「物置みたいな古い家」に住むことになったけれど…とある家族の幸せの秘訣

2019/09/09

まったく縁のなかった街に引越して、住むことになった義母の実家は、築100年! でも、考え方ひとつで、住めば都になるのです。

「これさえあれば自分はハッピー!」そんな何かを持っている人って強いものです。今回は、日々のちょっとしたことでも、自分をハッピーにするすべを知っている人を訪ねます。

築100年の家に住む不安

実家は岡山。学生以降、住んでいたのは滋賀や京都など、関西地方。でも、ゆきこさんが夫と住むことになったのは、愛知県にある夫の母の実家。築100年の家でした。「40年近く使われていない状態で、物置になっていた一軒家。お化け屋敷みたいで、最初は『本当に大丈夫?』と思いました」。当時は長女を妊娠中で、不安も大きかったようです。

「でも住んでいるとおうちって、どんどん元気になるんです」。当初の不安も今となっては思い出。味わいのある古い家を活用しながら残していけることをうれしく感じています。

この住まいの一角が、生活雑貨や家具を扱うお店「soso」。夫婦が作るものを見てもらって販売することを目的につくったスペースです。扱っているのは、夫の俊吾さんが作る家具や金工品と、ゆきこさんが製作する布製品。そして、自分たちの暮らしのなかで、心からいいと思って使っている道具たち。2人が選んできた古道具も並びます。

家の中に、店がある。だから、暮らしも丸見え

お店を訪れる人たちは、呼び鈴を鳴らし、玄関からゆきこさん宅にお邪魔する感覚でやって来ます。驚くのは店舗スペースから、暮らしの様子が丸見えということ。リビングもキッチンも、子どもたちが遊んでいる様子もすべてオープンです。

暮らしのスペースには、ゆきこさんのリクエストで俊吾さんが作った棚や、道具を引っ掛けるための鉄のポールなどがあるので、それらを見ながら家具や金工品をオーダーすることも可能。ゆきこさんが作った洋服を子どもたちが実際に着ている様子が見られることもあり、使い込むとどんな感じになるかも実感できます。

「自分たちの暮らしでいいなと思ったものを、『おすそわけ』している。そんな気持ちで物を作ったり選んだりしています。私たちの生活を見てもらって、『こんなふうに暮らすのも心地いい』ということが伝わるといいなと思っています」。日常の暮らし自体が夫婦2人の自己表現なので、やって来てくれるのは、ゆきこさんと俊吾の暮らしに惹かれる人。家にいながらにして価値観の合う人が訪ねてくれるという状態になり、友人がいない土地という不安も、お店のおかげで徐々に解消されていきました。

理想は、そのときどきに合わせて変えればいい

元々雑貨店やカフェで働くなど、好きなことを仕事にしてきたゆきこさん。今の仕事の仕方はある意味、その姿勢を貫いてきた理想の形のようにも思えます。「いえいえ、成り行きですよ。心地いい暮らしをしたいという軸だけはぶれないようにしながら、でも、『こうでないとイヤ』と決めつけず、理想の形はその時々に合わせて変えていけばいいんだと思うようにしています。そうすると、どんな状態も楽しいです」。しなやかに、そのときどきの環境を受け入れながら、暮らしを整えてきたゆきこさん。そのなかに、毎日の暮らしをありがたいと感じる「幸せの素」を見つけています。

#お掃除の時間
縁側のぞうきんがけは、子どもたちが遊び感覚で楽しそうにしてくれるお手伝いのひとつ。そんな様子を眺めているだけでも、今の自分の幸せを心から肯定できます。

#おいしいごはんさえあれば
毎日いつもどおりに暮らせる。おいしいごはんを家族4人で食べられる。普通のことにいちばんハッピーを感じるゆきこさん。そのマインドこそが自分を幸せにする秘訣(ひけつ)。

#売るものは使ってます
椅子も棚も食器もカトラリーも。お店で売っているものは、ふだんの暮らしで使っているもの。おすすめする言葉も実体験から生まれるので、心に届きやすくなります。

#作ったものをおすそわけ
商品を作るというより、自分の子どものためのものを多めに作り、「おすそわけ」する気持ちで販売。だから作るものは自分が本当に欲しいもの。足踏みミシンが活躍。

#ストーリーのある道具
お店で販売しているカトラリーは、夫の俊吾さんが作ったもの。作った人とその人の暮らしぶりを知ったうえで購入する道具にはストーリーを感じ、愛着も増します。

Have a try!

□普通の日に、おにぎりを握ってランチにする
□子どもといっしょに雑巾がけにトライ
□作り手の顔がわかる雑貨や器を買ってみる

木全(きまた)ゆきこさん 愛知県
美術系の大学を卒業後、カフェや雑貨店でアルバイトをしながら暮らす。大学の同級生の、俊吾さんと結婚。布製の生活雑貨を作りつつ、「soso」を営む。小1の長女・茶而(さじ)ちゃん、3歳の長男・戸利(とり)くんとの4人暮らし。


参照:『サンキュ!』2018年5月号「わたしのHappyのつくりかた」より一部抜粋。掲載している情報 は2018年2月現在のものです。

撮影/馬場晶子

取材・文/加藤郷子
出版社にて料理・生活情報誌編集を経てフリーに。得意ジャンルは暮らしまわりいろいろ。趣味は食べること。著書に『あえて選んだせまい家』(ワニブックス)、共著書に『「北欧、暮らしの道具店」店長のフィットする暮らし』(パイ インターナショナル』、編著書に『アートと暮らすインテリア』(パイ インターナショナル)など。

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