いつ、どうやって教える?命の大切さ【専門家アドバイス】
2022/02/10
遊び半分に虫を踏んだり、簡単に「死ね」と言ったり。そんなとき、子どもにどう声をかけたらいいのでしょうか? 専門家のアドバイスや、おうちのかたの体験を基に、年長さんの心にきちんと届く、「命の大切さ」の伝え方のヒントをご紹介します。
<お話をうかがった先生>
近藤卓(こんどうたく)先生
日本ウェルネススポーツ大学スポーツプロモーション学部教授。日本いのちの教育学会会長。主な著書に『いじめからいのちを守る―逃げろ・生きるため―』(金子書房)、『子どもの心のセーフティネット』(少年写真新聞社)、『乳幼児期から育む自尊感情』(エイデル研究所)、『死んだ金魚をトイレに流すな』(集英社新書)、『誰も気づかなかった子育て心理学』(金子書房)などがある。
「命」について年長さんが理解できることって?
「命」について年長さんの心に届く伝え方をするには、年長さんの発達を押さえておくことが大切。5・6歳頃は、まだ死の意味を理解していないため、虫を踏んだり、安易に「死ね」と言ったりすることもあります。でも、今の時期に死の怖さを説明しても不安にさせるだけ。「死んだら生き返らない」ということは、成長すれば自然に理解しますから、今教える必要はありません。
身近な人の死に接して不安そうなときなどは、「きっとおばあちゃんは、空から見守ってくれているよ」など、安心できるような話をしてください。幼児期には、「死んだら生き返らない」だけでは片付けられない、命への豊かな思いを育むことがとても大切なのです。
「命」の大切さを伝えるために、今できることは?
「自分は大切にされている」と実感できると、まわりの命も大切にする気持ちが育ちます。日頃から「あなたがいてくれてうれしい」と伝えることが大切です。また、言葉だけでなく、スキンシップも重要。手をつないで歩く、一緒に寝るなど、何げないふれあいからお子さんの安心感は育ちます。難しく考えなくても大丈夫。次の関わり例を参考にしてみましょう。
たくさん抱きしめよう
「お帰り」とぎゅっ。「大好きだよ」とぎゅっ。「大丈夫、大丈夫」とぎゅっ。不安なときに限らず、おうちのかたにぎゅっと抱きしめてもらった感覚は、いつでも守ってもらえる、大切にされているという実感として、ずっとお子さんの心に残ります。
スキンシップを大切に
膝に乗せて絵本を読んだり、夜に添い寝をしたりすると、おうちのかたのぬくもりが伝わります。また、熱のあるときなどに、「いっぱい寝たら治るよ」「元気になあれ」と背中をなでてもらったりすると、お子さんはとても心強く思うのです。
共感し合う体験を
一緒にごはんを食べて「おいしいね」「いい匂いね」、一緒に動物を見て「大きいね、びっくりしたね」「かわいいね」など、一緒に過ごし、家族と気持ちを共有すると、大切にされている実感が育ちます。
命を大切にする姿を見せる
「元気がないなあ」と心配しながら花の世話をしたり、飼っていた金魚が死んでしまったら「かわいそうね」と悲しんだり。そんなおうちのかたの姿から、お子さんは命を慈しむ姿勢を自然に学びます。
毎日の出来事を笑顔で聞いてくれる。ごはんを作り、一緒に食べる。本当に危ないことや、誰かを悲しませることをしたときは、本気で叱ってくれる。そういったおうちのかたとの日常的なことが、かけがえのない「大切にされた体験」として、お子さんの中に蓄積されていき、「命を大切にしよう」という気持ちに自然とつながっていくのです。
こんなとき、みんなはどう伝えているの?―「命の大切さ」の伝え方
アドバイスをすると、すぐにやる気をなくすときは、まずは満足感を与えてあげて
お子さんなりにプライドがあったり、「やらされている」という意識があったりすると、おうちのかたの指摘にお子さんはイライラしてしまうことも。まずは「よかった点」を伝えましょう。年長さんはほめ言葉が素直に伝わる時期。ほめられることで、意欲がぐんと高まります。満足感を得ることで、アドバイスも受け入れやすくなります。
「殺す」という言葉を使ったときは、「簡単にその言葉を使ってはいけない」と伝えました
お友だちのまねをして、「殺す」という言葉を何度か使いました。その度に、簡単にその言葉を使ってはいけないと、こんこんと話しました。怖い顔になっていたようで、子どもも泣きべそをかいていました。私の怒る様子に、言ってはいけない言葉だと察したようです。(北海道・アップルパイ)
「死」の意味がわからない時期は、「死ね」「殺す」などの言葉を、強烈に響く言葉として、おもしろがって使うことも多いもの。「言ってほしくない」としっかりと伝えるのが、5・6歳頃のお子さんにとってはわかりやすいですね。
きょうだいに乱暴したときは、「お母さんにはふたりとも大事なんだよ!」と伝えました
弟に乱暴したとき、「ふたりともお母さんが一生懸命に産んだ大事な命なんだよ!」と言いました。(広島県・いやっぷり)
折にふれ「あなたたちは私にとって大切」ということを伝えることで、「自分の命もまわりの命も大切」という気持ちにつながるでしょう。
「死んだらどうなるの?」と聞かれたときは、「天国でまた会えるよ。天国ってこんな所かな」と伝えました
「死んだらどうなるの?」と聞かれたとき、「天国に行くんだよ。誰にでも命はあって、それは終わるけれど、また天国で巡り合えるんだよ」と話しました。天国のお花畑やかわいい天使、虹などの絵を描いたら少し安心したようでした。(愛知県・kokomama)
5・6歳頃になると、「死」について不安に感じることもあるものです。不安そうにしていたら安心できるような話をしてあげるとよいでしょう。
ありを踏みつぶしたときは、「ありさんにもお父さん、お母さんがいるよ」と伝えました
「ありさんにもお父さんやお母さんがいて、あなたが殺したら、このありさんはもうお父さんお母さんに会えなくなるんだよ」と言うと、やってはいけないことだと理解してくれました。(岡山県・カンナママ)
5・6歳頃は、虫が動かなくなるのが不思議で、観察したくて踏んだりしますが、ずっとやり続けることはありません。「ママは虫を踏んでほしくないな」などと、おうちのかたの気持ちをわかりやすく伝えましょう。
※取材時の情報です。
参照:〈こどもちゃれんじ〉