「71歳、年金5万円。今がいちばん豊か」どんな暮らしをしてる?お金の不安がなくなるまでの歴史
2022/08/29
71歳の今が年金5万円でいちばん豊かに暮らしています。70代手前までやりくり劣等生、お金の不安がなくなるまでの人生とは?食費の見直しや、お金のかからない趣味のこと、工夫にあふれた日々の暮らしをご紹介します。
<教えてくれた人>
紫苑さん(東京都 71歳)
築45年の中古住宅で1人暮らし。30代の息子と娘がいる。ブログ「ひとり紫苑・プチプラ快適な日々を工夫」が大反響。著書に『71歳 年金月五万円 あるもので工夫する楽しい節約生活』(大和書房)。
69歳を過ぎてから、「少ないお金で工夫することの"楽しさ"」に気づきました
30~50代の頃、シングルで子育てをしながらバリバリ働いた紫苑さん。フリーライターとして仕事に恵まれ、「暮らしや家計を見直すなんて考えたこともなかった」そう。でも60代に入り仕事が減少。コロナ禍で1人の時間が増えたのを機に、家計や生活をゆっくり見直しました。「月5万円の年金でどう暮らそうかと試行錯誤するうち、69 歳になって初めて"生活を工夫するのって楽しい"と気づきました。年金の範囲内で心豊かに暮らせるようになるとお金や老後の不安は消え、食生活が整ったおかげで昔よりずっと元気!自分に合った節約で体も心も人生も変わりました」。
紫苑さんの1カ月の家計表
<収入>
収入 国民年金 5万円
フリマアプリでの売り上げ金など、臨時収入は家計に含めず交際費や交通費の足しに
<支出>
特別出費用積み立て 8000円(固定資産税、NHK受信料の月割など)
水道・光熱費 7700円
通信費 7500円
食費 9000円
日用品費 1000円
書籍代 1300円
交通費 2000円
残し貯め 1万3500円
病気など、緊急時用に備えています
「年金多くていいな」とよそと比べるのは、キリがないのでやめました
「年金額は60歳までの働き方で決まるもの。現役時代の働き方や生活事情は一人一人違うので、誰かと比べても何も変わらず、意味がないと気づきました」。
数字が苦手なので、家計管理は使った額をカレンダーにメモするだけ
計算が苦手な紫苑さん。家計簿は向かず、お金を使ったらお店と金額をメモする方法に。出費が多い時は、レシートでムダ遣いをチェックして赤字を予防。
紫苑さんのお金の不安がなくなるまでのHISTORY
【30代】子ども2人を抱えてシングルマザーに。仕事と育児に奮闘する日々。
【50代】稼いだ分だけ使う。家賃23万円のタワマン暮らしで、家計は見て見ぬふり。
フリーライターとして忙しく働き、支出がかさんでも「稼げば何とかなる」とお金に無頓着な生活。50代半ばで着物に目覚めて散財し、子どもと不仲に。
【60歳】仕事と収入が減って将来が不安になり、公団住宅へ。
一般的には定年を迎える年で仕事が減少。収入減で生活費が足りない月が増える。貯蓄が目減りすることに不安が募り、家賃13万円の公団住宅へ引っ越す。
【65歳】年金受給スタート。築45年の一戸建てを購入し、貯蓄0円に。
年金が月5万円と少なく、家賃を払い続けるのが負担で貯金をはたいて中古中宅を一括購入。その後、保険を解約したり年金をためて緊急時用の貯蓄を準備。
【69歳】コロナ禍をきっかけに、月5万円生活を始める。
新型コロナの流行で仕事がほぼゼロになり、生活を見直さなければならない状況に。固定費を減らして暮らしを整え、コンパクトな家計で暮らせるように。
【現在】自分の暮らしに自信がついたら家族と心地よい距離感に。
年金だけで楽しく健康に暮らせて貯蓄もできるようになり、不安が解消。息子や娘に頼る気持ちもなくなったことでケンカが減り、仲良く付き合えるように。
年金5万円生活 まずは食費を見直しました
食事は日々の楽しみであり、健康な体をつくるもの。月9000円の予算でも豊かな食卓になるよう、実験気分で楽しみながら工夫しました。
買い物は、1回1000円。3~4日で食べ切れる量だけ買う
週1~2回、冷蔵庫を見て足りない物を購入。「この日は冷凍肉があったので野菜や卵などを買い足し。3~4日で食べ切る量を意識して予算を守ります」。
自分の体が求めている食材で自炊する
「子育て中は忙しく、食事はおなかをいっぱいにするのが優先で外食もよくしました。今は食べてホッとする旬の物や安くておいしい食材で自炊生活。自然と食費も減りました」。
紫苑さんの節約料理を楽しむコツ
1 洒落た名前をつけてランクアップ
「料理はちょっとした演出で印象が変わります。イワシなど格安食材を使った簡単料理でも、メニュー名を洋風にするだけで気分が上がる一品に」。
● イワシを油で煮て「オイルサーディン」
● 魚を焼いて「ポワレ」● 野菜を煮て「ラタトゥイユ」
● トマトと豆腐で「カプレーゼ」 etc…
2 20代の人のレシピも参考にする
70代だから参考にするのはシニア向けの地味なレシピと決め込まず、若い世代のレシピ本もチェック。おいしそうな節約料理を積極的に取り入れています。
ジム通いしていた20年前より疲れにくい体になりました
「前はお金を払ってジムに通っていても体調がいまひとつだったのに、食事を整えたら疲れにくくなり毎日元気。体にいい物をおいしく食べて健康寿命を延ばしたいです」。
無印良品のホホバオイルだけでツル肌に。美容費は、ほぼ0円
「自炊で栄養をきちんととっているおかげで、洗顔後はホホバオイルを1滴つけるだけで潤います」。メイクは着物で外出など特別なときのみ。髪も自分でカットします。
「老後の食卓が豊かになるから、余裕があるときに食の経験を広げるのも大切だと思います」
「若い頃は私もレストラン巡りを楽しみました。おかげで盛り付けや食材の組み合わせなど食のイメージ力が鍛えられ、今の食生活に役立っています。たまには"ちょっといい店"で外食するのも、ムダな経験にはなりません」。
年金5万円生活 お金のかからない趣味を大切にしています
子育てや仕事に追われず時間がたっぷりある今、以前買い求めた着物や服のリメイク、読書などで作る喜びや想像する楽しさを満喫しています。
着物をまとって、日常の質を上げる
着物は普段使いで楽しみたいから、年を重ねてからはリーズナブルな物を選ぶように。鮮やかな青の木綿の着物は5年前に買った掘り出し物。「着物を着ると近所の公園を散歩するだけでも気分がいいんです。木綿の着物はお手入れもラク。自分で洗濯しています」。
プチプラ服をリメイクして、自分好みの"一点物"に
「以前はブランド服も買ったけれど、今は格安で手に入れたシンプル服に端切れなどを手縫いでつけて自由にリメイクするのが楽しくて。趣味と節約を兼ねています」。
リメイクデザインのヒントは"着物の襟"です
「着物は襟元が大事。白い半襟のおかげですてきに見えます。洋服も同じかな、と考えてひと工夫。白シャツは襟を付け替えて刺し子刺しゅうをしたら愛着もぐっと増しました」。
インテリアは、ある物で手作りして、家を自分のカラーにします
ブルーや少し甘いテイストが好きな紫苑さん。100円ショップの端切れやリメイク服の余り布でカーテンやはたきを手作り。インテリアのアクセントに。
「ムダ買いを減らしたいなら"買う前に誰の顔が浮かぶか"で、本当に必要かわかりますよ」
「人に見せたい」など、買い物前に人の顔が浮かぶならそれは"見栄"かも。私は見栄でたくさん浪費してきたので、今は"自分"の顔が浮かぶかを考えます。
本は、知識と世界を広げてくれる高コスパ娯楽
「本は料理や節約、着物の知識まであらゆることを手軽に勉強できて、私には欠かせない物。逆境を乗り越えていくマインドや生き方は国内外のサバイバル小説から学びました」。
どんな時代でも、自分が変われば乗り越えていけます
若い頃は今よりお金があったけれど、食生活や健康、家族や人とのつながり、どれも5万円生活の今が一番豊かです。どんな時代でも不安に駆られず、収入の範囲内で生活するスキルを磨けばきっと乗り越えられます。70代手前までやりくり劣等生だった私ですが「こんな生き方もあるんだな~」と少しでも参考になればうれしいです。
参照:『サンキュ!』2022年9月号「老後に困らないやりくり達人」より。掲載している情報は2022年7月現在のものです。撮影/林ひろし 構成/出下真紀 取材・文/神坐陽子 編集/サンキュ!編集部