1歳の好奇心を引き出すために、親ができる3つのこと
2022/03/14
お子さんの成長に大切な「好奇心」を引き出す3つのサポートについて、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
<お話をうかがった先生>
汐見稔幸(しおみとしゆき)先生
東京大学名誉教授・日本保育学会会長・白梅学園大学名誉学長。専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。自身も3人の子どもの育児を経験。現代の父親・母親の応援団長を目指している。著書に『「天才」は学校で育たない』(ポプラ新書)、『汐見稔幸 こども・保育・人間』(学研)など多数。
1 興味をもちやすい環境をつくる
わくわくしそうな空間をつくって。
好奇心を育むには、「危ないから」と、何でもかんでも片付けてしまうのは逆効果。もちろん危ないものは片付けておく必要がありますが、部屋はちょっと雑然としているくらいでもかまいません。例えばティッシュペーパーや新聞紙がぽんと置いてあったり、開けてもいい引き出しがあったり。お子さんがわくわくできるように工夫してみてください。
わが子の"興味"を見つけるには?
わくわくの対象は子どもによりまちまちです。「うちの子は興味をもっているのかしら?」と迷ったときに参考にしてください。
Q. 何に興味があるのかわかりません
A. よく遊ぶものを観察してみて。
男の子は動くもの、女の子は想像力を働かせるものが好きな傾向にありますが、その子が何に興味を示すかは、誰にもわかりません。まずは危なくない範囲でいろいろなものを渡して、お子さんがよく遊ぶもの、繰り返しじっと見るものを観察してみましょう。
Q. 反応が薄いようです
A. 態度に表れにくい「観察タイプ」かも。
どんどん探求するタイプの子どももいれば、じっと観察して感情が態度には表れにくいタイプもいるので、あまり心配はいりません。ただ後者の子どもにもきっと好きなものの傾向はあるので、おうちのかたはじっくり観察してみるとよいでしょう。
Q. すぐに興味をなくします
A. 熱中できるものを見つけましょう。
1歳頃は興味が長く続かないものです。また、大人が「すぐに興味をなくす」と思い込んでいるだけかもしれません。子どもをよく観察してみると、同じ傾向のもので遊んでいることも。その子なりの好みの傾向を探してみてください。
2 「やってみたい」にできるだけストップをかけない
ルールを決めつつ好奇心を満たしてあげて。
子どもが興味をもったことは、危険がない限り、まずはおおらかな気持ちでやらせることが、好奇心を育む第一歩です。だからといって家中に紙を貼って"どこでも落書きOK"などとしては、他の家に行って同じことをしかねませんので、「これ以上はダメ」をしっかりと教えることも大切です。その際、最初は泣いて抵抗したり、すぐに忘れてしまったりすることもあるでしょうが、繰り返し伝えることで理解できるようになっていきます。
先輩ファミリーに聞きました!
好奇心を育てるアイディア【環境づくり編】
●"開けてもOK"の引き出しを用意
引き出しの中身を散らかすことが多かったので、引き出しの中身を全て高い所に移し、代わりにタオルを入れておいて、いつ引き出しを開けてもいいようにしています。(滋賀県 えってぃーまま)
●後始末は覚悟のうえで何でも自由に!
積み木遊びやホットケーキの生地を混ぜてもらうなど、「まだちょっと早いかな?」というようなことも、危険がない限りは自由にやらせました。後始末は覚悟のうえで…ですが(笑)。(埼玉県 あんきもぷりん)
●ちょっとした工夫で一緒にお掃除
粘着テープ式クリーナーで掃除をする際は、予備の本体だけを子どもに持たせるなど、興味を抱いたものは、できる限り一緒に楽しんでいます。(大分県 あひるまま)
いたずらにストップをかけずに済む方法
イライラしたりやきもきしたりせずに、いたずらをやらせてあげるには?具体的な方法を先生にうかがいました。
Q. 水道の水を出してびちゃびちゃに…
A. まずはやらせてみて。
思わぬ変化をする水は、子どもが大好きなもののひとつです。ただ水もれや水道代なども心配でしょうから、風呂場に限定したり、周囲にタオルを敷いて、「タオルがぬれたらおしまい」など、ルールを決めたりして、そのことを子どもに伝えておくとよいでしょう。
Q. 電化製品やコンセントにさわって困ります
A. 命の危険があるものは手の届かない所に。
穴もひもも子どもには魅力的なものですが、命に関わるようなものは、子どもがふれないように環境を整備しておきましょう。コンセントは子どもが見えないようにカバーなどして隠したり、電気コードは壁にはわせて固定したりしてふれられるのを防ぎましょう。
Q. 本をビリビリに破いてしまいます
A. まだ上手にめくることができないだけ。叱らないで。
1歳前後の子どもには、ページをめくる力加減がわかりません。またビリッと破いて紙に変化を与えることは、大切な体験のひとつでもあります。破れてしまったときは「本さん痛いね。ばんそうこうを貼ろうね」などと擬人化して伝えると効果的です。
3 いつもそばで見守って発見の喜びを共有する
温かく見守る姿勢がさらなる好奇心を引き出す。
好奇心の発達には、おうちのかたの反応が大切です。受け止めてくれる人がいるからこそ安心して行動できるのはもちろん、「どんな手ざわりかな?」「やわらかいね」といった言葉かけが、言葉を獲得したり、さらなる好奇心を引き出したりする手助けにもなります。ただし、子どもが感触を確かめる前に「やわらかいよ」などと言葉にしてしまうのは逆効果。ぜひ一歩後ろから見守り、お子さんの発見の喜びに共感するようにしましょう。
先輩ファミリーに聞きました!
好奇心を育てるアイディア【声かけ編】
●同じ方向を見て発見を共有!
子どもが声を出して何かを伝えようとしたときは、必ず同じ方向を見て発見を共有し、話すようにしていました。ずっと話しかけていたので、はたから見たら不思議な人だったかな!?(愛知県 くろぷち)
●どんなときも肯定的な声かけに
たくさん散らかしたときでも、子どもからアピールがあったら「いっぱいものを出せたね」など、肯定的な声かけを心がけました。(静岡県 ナンデモイイヨ)
●今、体験していることを口に出して伝えました
天気のいい日は「おひさまぽかぽかしているね」、穏やかな日は「風が気持ちいいね」と、体で感じることを言葉にしていました。(北海道 かさっぺ)
汐見先生の子育て
わが子の好奇心、こんなふうに育てました。
教育学、教育人間学がご専門の先生ご自身の子育ては?汐見先生に、3人のお子さんが小さかった頃のことをうかがいました。
汐見先生の子育てポイント
1.ときどき自然の中に連れ出す
太陽、虫、植物…。自然の中には、子どもの好奇心を引き出すものがいっぱいです。そこで、週末になると自然に囲まれた八ヶ岳を訪れ、気の向くままに、親子でとことん遊びました。
2.多少のことは気にしない
子どもが3・4歳になるまでは、うちの中が散らかるのは当たり前。わが家でも、危なくない限りはやりたいようにやらせていたので、ふすまや障子はいつもボロボロでしたよ。
3.親も夢中になる
親が楽しんでいることは、子どもも興味をもつものです。実は自然の多い所に行きたかったのは、私自身。気づけば子どもたちも、虫や星など、いろいろなことに夢中になっていました。
おもちゃから外遊びまでどんなことにもいろいろと挑戦させました
今はみんな成人して母親や父親になっていますが、3人の子どもが小さかった頃のわが家は、ふすまも障子もボロボロ!それくらい、いろいろなことをやらせるように心がけていました。また週末には八ヶ岳を訪れて、虫を捕ったり、星を見たり。子どもたちの興味に合わせて、親子で夢中になって遊ぶことが多かったですね。
大切なのは、親も一緒に楽しむ姿勢!
その成果かどうかはわかりませんが、今は3人とも、それぞれ好きな分野の仕事に就いてがんばっています。ただ、二男の料理好きだけはもっと伸ばしてあげたかったなあと。それが心残りではあるのですが、ひとつ言えるのは、親が子どもの反応を楽しむことで、子どもの目はますますキラキラするということ。いたずらだと思うとイライラするかもしれませんが、「こんなことに興味をもっているのね」という目で見てみると、お子さんのわくわくをより楽しめると思います。
※取材時の情報です。
参照:〈こどもちゃれんじ〉