ノルディック複合渡部暁斗さんインタビュー「両親から学んだトライすることの大切さ」
2020/07/27
10年以上日本のトップに君臨し続け、「キング・オブ・スキー」の称号を手にした渡部暁斗さん。高みを求める強い原動力を持つ渡部さんが、これからの時代を担う未来の主役たちへメッセージを贈ります。
<渡部暁斗さんプロフィール>
ノルディック複合。1988年5月、長野県白馬村生まれ。06年トリノから4度の五輪に出場し、14年ソチ・18年平昌で個人ノーマルヒル連続銀メダル獲得。17-18シーズンW杯総合優勝。日本のノルディック複合の第一人者。北野建設所属。
両親から学んだ「トライすること」の大切さ。納得できるパフォーマンスで頂点へ
焼けた肌に白い歯が印象的な渡部暁斗選手は、ノルディック複合の世界トップ選手の1人です。14年ソチ・18年平昌オリンピックの個人ノーマルヒルで連続銀メダルに輝き、17-18シーズンにはワールドカップ(W杯)個人総合優勝。いわゆる「キング・オブ・スキー」の称号を手にしているのです。
「『平昌とW杯の両方で優勝するんだ』と欲を出しすぎたのかな。平昌後にW杯が7戦もあって『気を抜いちゃいけない』と思った分、4年に一度の大舞台で力を出しきれない自分がいました。でもいちばん難易度の高いW杯で頂点に立てた達成感は大きかった。残るは22年の北京と21・23年にある世界選手権の優勝。狙えるタイトルはすべて取りにいきます」とさらなる闘志を燃やしています。
長野県白馬村育ちの渡部選手にとってスキーは遊びの延長でした。ジャンプを始めたのは小学校4年生のとき。日本がラージヒル団体で金メダルを獲得した98年長野オリンピックの名場面を現場で目撃したことでスイッチが入りました。最初はジャンプ選手をめざしましたが、中学から複合に進み、白馬高校時代の06年トリノオリンピックで大舞台初参戦を果たします。早稲田大学時代は一時スランプに陥ったそうですが、クロスカントリー(距離)の改善に取り組み、成績が急上昇。それから10年以上、日本のトップに君臨し続けているのです。
「自分の道を突き進む僕を両親は黙って見守ってくれました。心に残っている言葉は『取りあえず、何でもやってみろ』。幼いころの僕は食わず嫌いなところがあって、何事も一歩引きがちでしたが、両親に背中を押されているうちにチャレンジ精神が身につきましたね」。
こうして高みを求める原動力は何なのでしょうか。
「ジャンプとクロスカントリーは対極の存在。両方やることでかたよらない人間になれるのが魅力なんです。それに限界がない。人生で200試合以上やってますけど、どちらも納得できたことは片手ほどもない。その分、やりがいがあります。今年のシーズンオフも体を一からつくり直すためにファスティングをしたり、完全オフを取ったりしていますけど、いずれ最高の自分にたどり着けるように頑張ります!」。
30代を迎え円熟味を増す渡部選手の今後が楽しみです。
his history
母に連れられ、3つ下の弟・善斗さんとよく白馬のジャンプ台に通った。「中学のころがいちばんとがっていたので、弟とよくケンカしましたね」と笑うが、複合選手として一緒に世界を転戦する今は大の仲よし。「『さらに上がいる』と思わせてくれる存在がいるのはありがたい」と善斗さんからも尊敬されている。
参照:『サンキュ!』2020年7月号「未来の主役たちへ」より。掲載している情報は2020年5月現在のものです。構成・文/元川悦子 編集/サンキュ!編集部
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