青木さやかさん「自分にも人にも怒ってばかり。でも今は『怒りの断捨離』に取り組み中」

2022/02/25

やましたひでこ先生のご自宅(本物っ)に断捨離しているゲストを迎えてスペシャル対談。今回のお客様は青木さやかさん! 「どこ見てんのよ!」の決まり文句と「キレキャラ」で大ブレイクした青木さんが肺がん闘病を経て行き着いたのは「怒りの断捨離」。これがなかなか難しくて……とため息をつく青木さんへのひでこ先生の回答は?

青木さやか:
タレント。1973年、愛知県生まれ。フリーアナウンサーを経てタレントの道へ。「どこ見てんのよ!」のネタでバラエティ番組でブレイク。現在はバラエティ番組やドラマ、舞台などで幅広く活躍しながら執筆活動もおこなう。プライベートでは2007年に結婚、10年に出産。12年に離婚。現在は長女と猫2匹、犬1匹と暮らす。2022年3月17日(木)に大和書房より「厄介なオンナ」を発売。婦人公論jPにエッセイ「48歳、おんな、今日のところは「◯◯」として」を連載中

やましたひでこ:
断捨離®提唱者。1954年、東京生まれ。子育てや介護を経験した後、ヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」から着想を得た「断捨離」理論を構築。BS朝日『ウチ、〝断捨離〞しました!』(毎週月曜夜8時)にレギュラー出演中。近著は『自在期 もうひとつのあなたの人生の舞台』(ビジネス社)。東京と鹿児島県指宿市の二拠点生活を継続中

親は子どもに、子どもは親に期待してしまうもの

【ひでこ】:青木さんの著書『母』(中央公論新社)拝読しました。しみじみと心に響く名著ですね。

【青木】:わぁ、うれしいです! ありがとうございます。

【ひでこ】:青木さんの子ども時代からお母さまが亡くなるまでの、母娘の確執や葛藤、和解を描いていらして。特に印象的だったのが、友人の家にお母さまと遊びにいったときに、青木さんが場をなごませようとしてご両親のケンカの様子を盛って話したら、あとでお母さまに叱られて傷ついたというエピソード。

【青木】:あの出来事はなぜかすごく記憶に残っているんです。

【ひでこ】:子どもって親のなにげない一言で意外と傷つくのよね。その傷を断捨離できずに、長年引きずることも多い。

【青木】:まさに。なのに、親のほうはそんな出来事があったこと自体、忘れていたりして。

【ひでこ】:私もね、母にずっと葛藤を抱いていたんです。私の母はもともと子どもが好きではなくて、例えば私が転ぶと、心配するより前に「何やってるの?」とさげすみながら笑うような人。それが嫌でね。

【青木】:それはつらい……。私の母は教師でした。美しくて頭がよく、周りから一目置かれる存在で。私は母に褒められたくて勉強やピアノを頑張ったのに、母は絶対に褒めてくれず、私はいつも「悪いのは私」と自分を責めていました。ところが高校時代に両親が離婚。そのとき母に「女」の顔が見えたんです。その瞬間、「母に裏切られた」という悲しみと憎しみでいっぱいになってしまって。


【ひでこ】:親は子どもに「自分の理想の子ども像」を期待するし、子どもも親に「自分の理想のパパやママ」を期待する。でも、親や子である以前に人間ですから、相手が自分の期待どおりに応えてくれるなんて幻想なんですよ。私の親なのに、子なのに、と言い始めると、途端にわだかまりが生まれる。関係性を改善するには、期待を断捨離するしかない。

【青木】:そっか……。相手が身近であればあるほど「こうしてほしい」とつい期待しがちですよね。

【ひでこ】:そう。青木さんも娘さんに期待していること、何かあるんじゃない?

【青木】:今まさに、娘のことを思い浮かべていました(笑)。期待はないと言ったらウソになりますね。先日「あなたは将来、何になりたいの? まさかタレント?」と聞いたら「タレントは嫌」って言うから、ちょっとホッとしたんですよ。でもそのあとすかさず、「ユーチューバーになりたい」って。「へえ~、そうなんだ?」とにこやかに返しましたが、心の中では娘の将来を案じてヒヤヒヤしました……(苦笑)。

【ひでこ】:親ってそういうものよね(笑)。

1人の人間として相手を尊重すれば、期待という執着を断捨離できる

【青木】:さきほどひでこ先生は「関係性を改善するには、期待を断捨離するしかない」とおっしゃっいましたが、期待を手放すにはどうしたらいいんでしょう?

【ひでこ】:青木さんとお母さまの関係を例に挙げるなら、相手を「お母さん」ではなく「1人の人間」として1歩引いて見てみる。すると、「この人にはこの人の人生があるんだな」と冷静に見られるようになるの。それには、呼び方を断捨離するのも効果的。役割や子どもの頃からの愛称で呼び合うのではなくて、互いを「〇〇さん」と名前で呼ぶ。私も母を「お母さん」と呼ぶのをやめました。

【青木】:少し距離を置いてお互いを認め合うことで、「こうしてほしい」という執着心が薄らいでいくんですね。

【ひでこ】:青木さんはお母さまが亡くなる前に仲直りされたのよね。

【青木】:母より先に父を亡くしたのですが、急に亡くなってしまったものだから、父とささいな口論をしたのが結果的に最後の会話になってしまって後悔したんです。だから母の晩年、「今までごめんなさい」と謝りました。

【ひでこ】:その後、青木さんはどう変化しましたか?

【青木】:あんなに嫌いだった母を嫌いではなくなって、最期も穏やかな気持ちで見送ることができました。しかも、亡くなってからは「母だけは私の味方」「いつもバックアップしてくれていた」とまで思えるようになって。

【ひでこ】:素晴らしい。青木さんはかつて「お母さんに裏切られた」と感じて苦しんだ。もしかしたら「私は被害者だ」と思いながら生きてきたかもしれないわね。

【青木】:まさにそうです! 私の人間関係がうまくいかないのは、母との確執のせいだと思い込んでいました。

【ひでこ】:でもね、相手に期待するのも、裏切られたと感じるのも、自分を被害者だと思い込むのも、実は全部、自分の心の問題なんです。欲しいおもちゃを買ってもらえなくて大泣きする子どもと同じで、自分の勝手なのよね。青木さんはおそらくそのことに気づいて、ご自身の被害者意識を断捨離し、お母さまとの関係を修復しようとした。その結果、今まで埋もれていたお母さまへの愛情が表に出てきたのではないかしら。

【青木】:そういうことか……。心の問題と聞いて今思ったんですが、私、44歳で肺がんを患ったとき、自分の生き方を見直したんです。母と仲直りしたいと思うようになったのは、その影響もあったかも。

怒りはあって当たり前の感情。でも、いつまで持ち続けるかは自分で選べる

【ひでこ】:生き方をどう見直したの?

【青木】:がんが見つかって「私、死ぬのかも」「死ぬ前にやり残したことは?」と考えたら、「今までの自分の悪い態度や言動を、みんなに謝りたい」という気持ちが湧いてきたんです。でも過去は変えられないから、未来を変えよう、と。今までは「誰も私のことをわかってくれない」と周りに怒ってばかりいたけど、これからは怒りを断捨離しようと心に誓いました。

【ひでこ】:怒りの断捨離は深いテーマですね。その目標は達成できていますか?

【青木】:それが難しくて。ひでこ先生、アドバイスをお願いします!

【ひでこ】:物の断捨離と一緒で、感情の断捨離を目的にすると苦しくなるんです。そうではなくて、まず自分の望むゴールを設定して、そこに行くための障害を取り除く、と考えるのが正解。青木さんが怒りを断捨離したいのは、その先にどんな世界をめざしているのかしら?

【青木】:ええと……、あ、わかった。毎日ご機嫌でいられる世界です!

【ひでこ】:ご機嫌の障害となる怒りを取り除くには、怒りがわいても引きずらないこと。「また怒っちゃったな」で終わりにするの。

【青木】:切り替えるのがポイント、と。

【ひでこ】:そう。怒りは当たり前の感情だから、なくそうとするのは不自然。だけど、怒りをいつまで抱き続けるのかは自分で選べるの。断捨離とは自分軸で取捨選択すること。生きていれば、おのずと物は増えるし、いろんな感情も湧く。家の中や頭の中の不要・不適・不快な物とともにあり続けるのか、それともバッサリ捨てるのか、青木さんはどうしたい?

【青木】:もちろん捨てたいです! でも私、切り替えが下手で……。

【ひでこ】:切り替え上手になるには、物を断捨離して訓練するのがおすすめですよ。

【青木】:え!? そうなんですか? 実は今日は物の断捨離のご相談もしたかったんですが、そろそろ時間切れですね(涙)。残念ですー。

【ひでこ】:じゃ、続きは青木さんのご自宅でお話ししましょうか? お部屋の断捨離も一緒にする?

【青木】:え! ほんとに!? スケジュール確認しますっ!(スマホを取り出す)

参照:『サンキュ!』2022年4月号連載「断捨離トークひでこの部屋」より。
掲載している情報は2022年2月現在のものです。

撮影/久富健太郎(SPUTNIK) 取材・文/志村香織 編集/サンキュ!編集部

 
 

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