「ごみを持って帰るの?」いえいえ、理由があるんです。とある家族の幸せのカタチ

2019/07/02

「これさえあれば自分はハッピーになれる」そんな何かを持っている人って、強いですよね。あなたには、何かありますか? 日々のちょっとしたことを、自分をハッピーにする素に変えてしまう。 そして(きっと)まわりもハッピーにする。そんな人を全国に訪ねてみました。あなたのヒントが見つかりますように。

「ごみを持って帰るの?」と言われたことも(笑)

子どもと一緒に空を見上げたり、草や花、虫(!)を見つけたり。そんなふうに移ろう四季を感じることをハッピーに思う杉山千恵さん。ふと目に入った、なにげない光の美しさに目を奪われて、写真にぱしゃりと収めてみたり。

日常の隅っこにころがっているさもないものや、移ろう時間に目を向け、10代のころから過ごしてきたという千恵さん。なぜか道に落ちているものに惹かれて、拾ってくることも多かったそう。海外旅行に出かけても、お土産はさびた鉄の破片やかさかさに朽ちた木片......。

「『ごみを持って帰るの?』と言われたこともありました」と笑います。

名もないものや、移ろうものが愛おしい

でも、お宅にお邪魔して、壁に飾られたり、棚に置かれたりしている“元ごみ”を見れば、納得。味わいやカタチがそれぞれに美しく、どれも、アートのように見えてくるものばかりなのです。名もないものたちが、千恵さんの家に集まると、暮らしの一部を彩るものになってくるさま、なんとも不思議です。
「ママ、これ、見つけてきた〜」と道端で拾ってきた木の実を大切そうに千恵さんに渡すのは、息子の日々(ひび)くん。娘の繍(しゅう)ちゃんも、「ママ、そら、すごいきれい」と少ない語彙(ごい)で一生懸命伝えてくれます。夫の敬季(けいき)さんも子どものころから古いものに惹かれ、歳のときに買った靴を今もはき続けるような人。

似た者夫婦であり、似た者家族。「古いものや、落ちている葉、空の美しさ、光......。惹かれる理由はわからないけれど、見ているだけで幸せを感じます。そして、長く同じものを使うような暮らしぶりが素敵だなと、ずっと思っています」

例えば、インテリアはとても感じよく統一されているように見えるけれど、実は新しく購入したのは棚と照明器具くらい。人から譲り受けたり、道端で見つけたりしたものばかりなのだそう。ピカピカの新品じゃなくて、長く愛され使われてきたものを引き継ぎ、いとおしみながら使うことが好き。

直しながら、履き続けてほしい

そんな夫婦の仕事は「靴の修繕」です。小さなお店をオープンして年たちましたが、その技術とていねいに靴を直してくれる心意気に、遠方からの依頼も増えているのだとか。

「靴が好き。でも、作りたいというより、私たちは直したいんです。多くの靴は、直せるように作られているのに、まだまだ知られていません。私たちはそれを伝える役目をしていきたい」

革の経年変化で味わいを増した靴、足になじんで愛着のある靴。そんな靴をはき続けたいと思う人が、修理を依頼してくれる場所になりたいと思っています。

さもないものに目を向けて、物を大切にしながら暮らす。それが、千恵さん家族のハッピーの“素”。幸せをつくるのは、自分の心持ちと感性によるもの。そんなことに気づかされます。

#働く背中
小さいけれど、こだわりが詰まった靴修理店。働く父の背中を見ながら育つ子どもたちには、物を大切にずっと使うことの素晴らしさが自然に伝わります

#作りながら住む
リノベーションでは、シンプルな箱だけを作り、あとは暮らしながら完成させていくことを選択。気に入った照明に出合えたときに、その都度追加しています

#スマホメモ
「妖精が葉っぱのブランコに乗ってたよ」。はっとするような言葉を日々くんが発したとき、忘れないようにスマホにメモ。「ハッピーをためていっています」

#なんでもアート
絵の具で遊びたいという子どもたち。でき上がったのは、2人の手や足跡の残る1枚の紙。子どもの成長を懐かしむことができるアートとして飾っています

#なんでもおもちゃ
ビニール袋をふくらませて口を結んだだけの風船が、子どもたちは大好き。こんな〝さもないもの〞でいつまでも遊べ、案外、新品のおもちゃより楽しかったり......

Have a try!

□次のお出かけのときに、石をひとつ拾って帰る
□子どもが散らかした部屋もアートと考える
□子どもがおもしろい発言をしたら、すかさずメモをする

杉山千恵さん 愛知県
夫と2人で靴修理店を自営。リノベーションしたマンションに、4歳の長男、2歳の長女との4人暮らし。将来的には自分たちがセレクトした雑貨類も販売していきたいそう。修理だけでなく、子ども靴も少しずつ製作中
https://www.instagram.com/10.tools/

参照:『サンキュ!』2017年12月号「わたしのHappyのつくりかた」より一部抜粋。掲載している情報 は2017年10月現在のものです。
撮影/天野良子

取材・文/加藤郷子
出版社にて料理・生活情報誌編集を経てフリーに。得意ジャンルは暮らしまわりいろいろ。趣味は食べること。取材先で見つけた小さな知恵を家で試して、うまくいったらほくそえむこと。著書に『あえて選んだせまい家』(ワニブックス)、共著書に『パリでうちごはん、そしておいしいおみやげ』(小学館)、『「北欧、暮らしの道具店」店長のフィットする暮らし』(パイ インターナショナル』、編著書『アートと暮らすインテリア』(パイ インターナショナル)など。

 
 

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