フィギュアスケートの「団体戦」ってどんな競技?ルール、日本のメダル期待度を解説
2022/02/04
2022年2月4日から開幕する北京2022冬季五輪。数ある競技のなかでも、メダル獲得への期待がとくに高いのがフィギュアスケートです。五輪開幕当日の午前9:55(北京現地時間/日本時間10:55)に始まる「団体戦の男子シングル ショートプログラム」を皮切りに、2月20日の「エキシビション」まで、連日のようにフィギュアスケートが見られるということで、テレビ観戦を楽しみにしている人も多いのでは?
そこでサンキュ!では五輪開幕に合わせて、日本中が注目するフィギュアスケート競技の観戦がもっと楽しくなる情報をお届け。解説してくれるのは、さまざまなメディアでフィギュアスケートのライターとして活躍する長谷川仁美さんです。
ショートプログラム(リズムダンス)の上位5ヵ国がフリーに進む
フィギュアスケートの団体戦は、2014年ソチ五輪から始まった新しい競技です。フィギュアスケートは個人スポーツですが、団体戦では、ふだん競い合っている選手たちがお互いを応援したり、キス&クライでよろこび合ったりする姿が見られます。そんなシーンにあたたかな気持ちになったりもする楽しいイベントである団体戦をご紹介します。
団体戦に出場するのは、昨シーズンと今シーズンのいくつかの大きな大会の成績上位10か国――ロシア、アメリカ、カナダ、日本、中国……などです。
選手たちは1人(組)ずつ、ショートプログラム(アイスダンスではリズムダンス)に出場。その順位をポイント化し、4カテゴリー分のポイントを足した数字の大きい方から上位5ヵ国がフリー(決勝的なもの)に進みます。
「最大出場選手枠数」を使い切らない、という戦略も
団体戦には、出場できる選手の枠数について制限があります。
ショートプログラム(リズムダンス)に出場した選手たちのうち、最大2カテゴリー(枠)までは、フリーの出場選手を替えられる……つまり、ショートプログラム(リズムダンス)で計4枠(男子1枠、女子1枠、ペア1枠、アイスダンス1枠)+2枠=6枠が、1ヵ国の「最大出場選手枠数」になります。
第1回団体戦のソチ五輪のときは、すべてのチームが、最大出場選手枠数「6」を使い切る形で団体戦が進みました。まだ団体戦がどこかお祭り気分のような感覚だったため、「五輪なんだし、出場できる人が多い方がいいよね」的な雰囲気があったから、ともいえます。
しかし、第2回の平昌五輪でカナダは、戦略として、「6」ではなく「5」で戦い、ぶっちぎりの優勝を果たしました。
五輪の約1年前から「平昌五輪の団体戦で優勝しよう」と話しあっていたというカナダチーム。団体戦優勝には、成績が拮抗していた女子2人以外の3カテゴリーでは、カナダトップの選手(組)がショートもフリーも滑ろうという結論になったそうです。つまり、「最大出場選手枠数」の「6」ではなく、精鋭の「5」で戦うということですね。
団体戦は、個人戦の前にあるため、団体戦で体力を使いすぎてしまうと、個人戦に響いてしまうもの。ですので、個人戦との兼ね合いも考える必要があります。
平昌五輪では、団体戦の直後はペアでした。そのため、カナダペアのメーガン・デュハメル&エリック・ラッドフォードは、団体戦と個人戦と合わせて1週間で4度演技をする必要があったのです。これは、かなりきつい日程ですね。それに当時の彼らは、32歳と33歳と若くはありませんでした。ですので、身体の疲労の回復時間を考え、スタミナもメンタルも十分に整えて、五輪に向かったそうです。
結果、最終種目の女子フリーの前には、カナダの優勝が決まるという大差での優勝!そしてこのカナダペアは、個人戦でも銅メダルを手にしています。
北京五輪の団体戦はどうなる?
4年前にこうした戦略を見たことから、今回の北京五輪では、各国ともやみくもに「最大出場選手枠数を使う」という作戦は取らないでしょう。どの国もかなり本気で戦略を立ててくることが予想されます。
今回、団体戦の直後は、男子シングルです。そのため、個人戦の男子シングルで2枠以上ある国は、団体戦男子のショートとフリーで別の選手を起用する可能性が高いです。
たとえば日本は、個人戦では羽生選手、宇野選手、鍵山選手の3人がいます。このうち、1人がショートに、別の1人がフリーに出場するのではないでしょうか。
メダル争い……日本は期待できる?
団体戦はやはり、どのカテゴリーでも満遍なく強い国が優勝します。今大会の代表選手たちを見ると、女子、ペア、アイスダンスの現在の世界チャンピオンのいるロシア(ROC)が、優勝候補筆頭。そこに続くのが、アメリカでしょうか。
これまでの2大会で日本はどちらも5位。フリーには進むけれど、メダルには届かない、という位置でした。
ですが今大会、3位候補の筆頭は日本です! 私自身、いくつかシミュレーションをしてみましたが、計算上はポイントで3位になりそうなのです。あくまでも、予想ですけれど。
過去2大会と比べて、北京五輪の日本では、「ペアの躍進」が際立っています。三浦璃来&木原龍一ペアの存在が、日本の団体戦初メダルのキーになっていますね。
2月7日、団体戦最終日、日本の選手たちが嬉しそうに表彰台で手を振る姿から、この五輪をスタートさせられたらなんて素晴らしいのだろう、と今からわくわくしています。
五輪の競泳などのように、個人戦のあとに団体戦のほうが個人戦への負担が少ないのでは、という声も聞こえています。ですが、団体戦に出場する選手たちは、五輪リンクの試合での様子や雰囲気を個人戦前に体験できるメリットもありますね。
平昌五輪団体優勝のカナダチームのデュハメルさんは「団体戦のメダルは、個人戦への大きなモチベーションになりました」と言っていました。
まもなく、2022年北京五輪のフィギュアスケートが始まります。団体戦は、日本時間の2月4日(金)10:55、男子ショートプログラムからスタートです!
◆監修・執筆/長谷川仁美
ライター。1974年静岡市生まれ。1992年アルベールビル五輪の伊藤みどりさんのころからフィギュアスケートを見始め、2002年より取材開始。選手、コーチ、振付師、関係者など、数多くのインタビューを行ってきた。『蒼い炎II ー飛翔編ー』(羽生結弦)の構成、雑誌『フィギュアスケートLife』、雑誌『Ice Jewels』、Web媒体などでの執筆、オンライントークの企画運営、スケート関連雑貨の企画販売なども。保育園児の育児に揺さぶられる日々を送っている。