韓国ドラマ『ロマンスは別冊付録』感想/あらすじは!?イ・ジョンソク主演のラブコメ名作を徹底解説!
2024/11/05
可愛らしさもある端整な顔立ちと186cmというモデル顔負けのスタイル、そして出演作を次々にヒットさせる演技力まで兼ね備えた新韓流四天王の1人イ・ジョンソク。2021年1月に兵役を終え現在復帰作を準備中ということで期待は高まる一方です!
そんなイ・ジョンソクの兵役前最後の主演ドラマであり初のラブコメ作品となった『ロマンスは別冊付録』について、韓国留学経験のある韓流マニアで韓国ドラマライターのJUMIJUMIさんに解説してもらいました。
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出版社を舞台に本と人生を紡いでいく大人のラブコメディ!
ヒロインのカン・ダニを演じているのは、この作品が9年ぶりのドラマ出演となり、実生活では元祖韓流四天王ウォンビンの妻であるイ・ナヨンです。
イ・ジョンソクは「文学界のアイドル」と呼ばれるベストセラー作家であり、大学では教授として講義を行い、さらにキョル出版で出版界最年少編集長を務めるチャ・ウノを演じています。
夫に離婚され住む家も失った37歳のカン・ダニ。難関大学出身で受賞歴もある売れっ子コピーライターだったという輝かしい経歴があるのに、長い専業主婦期間が邪魔をして再就職試験は50社全敗。留学中の12歳の娘には毎月仕送りをしなければならず貯金も間もなく底をつきそうな状態。仕方なく20年来の付き合いで本当の弟のように親しいチャ・ウノの家に家事代行として忍び込みながら、なんとか生活を繋いでいました。
そんな時ウノが編集長を務める出版社、キョル出版で人員を募集していると知り、これまでのキャリアを捨てて「高卒で年齢もそこそこいってる雑用契約社員」として働くことに!
結婚して幸せに暮らしていると思っていた姉的存在のダニが自身の出版社の新人採用面接に突然現れたうえ、「高卒でキャリア無し」と書かれた履歴書を見てウノは驚きと憤りを感じますが、ダニが人生崖っぷちにいることを知り、同居を承諾し協力することに。しかし社内では2人の関係は絶対秘密です!!
働ける喜びと感謝の気持ちを噛み締めながら、どんな雑用も一生懸命にこなすダニ。一度は失いかけた人生を前向きに健気に取り戻していきます。そんなダニを見守るウノは遠い昔にしまい込んだ気持ちが再び膨らみ始めるのを感じます。そこにウノの後輩である編集チーム女性代理のヘリンや、偶然出会ったダニと急接近するブックデザイナーのソジュンが加わり、恋の四角関係も動き出します!
見どころ1:日本人にはちょっと不思議な姉・弟の関係
この作品を観る上できちんと理解しておきたいのは、日本にはない韓国の複雑な「呼称文化」です。これは私自身が韓国留学中にとても苦戦した部分でもあります。
ダニはウノのことを「ウノ」と呼ぶ以外に「トンセン(동생)」といいます。「トンセン」というのは妹や弟(年下の存在)の呼称で、血縁のある本当の妹弟にも、血縁はないけど親しい年下の人にも使います。
一方ウノはダニのことを「ヌナ(누나)」と呼んでいます。字幕では「ダニさん」と訳されていますが、「ヌナ」は年上の女性の呼称で「お姉さん」という意味です。こちらも血縁のある姉にも、親しい年上の女性にも使います。
「ヌナ」や「トンセン」と呼び合えるのはお互いが親しい間柄であると認めている証明で、誰でも最初からそう呼び合える訳ではありません。相手が年上の女性だからといって突然「ヌナ」と呼んだりしたら、とても馴れ馴れしく失礼になります。
作品では小学生のウノが車にはねられそうになったところを高校生のダニが救ったことで出会い、そこから20年来の付き合いであると描かれているので、2人の関係が本当の姉弟のように長く深いものであることが分かります。
日本では親しい間柄でも、血縁関係でなければ「お姉さん」や「弟」とはあまり呼びませんが、韓国ではこれが普通のことです。この文化の違いを知っていると、よりこの作品の深い部分を楽しんでいただけると思います。
見どころ2:リアルに描かれた社会問題「経歴断絶女性」と働く女性達の葛藤
ダニのように結婚や出産を機に一度社会から離れ、後に再就職を目指しても復帰できる職場が見つからない女性のことを韓国では「経歴断絶女性(略して経断女)」といい、大きな社会問題になっています。教育大国で女性の大学進学率も高く社会進出も進んでいる韓国ですが、育児休暇の取得しにくい、昔ながらの風潮や他国に比べ平均勤労時間が長いことなどから、仕事と育児の両立が難しいと言われています。
就職活動中のダニは、面接に行った会社の女性社員に「私は育児も仕事も必死にやって死ぬ気でこの席を守ってきた。何年も遊んでた人が簡単に復帰できる場所はない」と言われます。この1つのシーンだけで女性の社会復帰の難しさが見事に描かれている思います。
ダニは遊んでいた訳ではなく、家族のために家事・育児を必死に頑張ってきました。「なぜ主婦はキャリアとして見なされないの?忍耐力も犠牲心養ったし仕事の大切さもわかるのに」というダニのセリフに、出産を機に仕事を辞め約8年専業主婦をしていた私も深く共感しましたが、同時に仕事も育児も両立してきた女性社員のセリフにも納得がいきました。
一方、ダニの上司でマーケティング部のソチーム長はワーキングマザー。彼女もまた「子どもの体調が悪くなると、どうして当たり前のように母親に電話がくるの?」と、育児と仕事の両立に苦悩している1人。
また、同じくダニの上司でバリバリの叩き上げキャリアウーマンのコ理事は、結婚や家庭に不安を抱き仕事に生きる決意をして孤独に生きていました。
この作品がヒットした背景には、現代における様々な女性の生き方をコミカルに描きながら、社会問題をリアルに映し出していて、多くの女性の共感が得られたからかもしれません。日本も少しずつ変わってはいますが、似たような問題を抱えています。女性が働きやすくなる社会の実現が進むといいですね。
見どころ3:1冊の本を生み出すために注がれる情熱に感動!
ドラマが出版社が舞台ということで、一般人が知らない出版業界の裏側を見ることができるのも見どころの一つです。
納期目前で逃げ出す作家を追いかけて説得したり、何百枚という原稿から誤字脱字をチェックしたり、作家やその家族の記念日まで気を配ったり…。キョル出版の人々は1冊の本を生み出すために、泣いたり笑ったりぶつかり合ったりしながら情熱を注いでいます。そうしてやっと出来上がった1冊の本を、まるで自分の子どもが誕生したように尊び喜びます。本を心から愛し情熱を持って仕事をしている人々の姿が涙を誘い、私自身も好きなことや仕事に対する誇りや情熱を忘れずにいたいと刺激を受けました。
見どころ4:年下男子のギャップに胸キュン!そして絡まる恋の四角関係の結末は!?
会社では親しい関係を隠しているウノとダニですが、周囲にバレないように仕事を手伝ったり、こっそりメールでヒントを教えたり、ウノはどんな時もダニを気に掛けます。ダニが成果を上げた時には本当は声を出して大喜びしたいのに、隠れてこっそり喜びます。
家では電気の消し忘れを指摘されたり、恋愛についてダメだしされたり、ダニの一言に一喜一憂。ダニがソジュンとデートすることになれば心配と嫉妬でメールを送りまくるなど子どもっぽい抵抗も見せたりと、会社でのクールで完璧な編集長という姿とは大違いです。
そんなウノの姿に初回から最終回まで胸キュンが止まらなくなります!「家と職場での逆転関係」と「2人だけの秘密」、こんなスパイスが加わったらラブコメが盛り上がらない訳がありませんね!
ウノの思いやり溢れる行動の1つ1つはダニをただの親しいお姉さんとして慕っているからだけではないのですが、ウノのことを「家族同然の弟」としか思っていないダニにはなかなか伝わりません。近所に住むブックデザイナーのソジュンとダニが距離を縮めていくの見て、焦りを感じるのですが…。ウノは「弟」から「男」になることができるのでしょうか?
一方、ウノの後輩ヘリン。新入社員には厳しく冷たい彼女ですが、ウノにとっては可愛く頼れる存在です。ウノを3年間一途に想っていますが、こちらもなかなか伝わりません。信頼できる先輩後輩という今の関係を崩したくない思いと、女性としても見てもらいたいという葛藤を常に抱えていて、そんな切ない恋心に見ているほうも胸が痛くなります。
ダニ、ウノ、ヘリン、ソジュンはそれぞれが親しみを持てて、人としてとても好きになれるキャラクター。全員が幸せになってほしいと願ってしまうほどです。そんな4人の複雑に絡み合ったロマンスの結末は如何に…!
大人の心に響く、人生を1冊の本に例えた美しいドラマ
結婚や出産を経て、もう一度社会に出たいけど勇気が持てなかったり働き方に悩んでいる女性に希望を与えてくれる作品だと思います。キョルで働き始めたダニが「みんなが私の名前を呼んでくれる!」と喜ぶ場面があります。「○○の奥さん」や「○○ちゃんのママ」ではない、「カン・ダニ」という自分を取り戻し輝いていくダニを見て、私も妻でも母親でもない自分の人生をこれからどう歩んで行こうかな?と、ワクワクするものを感じました!
そして人生や人との関係性などを「1冊の本」に例えて織りなされるセリフの数々がとてもロマンティックで、酸いも甘いも経験してきた大人の方々に響くものがあるのではないでしょうか。読書好きな方にもおすすめしたい作品です!
■執筆/JUMIJUMIさん…韓国留学を機に韓国の文化に魅了される。年間30作品以上の韓国ドラマを視聴し、またライターとして情報発信も積極的に行う。ただ作品の内容を説明をするだけでなく、食や生活様式など文化面から掘り下げた解説を得意としている。インスタグラムはjumistyle99。