スウェーデンの暮らしが"シンプル"でも満ちたりている理由
2021/08/28
豊かな自然、シンプルで温かみのあるインテリアなど、憧れの北欧ライフ。サステナブルな暮らしが自然とできる国、スウェーデン在住の久山葉子さんに心豊かな毎日を見せてもらいました!
<教えてくれた人>
翻訳家・エッセイスト 久山葉子さん
10年に夫、娘とスウェーデンに移住。翻訳やエッセイを多数手がけ、最新訳書は『こどもサピエンス史』(¥1,980/NHK出版)。
子育てしやすい環境を求め移住。最初は戸惑いも
11年前に家族で東京からスウェーデンに移住し、現在はストックホルムから電車で4時間の地方都市スンツヴァルで暮らす久山さん。「イタリア育ちの夫が子育てや家族との時間を大切にしたいと移住を希望したのがきっかけ。私は育休明けで復職したばかりで、当初はあまり乗り気ではありませんでした」。
自分たちの望む人生について夫婦で話し合いを重ね、子育て環境や暮らしやすさから、当時2歳になる直前の娘さんを連れてスウェーデンに移住することに。「1年くらいは仕事もなく、刺激の少ない毎日にホームシックを感じたことも。でも、だんだんとゆったりと日常を大切にする、ここでの暮らしが、いとおしいものになっていきました」。
スウェーデンってどんな国?
北欧に位置する国で、首都はストックホルム。働きやすさ、環境、男女平等や教育の充実など幸福度は世界でトップクラス!
70年代に建てられた自宅は移住2年後に購入。斜面に立っているため裏庭は2階に面している。りんごの木があり、収穫も楽しめる。窓からは正面に海が望め、冬は美しい朝焼けを眺められることがいちばんのぜいたく。
スウェーデンは今、住宅バブル!
家を持つことへの憧れが強いスウェーデンの人々。住宅バブルが続き住宅価格は高騰。購入後も資産価値は上がり続けるので、ローンの金利だけ支払える額の家を買い、住み替えて相殺する人も。
夏の大半は庭で過ごします。食事もウッドデッキで
リビングから庭のウッドデッキまでがひと続きになっていて、短い夏の間は、庭でごはんを楽しむのが日課。「1日3食を庭で食べることもあるほど、ここで過ごすのは本当に気持ちがよくて家族のお気に入りです」。
バーベキューグリルでシンプルに肉や野菜を焼いた料理が多いので、調理や後片づけもラク!「夏のウッドデッキは、第二のリビングのようなもの。どのお宅もウッドデッキにソファを置いて、夏の家族だんらんを楽しんでいます」。
夕ごはんは焼くだけのバーベキューが定番
庭ごはんで大活躍のバーベキューグリルで調理を担当するのはパパ。ほかはサラダやフルーツ、飲み物などを用意すればOKなので楽チン!
冬のごはんはオーブンが大活躍
スウェーデンの寒い冬を暖めてくれるオーブン料理。家族の特別なイベントでは、チキンの丸焼きなど華やかなオーブン料理が食卓に並ぶ。
献立がマンネリ化したらミールキット
久山さんは和食、夫はイタリアンが得意だけれど、いつもと違うレシピを楽しみたいときはミールキットを。宅配はもちろん、予約すればスーパーでも買えるそう。この日はカリビアン料理のミールキット。
特別な日はフルコースのテイクアウト
コロナ禍で、地元の高級レストランがフルコースのテイクアウトをスタート。昨年のクリスマスに注文した際は自宅で家族3人での豪華なクリスマスディナーを楽しんだ。
スウェーデン人は家が大好き。家を自分好みにすることで自分も大切にできる
おうち時間に徹底的にこだわり、家の中を自分好みにあつらえることがいちばん楽しいというスウェーデンの人々。新しい家よりも、古い家に自分たちで手を入れ、気に入った空間に仕上げるのが喜びのよう。「家へのこだわりが自分らしさの象徴にもなっています。"人と同じでなきゃ"というプレッシャーもなく、とことん"自分の好き"にこだわれることも、この国で暮らす人たちの満足度や自己肯定感をアップさせているように思います」。
ミニマリストじゃないけど気に入った物だけある空間
「わが家はリビングとキッチンがひと続きなのがお気に入り。家が建てられた時代の雰囲気を残しつつ、北欧らしい家具や好きな物を取り入れています」。どの家にもある飾り窓などあちこちにお気に入りの雑貨や花が。
「北欧式インテリアルール」も取り入れてます
スウェーデンの人気インテリアコーディネーターが書いた本の翻訳も手がけた久山さん。本で紹介しているテクニックも取り入れています。 「クッションにカラテチョップの要領で上部やサイドにくぼみをつけると洗練された印象に」。
「トレーやテーブルで空間を仕切って小物を飾ると、ぐっとあか抜けます」。
『北欧式インテリア・スタイリングの法則』(フリーダ・ラムステッド著久山葉子・机宏典訳 ¥2,640/フィルムアート社)
なんでも自分でDIYがスウェーデン式
DIYが大好きなスウェーデンの人々。「わが家も4年前に外壁の塗装にチャレンジしました」。友人でフォトグラファーのヤニッケさんは古い家の壁紙をすべて張り替え、ランプシェードも手作り。なんとウッドデッキも自作したそう。
Instagram:ebeneserhouse
服や靴より家にお金をかければ365日楽しめる
「日本では流行りの服や靴にもお金をかけますが、スウェーデンではそれが家に集中。お金と手間をかけて心地よくした家で長い時間を過ごすことが、日々の幸せを感じさせてくれます」。
コロナ禍になり、日本でも家時間を見直す人が増えましたが、スウェーデンの人々の"おうちが大好き"はますます加速しているよう。
海が見える書斎はお気に入りの場所
リビングの一角にある久山さんの仕事場は壁紙や家具を好きなテイストで統一。ふと視線を上げると窓から見える海が心に潤いを与えてくれる。
"おうちカフェ"も楽しみの1つ
外食はあまりしない分、おうち時間の楽しみ方は豊富。「夫がつくるカフェラテや、娘がいれてくれるチャイラテでお茶時間を楽しみます」。
社会の仕組みが人と地球にやさしいから暮らしがシンプルに
環境先進国のスウェーデンでは、社会の仕組みがシンプルなライフスタイルを支えてくれています。
「社会全体がサステナブルなことを優先しているから、普通に暮らしていれば自然に環境によいことを選択できます。あれもこれもしなくちゃという気負いもストレスもゼロなのは、すごく楽ですね」。
ドライフラワーブーケも並ぶ生花店
最近のお気に入りはドライフラワーの花束。「生花と違ってずっと楽しめるのがいいですね。近所の生花店でおしゃれなドライフラワーを見つけるのが楽しみ」。
生ゴミは無料のコンポスト袋で回収
スーパーの買い物袋は日本以上に高額だが、コンポストにするための生ゴミ用回収袋は無料で配布されている。ちなみに家庭で出る生ゴミや普通ゴミの回収は有料。
※本特集内の表示価格は、税込表示です。
参照:『サンキュ!』2021年9月号「スウェーデンの暮らしが"シンプル"でも満ちたりている理由」より。掲載している情報は2021年7月現在のものです。撮影/久山葉子 取材・文/工藤千秋 編集/サンキュ!編集部