浸水・蒸らし時間は不要だった!?炊飯器でお米をより美味しく炊く方法

2019/02/06

秋は新米の季節。ここ1~2年の炊飯器は、本物の土鍋で炊けるものやホーロー鍋で炊けるものなど多彩な進化を遂げており、さまざまな新製品が登場しています。しかし、いくらよい炊飯器を使っていても、正しい使い方をしないと性能が発揮できません。

そこで今回は、家電コーディネーターの戸井田園子さんに、おいしいご飯を炊くために知っておきたい炊飯器の正しい使い方について教えてもらいました。合わせて、炊飯器に関する取材を通じて得た、お米および炊飯に関する知見も解説してもらいます。

炊飯器でほとんどの人が勘違いしているコト

みなさんは炊飯器でお米を炊くとき、どのような手順を踏むでしょうか。丁寧な人であれば、まず最初にお米を“浸水”させて、炊きあがったらすぐには蓋を開けずに“蒸らし”の時間を設ける……という感じでしょうか。

大変言いづらいのですが、じつはそれ、いまどきの炊飯器においてはどちらも間違いです!それぞれ、詳しく解説していきましょう。

いまどきの炊飯器が浸水不要なしくみ

お米を炊く際、いままでは一般的に夏で30分、冬なら2時間程度、米を水に浸しておく必要があると言われていました。しかし、いまどきの炊飯器は、洗米したら直ぐにスイッチONでOK。と言うのも、ほとんどの炊飯器には米に水を浸透させる「浸水工程」があらかじめ含まれているから。

炊飯器のスイッチを入れると、まずお米に水を吸水させる浸水工程が始まり、その後に炊飯の全行程が自動でプログラミングされているのです。「炊飯時間が60分前後もあって長い!」「ガス火の鍋で炊いた方が早い!」といった声を聞くこともありますが、浸水工程も含まれているとわかったら印象は変わるでしょう。「早炊きモード」などは、この浸水時間が短縮されているため、30分程度で炊けるわけです。

また、お米が乾燥してしまいパサパサに感じるようになってしまった場合、浸水時間を長めにすれば良いのでは?と思いがちですが、これは間違い。乾燥している米は長時間浸水がマイナスになることもあるそうです。

含水率の高い収穫したての米は水に浸すとふっくらするのに対し、含水率が低くなった米は水に浸すと割れてしまうことがあるとのこと。単純に長く水に浸せば良いということではないようです。ちなみに、今年発売された炊飯器には、米の鮮度をセンシングして最適な炊き方にする機能が搭載されているものもあります。

炊飯器は蒸らし不要、飯切りはすぐに!

ほとんどの炊飯器には、浸水工程だけでなく「蒸らし時間」も含まれています。つまり、炊飯器の炊き上がりを告げるサインは「炊飯が終わった」ことではなく、「蒸らしも終わった」ことを知らせているわけです。すべての工程が終わり「食べられる状態」になっているのですから、改めて蒸らし時間を設けるのは、お米を美味しく食べるうえで逆効果になる懸念も!炊飯が終了したらすぐにフタを開け、飯切りをするようにしましょう。

飯切りは、ご飯がベタつかないよう余分な水分を飛ばす大事な工程。おいしいご飯に仕上げるためには、とても大事なポイントです。炊き上がったご飯に、しゃもじで十文字に切り込みをいれ、1/4ずつご飯を底からひっくり返すようにします。ぐちゃぐちゃかき混ぜるのではなく、上下を入れ替えてほぐしましょう。

さすがに最新技術でも、飯切まではしてくれません(笑)。なので改めて言いますが、炊飯器の炊き上がりサインが聞こえたらできるだけ早く飯切りをしましょう!そのまま放置は厳禁です。

もっとも美味しく炊けるのは何合?

ご飯は一度にたくさん炊いたほうが美味しく炊ける――という話はよく聞きますが、具体的に何合炊くのがベストなのか、ご存知でしょうか?また、保温時間の目安などについても解説します。

もっとも美味しく炊けるのは3合

炊飯プログラムは、沸騰までの時間から何合炊いているかを判断し、それに応じて火加減が調整されるようになっています。しかし、沸騰するまでは何合で炊いているかは分からないため、炊飯器には基準となる合数が定められているのです。たとえば、家庭で広く使われている5.5合炊き炊飯器の場合、3合を基準として加熱をスタートしているものが大半。言い換えれば、3合で炊くのがもっとも美味しく炊ける合数というわけです。

しかし、最近は世帯人数が減っているため、少量炊飯が増加中。そんな現状を受けて、3.5合炊きの高性能炊飯器=高級小釜も登場しています。また、5.5合炊飯器のなかには1~2合の少量を炊くための専用モードがあるものも。もし、いつも炊くのが2合前後という方は、それに適した炊飯器を検討してみるのもよいでしょう。

保温ができる目安時間は?

最新の炊飯器は美味しく炊くだけでなく、美味しく保つための保温機能も進化しています。最大40時間まで保温できたり、保温温度を下げて劣化を上手に防いでくれたり、再加熱やスチーム噴射で炊きたてに復活させてくれたりと大充実です。電気代も極力省エネになっていますので、家族の食事時間がバラバラでも保温を上手に使えば、いつでも美味しいご飯が食べられるでしょう。

ちなみに筆者の経験値から、取扱説明書に書かれている保温時間の半分くらいまでが、おいしく食べられる目安。40時間保温なら20時間までは、ほぼ炊きたてとおなじ味が楽しめると考えていいでしょう!

また、長々と保温するよりも、手早く冷凍してしまうのもオススメ。冷凍する際は均一に早く冷えるように平たくしてラップするのがベストです。パナソニックの炊飯器には「冷凍ごはんモード」が搭載されているものもあるので、日常的に冷凍保存を行っている人はぜひチェックしてみてください。そのほか、象印には冷えたごはんでも美味しい「お弁当モード」を搭載した炊飯器も。家族全員お弁当の家庭にはおすすめです。

「お米」と「炊飯」で知っておきたいこと

炊飯器の開発者は当然、お米や炊飯に関しても知り尽くしています。ここからは、取材を通じて得たお米と炊飯関する知見をご紹介します。

お米を研ぐときは「やさしく手早く」

精米技術がいまより高くなかった時代は、米の表面にのこったヌカを取るため、ゴシゴシと文字どおり「研ぐ」ような洗い方が推奨されていましたが、今はヌカが残ることは少ないため、基本は「やさしく手早く洗う」のが正解。方法はいろいろありますが、筆者が実践している研ぎ方をご紹介します。

1:すすぎ

たっぷりの水で大きく2~3回かき混ぜ、直ぐに水を捨てる「すすぎ」を2回。白く濁る水にはヌカが含まれていますので、ここでゆっくり水に浸してしまうと、ヌカのニオイを吸収してしまい、炊き上がりの香りが悪くなるとのこと。素早く!がコツです。

2:洗米

水を切った状態のまま、米を指先でやさしくかき混ぜます。ゴシゴシではなく、やさしく揉むように洗うのがコツ。そこに水を注ぐと真っ白に濁った水になりますので、この水をしっかり捨てます。これを2~4セット繰り返し、最後はたっぷりの水で洗い流します。白い濁りがなくなれば終了!

この方法であれば冷たい水に長々と手を浸している時間も少ないので、寒い冬でもしっかり洗米できます。ぜひ、試してみて下さい。

炊飯のお水にミネラルウォーターは使ってイイ?ダメ?

最近は、水道水ではなくミネラルウォーターでご飯を炊く人も多いかもしれません。しかし、どんなミネラルウォーターでもOKということではありません。

日本の水は軟水で、お米を炊くには最適な水と言われています。一方、硬度が高い水は米に水が浸透しにくく炊きあがりが固くなる傾向があります。このように、相性の良い水とそうではない水がありますので注意して下さい。また、米の産地と水の産地を合わせるとおいしく炊けるといいます。究極のおいしさを求めて、水もお取り寄せをしてみてはいかがですか?

ちなみに、すすぎからすべてミネラルウォーターを使うと、なかなかコストもかかるということで、炊く時の水だけミネラルウォーターにする人がいますが、これは効果半減。乾いた米に最初に投入する「すすぎ」一発目の水こそ、米ががっちり水を吸いますので、ミネラルウォーターを使いましょう。その後のすすぎ・洗米工程は水道水にして、最後に炊く時の水を再びミネラルウォーターにするのが正解です。

なお、炊飯に使う水は常温という人がほとんどでしょうが、実は水の温度も炊きあがりに影響します。よりおいしく炊くには、約6℃がおすすめで、しゃっきりと炊きあがるそうです。冬は水道水自体がこの程度の温度になるのでそのままで大丈夫。夏は冷蔵庫で冷やした水がおすすめ。しゃっきり系がお好みなら、ぜひ試してみてください。

お米の管理で重要な3項目

【1:開封前~適正な保存をしている米を買おう!】

米は含水量が鮮度の目安。収穫してから年内12月までを「新米」と呼び、この季節の米は含水率が約15%くらいです。一方、収穫から時間が経った米であっても、保管状態さえキチンとしていれば含水率は14%~13%を維持しているのが一般的。米は数kgずつパッケージされて販売されています。パッケージを開封しない状態であれば、含水率は大きく劣化しないもの。米屋が適正な状況でしっかり管理をしていれば、開封前の米が乾燥して不味くなっていることは無いそうです。開封直後からおいしく無いと感じる場合は、米の購入先を変えてみるのも対策のひとつでしょう。


【2:開封後~水分を逃がさないことが大事】
米屋での保管状態が適正であれば、米の含水率は通年大きな変化が無いと書きました。しかし、夏の米はやっぱり水分量が少ない……と感じる人も多いはず。それは、開封後の変化に大きな違いがあるからとのこと。

例えば「新米」は、開封後20日間経過しても含水率があまり変化しないそうです。そのため一袋を食べ終わるまで、瑞々しくておいしいと感じることができます。しかし、7~8月の米の場合、開封20日後には含水率が約12%を下回るとのこと。これが「夏の米はパサパサ」と感じる大きな原因。米は生ものですから、開封したらなるべく早く使いきるのがおいしく食べきるコツ。

開封した米の保存期間は、冬から春までが約 1ヶ月以内、梅雨から夏までは約2~3週間以内がベストとのこと。米は2Kg・5Kg・10kgといろいろなサイズで売られていますので、各家庭の消費量に見合った量を選びましょう。

【3:保存場所~暗くて温度・湿度が一定している冷蔵庫がイチオシ!】
開封した米を少しでもおいしく食べるために、家庭での保存にも気を使いましょう。米の保存に適しているのは、暗くて「湿度・温度」が一定しているところ。最適温度は5℃前後。家庭では、冷蔵庫が一番条件が近い場所です。でも、米袋ごと入れておくのは場所をとってしまいます。そこでおすすめなのが、小分け収納。

例えば1回3合炊くのが定番なら、密閉できるストックパックに3合ずつ入れましょう。これを野菜室に平らに入れておけば、場所も取らずに済むし、ご飯を炊く時に計量しなくて済むので手間が省けて、一石二鳥!乾燥を防いでくれるのはもちろん、空気に触れる回数が減るので酸化も防ぎ、鮮度を維持しやすくなりますよ。

白米は日常的に食べるものだからこそ、美味しくいただきたいもの。今回ご紹介した内容を参考に、ぜひ充実した白米生活を送ってください!

◆監修・執筆/戸井田 園子
性能・コスト・デザインなどを総合的に判断し、製品選びに役立つ情報を発信する家電コーディネーター。総合情報サイトAll Aboutの家電ガイドを始め、雑誌、テレビ、ラジオなど数多くのメディアで活躍中。

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