羽生、宇野、鍵山の3人ともメダリスト候補! 北京五輪のフィギュアスケート各種目の見どころは?
2022/02/03
2022年2月4日から開幕する北京2022冬季五輪。数ある競技のなかでも、メダル獲得への期待がとくに高いのがフィギュアスケートです。五輪開幕当日の午前9:55(北京現地時間/日本時間10:55)に始まる「団体戦の男子シングル ショートプログラム」を皮切りに、2月20日の「エキシビション」まで、連日のようにフィギュアスケートが見られるということで、テレビ観戦を楽しみにしている人も多いのでは?
そこでサンキュ!では五輪開幕に合わせて、日本中が注目するフィギュアスケート競技の観戦がもっと楽しくなる情報をお届け。解説してくれるのは、さまざまなメディアでフィギュアスケートのライターとして活躍する長谷川仁美さんです。
- 【男子シングル】日本の3選手は全員、メダル候補!
- 【女子シングル】ロシア(ROC)勢が、とにかく強い
- 【ペア】三浦&木原は、「笑顔」と「雰囲気」で魅了する
- 【アイスダンス】23組中11組が、同じコーチ、同じ拠点で練習!
【男子シングル】日本の3選手は全員、メダル候補!
日本からは男子シングルに羽生結弦選手、宇野昌磨選手、鍵山優真選手が出場します。この3選手、全員がすごいんです!3人とも金メダルを手にする可能性がありえるくらい、世界的にも注目されています。
羽生選手は、過去2回出場の五輪で2度とも優勝。そんな彼が、この4年間で目指してきたのは、史上初となる“試合での4回転アクセルを決めること“でした。さらに彼は「オリンピックって、発表会じゃないんです。僕にとっては、勝たなきゃいけない場所なんです、2連覇していることもあるので。3連覇は、絶対失いたくない」ともコメント。
つまり、羽生選手は“3連覇”と“4回転アクセルの成功”という2つの偉業を、北京五輪で成し遂げようとしています。
宇野選手は2度目の五輪。前回は銀メダリストです。そんな実績のある選手にもかかわらず、昨シーズン半ばあたりから「成長したい」と何度も口に出しています。
今シーズンのフリー『ボレロ』は、4種類・5つの4回転ジャンプを組みこむ、かなり難易度の高いプログラム。「オリンピックという舞台で今年一最悪な演技をしても、それを受け入れる覚悟は持っています。それでも成長できる選択をしたいと考えています」と、まったくブレずに五輪に臨みます。
鍵山選手は18歳の高校3年生。初めての五輪ですが「今の構成でノーミスしても、他の選手には勝てない。オリンピックまでに新しい4回転をもう1種類練習して、ノーミスの演技ができるように」と、トウループ、サルコウに加えて、ループを跳ぶ練習を積んでいます。
日本人選手以外では、アメリカのネイサン・チェン選手も優勝候補。4年前の平昌五輪では、まさかのショートプログラム17位スタートになりましたが、フリーでは4回転を6つ入れる驚異的な演技で1位、総合で5位となりました。その後、世界選手権を3連覇して北京五輪を迎えます。北京は、母親の出身地であり、今も親戚がたくさん住んでいる、縁(ゆかり)のある街でもあります。
【女子シングル】ロシア(ROC)勢が、とにかく強い
女子シングルにも、日本選手は3人出場します。
2度目の五輪となる坂本花織選手は、前回大会は6位でした。彼女の魅力のひとつは、テレビで観ていても伝わってくるスピード感や、滑りの力強さ。オフアイスでは明るく元気な21歳ですが、演技になると表情が一転。ものすごい集中力で、演技の隅々まで丁寧に、しかもダイナミックに滑っていきます。
樋口新葉選手は坂本選手と同学年。4年前はあと一歩のところで、五輪出場を逃すことに。それから4年間、北京五輪に出場することを目標に、大技のトリプルアクセルを試合できれいに決められるまでに成長しています。ショートプログラム『Your Song』は、エレガントでしなやかな樋口選手の内面を感じさせるプログラム。フリー『ライオンキング』では、滑りの力強さや気持ちの強さを感じられるでしょう。
河辺愛菜選手は17歳。今シーズン、試合のたびにぐんぐん成長を見せている選手です。ショートプログラム、フリーともにトリプルアクセルを決める彼女が尊敬しているのは、ジャンパーであるトゥルソワ選手(ロシア/五輪ではROC〔ロシア・オリンピック委員会〕代表)。「ジャンプの勢いとか、最初から最後まで盛り上がる演技」に憧れているそうです。
女子シングルの優勝候補はカミラ・ワリエワ選手(ROC)。まだ15歳ですが、フリーでは2種類の4回転を3つと、トリプルアクセルを決められる高い技術力を持っています。彼女の素晴らしいところは、ジャンプだけではないところ。フリー『ボレロ』は表現も美しく、4分間があっという間に感じられます。
同じくROCで、前述したトゥルソワ選手も優勝候補のひとり。彼女はものすごいジャンパーで、今シーズン初めにフリーで4種類の4回転を5つ決める演技を見せました。これは、男子の世界トップレベルの選手だけが見せるような構成です。女子選手なのに高難度ジャンプを決め続けられる、ハガネのような身体にも注目です。
現在の世界チャンピオンのアンナ・シェルバコワも含めたROC勢の3人は全員、同じチームで同じコーチのもとで練習しています。つまり、毎日が戦いのような日々。だからこそ、演技も気持ちも強くなっていくのですね。
【ペア】三浦&木原は、「笑顔」と「雰囲気」で魅了する
日本からは、三浦璃来&木原龍一組が出場します。2人の年の差は9歳ですが、氷上でもオフアイスでも息がぴったりなチームです。
2人の見どころは、笑顔と雰囲気。もちろん、スロージャンプやツイストリフトなど技術力もとても高いのですが、なによりも2人の“笑顔“と、それによって会場全体に広がる心地のいい“雰囲気”が、唯一無二なのです。ショートプログラムの『ハレルヤ』も、フリーの『WOMAN』も、どんどん盛り上がっていく曲調。見ている私たちまで高揚していき、胸を揺さぶられ、演技が終わるころには涙……となっているかもしれません。
メダル争いは、現世界チャンピオンのミーシナ&ガリアモフ(ROC)と、開催地・中国のウェンジン・スイ&コン・ハンが中心になるでしょう。
ミーシナ組は20歳と22歳と若く、今シーズンも試合のたびに伸びています。対して26歳と29歳のスイ組は、0.43点差で銀メダルとなった平昌五輪後、“北京五輪での優勝”を強く願い、母国開催のこの大会を目指してきました。相当な思い入れとともに、五輪に出場します。
【アイスダンス】23組中11組が、同じコーチ、同じ拠点で練習!
日本代表は、小松原美里&小松原尊(選手登録名はティム・コレト)の夫婦チームです。2人のフリーダンスの曲は、映画『SAYURI』のサウンドトラック。このプログラムでは冒頭と途中に、何カ所かナレーションが入っているのですが、それを聞くとプログラムへの理解がぐっと深まります。ちなみにこのナレーション、団体戦では日本語バージョン(夏木マリさんの声です)、個人戦では英語バージョンで披露する予定。ぜひご期待ください。
アイスダンスでは、平昌五輪2位のガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン(フランス)と、ヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ(ROC)などが優勝争いを繰り広げそうです。
パパダキス組は4年前も優勝候補だったのですが、ショートダンスが始まって数秒後、パパダキスの衣装のホックが外れるハプニングがあって2位スタート。10年以上指導しているロマン・アグノエルコーチは、「競技後に2人が泣いているのを、初めて見た」といいます。結果、0.79点差の銀メダリストに。シニツィナ組は、プライベートでもカップル。2人の見せるフリー『ピアノ協奏曲第2番』などは、エレガントでロマンティックな雰囲気です。
アイスダンスではここ5、6年ほど、カナダ・モントリオール組が、一大勢力を誇っています。ご紹介したパパダキス&シゼロンや小松原&コレトなどもそうで、アイスダンス23組中11組がモントリオール組!驚きですね。
見どころを知ったうえで、「自分で感じて」!
選手の素晴らしいところをいくつかご紹介しましたが、こうした情報を踏まえたうえで、最後は「テレビ画面は左上に注目!?フィギュアスケートのテレビ観戦がもっと楽しくなる3つのポイント」でお伝えしたとおり、フィギュアスケートは自分の感じるままに見るのが一番です!
たとえば、演技を終えてキス&クライにいる選手が、次の選手を大きな拍手で応援したり、素晴らしいジャンプに拍手をおくったり……そんなシーンにジーンとすることもあるかもしれません。こうしたシーンには、フィギュアスケートというスポーツの特性が、よくあらわれているように感じます。
フィギュアスケートは、個人スポーツです。そして、演技をしている時には、60×30mのリンクにたった1人(1組=2人)。テニスやサッカーのように、勝たなければいけない相手と対立するスポーツでもありません。そのため、互いにベストを尽くすことを願うスピリットが自然とはぐくまれていますし、選手同士が、想像以上に仲がいいのです。
競技としてだけではないフィギュアスケートの魅力的なシーンも、五輪で何度も見られることと思います。
◆監修・執筆/長谷川仁美
ライター。1974年静岡市生まれ。1992年アルベールビル五輪の伊藤みどりさんのころからフィギュアスケートを見始め、2002年より取材開始。選手、コーチ、振付師、関係者など、数多くのインタビューを行ってきた。『蒼い炎II ー飛翔編ー』(羽生結弦)の構成、雑誌『フィギュアスケートLife』、雑誌『Ice Jewels』、Web媒体などでの執筆、オンライントークの企画運営、スケート関連雑貨の企画販売なども。保育園児の育児に揺さぶられる日々を送っている。