の場合、持ち出し袋にはエマージェンシーブランケット、笛、小型ライト、マスク、目を保護するゴーグル(めがね)などを入れるようにしています。持ち出し袋の内容物は家族、個人によって異なります。自分にとって最低限必要なものは何か?をよく考えて、準備するようにしましょう。

親子で防災意識を高めるために必要なことは?

ここまでの話は、親が意識しておくべき防災対策でしたが、子ども自身にも意識してもらうことはあるのでしょうか。

◇◇◇◇

小さな子どもがいるご家庭では、最低限備えておくもの・ことは何なのかを、一緒に考えてみてください。両親が迎えに行けない、自宅に帰ってこられない可能性があることを伝えるのも大切な準備です。

また、いつ起こるかわからない災害に対して、完璧な対策は不可能。だからこそ、さまざまな状況を想定し、どう行動すべきかを定期的に子どもと話し合うことが重要です。防災意識は親だけが高めても十分ではありません。日頃から、“親子で”防災意識を高めることがいざというときに、家族の命を守ることになるでしょう。

災害対策として重要なアウトドア経験・知識とは?

taka4332/gettyimages

話を聞く中で、まずは親子で話し合い、考えてみなければならないことがたくさんあることに気づかされました。また浅野さんは「被災時に必要となるのが、サバイバルの三原則――『体温』『体力』『水』の確保です」とも話します。そこで続いては、アウトドアの専門家として活躍する、渡部郁子さんに災害時に必要となるアウトドア知識について聞きました。


■教えてくれたのは・・・渡部郁子さん(アウトドアナビゲーター)
JFNラジオ「JOYFUL LIFE」ほか、様々なメディアで、山と温泉と音楽をテーマに「人生を豊かにする情報」を発信、子どもといっしょに楽しむアウトドアスタイルを提案している。All Aboutアウトドアガイド。

家でできる被災訓練から、アウトドア体験へ

アウトドア体験は「被災時に役立つ知識を、自然に学ぶことができる絶好の機会」と話す渡部さん。一方で、「アウトドアは敷居が高い」と考える人も多いそうです。

◇◇◇◇

小学生の子どもを持つ共働き家庭 (1都3県)を対象とした、親子の防災に関するアンケート調査によれば、災害時に子どもの避難に不安があると答えた人は約9割、避難生活を疑似体験できるキャンプへの参加意向は7割でした(オールアバウト調べ)。

アウトドア体験は、地図を頼りに長時間の行程を歩いたり、限られた食材、道具、方法で料理をつくったり、自然に囲まれて過ごしたりすることで、サバイバルの方法、すなわち、被災時に役立つ知識を自然に学べる絶好の機会です。

一方で、キャンプに興味があるものの、場所を選んだり、道具をそろえたりすることが難しいなど、なかなか一歩を踏み出せないという声も少なくありません。

そこで提案したいのが、アウトドアに出る前に、家の中で「被災体験」キャンプ、「疑似アウトドア体験」をしてみることです。水道・ガス・電気を使わないで過ごす体験をしてみたり、備蓄品を使って料理を楽しんでみたり、携帯トイレを試してみるなど、被災時を意識した行動をしてみましょう。親子で楽しく防災について考える機会になりますし、アウトドアへの一歩を後押ししてくれるはずです。

ちなみに、前述の調査では、災害時の避難場所への避難経路や被災時の集合場所について確認しているという家庭は4割という結果に。親子で被災時の話し合いがあまりできていない状況が浮き彫りになりました。まずは親子で、被災時について話し合うことが必要ではないかと感じます。

取材を終えて

2人の専門家の話から、備蓄品を見直したり、防災グッズを準備したり、確認したりすることに加え、家庭内で、子どもも交えて被災時の対策について話し合ってみる必要性を強く感じました。まずは話し合いで、我が家の状況を確認することから、親子の防災意識を高めていきましょう。


■取材・文/みらいハウス 福井良子
東京・足立区にある育児期の女性支援拠点「みらいハウス」のライティングメンバー。キャリアコンサルタントや不妊カウンセラーの資格を持ち、女性のキャリア相談や、不妊経験のあるママたちの支援などに取り組んでいる。1児の母。

構成:サンキュ!編集部

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