こども・若者の声を聴き、こども・若者の視点に立った施策を推進する「こども家庭庁」の取り組みの一つに「こどもの居場所づくり」があります。こどもには、家庭でも学校でもない“居場所”が必要とはどういうこと? また、どういう取り組みなのか、10代のお子さんをもつママでもあるサンキュ!アンバサダーが取材しました。
こども家庭庁のパパ職員に聞く!「こどもの居場所づくり」って何ですか?
取材に答えてくれたのは
こども家庭庁成育局成育環境課 加賀大資さん
中学校・高等学校やNPO法人で、こども・若者の育ちや支援に関する経験を経て、2022年10月より現職。ご自身も子育て中のパパ。
取材
サンキュ!アンバサダー
(上の写真右から)
臼井愛美さん(お子さん:長男20歳、二男17歳、長女14歳)
高田なみこさん(お子さん:長女10歳、長男8歳)
原奈美さん(お子さん:長女15歳)
こどもの健やかな成長のためには、安心して過ごせる居場所をもつことが大切!?
原(以下敬称略) こども家庭庁では、今「こどもの居場所づくり」を進めていると聞きました。その経緯と背景を教えてください。
加賀 こども家庭庁が発足する際、定められた基本方針の中に、「こどもが安心して過ごすことができる場の整備」があることに加え、現在、「こどもの居場所づくり」が求められている背景は3つあります。
1つ目は、地域のつながりの薄さです。少子化により、こども同士で遊んだり学び合う機会が減り、空き地や路地裏などの場も少なくなり、こどもが社会で居場所をもちにくくなっています。
2つ目は、不登校などの困難を抱えるこどもが増えていることです。
3つ目は、価値観の多様化により、こどもが多彩な趣味嗜好をもつようになり、それに応じたいろいろなタイプの居場所が必要になっていることです。
これらのことから、私たちはこども・若者が安全・安心に過ごせる居場所づくりを進めています。
臼井 私の息子たちはサッカーをやってきたのですが、公園でもボール遊び禁止のところが多くて、行く場所が結構限られていますね。
加賀 広場があっても、こどもたちが自由に過ごすことが許容されていない場も多く、安心して思いきり過ごせる場所がなかなかないという問題点があります。
高田 居場所づくりの推進にあたって、調査をされたそうですね。どんな内容ですか?
加賀 昨年度、こどもと若者約2000名へのアンケート調査に加え、インタビューを行いました。「家や学校以外の居場所が欲しい」と回答したのは約75%で、4人に3人でした。また、このうち「家や学校以外の居場所が(欲しいけど)ない」という子は約25%、4人に1人いることが分かりました。回答者の年齢や性別などに偏りがあるため、解釈には注意が必要ですが、一定の居場所ニーズがあることがうかがえます。また、「家や学校に居場所があるなら大丈夫」と思われがちですが、そんな子たちにも、公園など別の居場所へのニーズが高まっていることが分かります。
原 「家や学校以外の居場所」が求められているんですね。
高田 うちの子は小学校高学年になるにつれて、友だちとの関係性も複雑になってきていて、これからは家や学校以外の場所があることも大事なのかなと思っていたところでした。
加賀 すべてのこども・若者に居場所が必要なことは大前提として、さらに居場所は複数あることが望ましいとされています。「今日は友だちとここにいたけど、喧嘩しちゃったから明日は違うところに行こう」というように、居場所の選択肢があったほうが健やかな成長につながります。家や学校以外にも、安心して過ごせる多くの居場所をもてることが重要だと考えています。
こどもの居場所とは、「居たい・行きたい・やってみたい」と思える場
臼井 こどもの居場所って、具体的にはどういうところでしょうか?
加賀 そもそも居場所とは、こども本人が決めるものです。また、居場所と聞くと具体的な「場所」を想像しがちですが、時間や人との関係性を含め居場所になり得ます。つまり公園や児童館などはもちろん、オンライン空間や信頼できる大人など居場所と感じる場や対象は多様です。そうした居場所をこどもの視点で捉えると「居たい・行きたい・やってみたい」という3つの要素で構成されることが分かってきました。こども自身がありのままで居られるなど「そこに居たい」と思える。近所にある、無料で行けるなどの理由で「行きたい」と思える。そして、自分のやりたいことを思いきり「やってみたい」と思える場であれば、そこがこどもの居場所になりやすいと言えます。
臼井 「ここが居場所だよ」と大人に言われても、こどもにとって居心地がよくなければ意味がないですよね。うちも近所の地域センターは息子2人には合わなかったけれど、娘には大事な居場所になっているので、こども1人1人によって違うんだなと思いました。
加賀 居場所づくりには、新たに「こどもの居場所づくり」を立ち上げるものと、既存の施設や公園などを活用するものがあります。たとえば公園で焼きいも大会などのイベント開催をきっかけに新たな友だちと出会い、そこで一緒に遊ぶようになり、公園が新たな居場所になることもあります。
新しいタイプの居場所づくりも進んでいます。オンライン上の仮想空間(メタバース)で自分のアバターを作り、自室のパソコンから参加するのもその一つです。障がいがあったり性的マイノリティなど特別なニーズを持つこどもが、対面での関わりを負担に感じるなど、メタバースが居場所になる場合もあります。
親にとっては不安に感じることも。親である私たちにできることは?
臼井 サンキュ!とたまひよの合同アンケート調査で以前、「こどもが家庭でも学校でも塾でもない、安心して過ごせる居場所をもつことをどう思いますか?」と聞きました。「とても必要」は51%、「どちらかというと必要」は39%。9割以上の親が居場所づくりを肯定的に捉えていました。
たまひよ×サンキュ!合同企画『子育て世代はどう思う?こども家庭庁にあなたの声を届けよう』に関するアンケート(2023年12月25日~2024年1月9日)回答者数=1801名
原 今は多数の家庭が共働きなので、放課後にこどもが安心して過ごせる居場所があれば、親も不安なく働けるなと思いました。
加賀 こども家庭庁では、NPO法人をはじめとする民間団体が行う居場所づくりを支援しています。直接その団体を支援することもありますが、自治体を通じて支援するケースもあります。その地域に詳しい自治体を経由することで、地域の実情やその地域に住むこどもたちのニーズなどを理解している民間団体に支援することができ、こどもの居場所を安心・安全に保つ意味でも大事だと考えています。
高田 こども家庭庁が支援している居場所だったら安心かも。
原 こどもが自分の居場所でのびのび過ごせるように、親が心がけたほうがよいことはありますか?
加賀 こどもとコミュニケーションを取り、保護者が興味を持って「その場がどういう場か」を知ろうとすることが大事です。こどもにとって、自分の大切な居場所を親が理解しようとしてくれることは、安心にもつながります。
臼井 わが家はこどもとよく対話していて、「今日はここに行ってきたよ」という話も聞けています。今のところ不安はないのですが、オンライン上のことは見えにくいので、コミュニケーションを取りながら様子をうかがうことが大事ですね。
すべてのこどもが、安心できる居場所をもてる社会を目指す
高田 どこにどんな居場所があるのかを知るには、どうすればいいですか?
加賀 お住まいの自治体のホームページがいちばん探しやすいと思います。自治体によっては「こどもの居場所マップ」を作成したり、「外遊びができる」「ご飯を食べられる」「勉強を教えてもらえる」など目的別にまとめているところもあります。こども家庭庁としても、もっと探しやすくなるようにマップ作成など、地域のこどもの居場所に関する広報・啓発への支援を進めているところです。
「こどもの居場所づくり」に関する情報などについて、こども家庭庁のホームページや「こどもまんなかアクション公式LINE」を通じて発信しているので、そちらも見ていただければと思います。
原 さっそく探してみます!
高田 うちの子は、イベントで大人に何かを教えてもらうことをすごく楽しんでいます。友だちと遊ぶ空間だけじゃなく、好きなことについて教えてくれる居場所があるなら、ぜひ行かせてみたいですね。学校から渡されるお便りの案内を見て「これに行きたい!」と言うこともあるので、学校経由で居場所を知る機会も増えたらいいなと思います。
加賀 貴重なご意見ありがとうございます。学校からのお便りを活用して、地域の居場所を周知していくのも大事だと思いました。
臼井 今後、こども家庭庁ではどんな世の中になればいいと思いますか?
加賀 居場所をもてていたことで、「自分自身を受け入れることができた。」「親や先生には言えなかったことを話せた。」など、こどもの育ちに影響していると感じる話をよく聞きます。どんな環境に生まれ育っても、すべてのこどもが居場所をもち、健やかに、そして幸せに育っていける社会を目指したいです。そのためには、周囲の大人があたたかく見守る雰囲気も大切で、そうした社会の雰囲気も促進できたらと思います。
~座談会を終えて アンバサダーの感想~
臼井 居場所を通じていろいろな大人と話すことで、進路や受験、仕事について深く知り、将来の選択肢の幅を広げられたらいいなと思います。また、思春期で心が複雑な中高生たちの居場所もたくさんつくっていただけたらうれしいです!
高田 今は多様性の時代で、たくさんの可能性が広がっています。私たち親の目線だけでなく、いろいろな居場所で人に関わることで、こどものこれからの人生が開けていくだろうなと思います。今日はこどものために支援してくださっている方々のお話を聞けて安心しました。ぜひ私たち親も参画していきたいです。
原 学校以外の場所に1つ、2つと、何か新しいことにチャレンジできる場があればこどもの居場所にもなるし、お母さんたちの居場所にもつながるのかなと感じました。今日はありがとうございました!
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提供/こども家庭庁