ミュージカル「ジャック・オー・ランド ~ユーリと魔物の笛~」

未来を担う子どもたちに、「本物」を見せる体験を―。 担当者が「ニッセイ名作シリーズ」にこめた“想い”とは?

2023/07/28

来年、スタートから60年を迎える「ニッセイ名作シリーズ」。さまざまなジャンルの公演に、のべ800万人もの子どもたちを無料で招待し、優れた舞台芸術に触れる機会を提供しています。今年は新作プログラムが次々と上演されます! この歴史あるプロジェクトを支える”想い”を、担当者のお二人に聞きました。

特別な場所で観る特別な舞台は、最高潮の盛り上がり!

 ここは東京・日比谷にある日生劇場。劇場フロアとつながる赤いじゅうたん張りの階段から、たくさんの小学生たちが元気よく降りてきました。みな興奮冷めやらぬ表情で、たった今観終えたばかりのミュージカル『ジャック・オー・ランド ~ユーリと魔物の笛~』の世界に浸っています。なかには、登場キャラクターのコミカルな動きをまねしながら歩く子も。
どの生徒も、いい時間を過ごせたという笑顔でいっぱいです。

観劇に来た学生
日生劇場のシンボルでもある、レッドカーペットが張られた大理石の階段を上り、劇場フロアへと向かう生徒たち。公演中は毎回、約1000人の子どもたちが大盛り上がりで鑑賞している。

新作ミュージカルは、子どもたちのためだけに劇団四季が制作

 『ジャック・オー・ランド ~ユーリと魔物の笛~』は今年2023年より5年間、毎年6月~7月に上演されるミュージカルで、制作・上演は劇団四季によるもの。一般公演はなく、「ニッセイ名作シリーズ」でしか観ることができない、とてもぜいたくな作品です。鑑賞できるのは、学校単位で応募し、招待された小学3~4年の生徒たち。日本を代表する一流の劇場で、一流の制作陣による作品を無料で鑑賞できる―。そんな素晴らしい取り組みを約60年もの間続けているのが、この「ニッセイ名作シリーズ」です。

『ジャック・オー・ランド ~ユーリと魔物の笛~』の一場面
ミュージカル『ジャック・オー・ランド ~ユーリと魔物の笛~』の一場面(撮影:阿部章仁)。両親を亡くし一人ぼっちだった人間の男の子ユーリが、同じように一人ぼっちで生きている魔物コブと出会い、信じる心が通じ合うことで、世界が大きく動き出す……。ふたりの友情が生み出す物語をとおして、生きていく上で大切なものを伝えてくれる。

8月からは全国での公演がスタート

 「ニッセイ名作シリーズ」は、1964年から50年間にわたり全国で小学校6年生をミュージカルへ無料招待してきた「ニッセイ名作劇場」、および1979年から2013年まで中高生にオペラを低廉な料金で提供してきた『青少年のための「日生劇場オペラ教室」』が前身で、現在も音楽劇やダンス×人形劇、ミュージカル、クラシックコンサートなどのさまざまな分野の芸術舞台を上演しています。今後は、公益財団法人ニッセイ文化振興財団(以下ニッセイ文化振興財団)制作の音楽劇『精霊の守り人』(2023年8月)や舞台版『せかいいちのねこ』(2024年2月)の全国公演も始まり、約6万人の無料招待を予定しています。

未来を担う子どもたちに、「本物」を見せることにこだわる

 約60年という長い間、ここまで大規模なプロジェクトが存続しているのは、企画・制作を行う日生劇場と協賛を行う日本生命保険相互会社(以下日本生命)がともに抱く、大きく、熱い想いがあるからだそう。ニッセイ文化振興財団 全国公演部長 大澤暢也さんと、日本生命 コーポレートプロモーション部 担当課長 勝間雄弘さんにお話を伺いました。

――新作のミュージカル、子どもたちに大好評ですね。大人が観てもじっくりと考えさせられ、希望を持てる作品でした。

大澤さん 『ジャック・オー・ランド ~ユーリと魔物の笛~』は、映画監督の山崎貴さんが原作の絵本で、「種族を超えた友情」や「信じる心をもつことの大切さ」が描かれています。鑑賞後のアンケートでも「また観たい」「友だちを大切にしようと思った」「衣装がすてき」など、たくさんの感想が寄せられていて、多くの方にメッセージが伝わっているのを感じています。どの作品もたいてい、上演まで2年近い準備期間を要しますが、がんばってつくった甲斐がありました。現在も、次の新作に向けてスタッフ総勢で月1回の会議を続けています。

――劇団四季による、最高のパフォーマンスを「生」で観られるのも魅力ですね。

勝間さん 「子どもたちに本物を見てほしい」というのは、ニッセイ名作シリーズを立ち上げた日本生命5代目社長の弘世 現(ひろせ げん)が強く願っていたことです。一流のアーティストたちがつくり上げる世界を子どもたちに直接触れてもらいたいという想いは、今も私たちがなにより大切にしているものです。

インタビューにお答えいただいたお二人
(左)ニッセイ文化振興財団 全国公演部長 大澤暢也さん (右)日本生命 コーポレートプロモーション部 担当課長 勝間雄弘さん

子どもたちにとって「きっかけ」の場になれば

――そこまでの時間や予算をかけても「無料招待」を続けるのはなぜですか? 

大澤さん じつは1963年に日生劇場が誕生したことと大いに関係があるんですよ。当時は東京タワーの完成や東京オリンピックを控え、日本中が経済的な発展に沸いていました。そのとき、社長だった弘世が「経済面だけでなく、日本が本当の意味で豊かになるためには、子どもたちの”心”を豊かにすることが大切。そのためにも本物の場所で本物の芸術に触れてもらいたい」と日生劇場でのミュージカル上演を提案しました。どの子も気がねなく鑑賞できるよう”無償で”というのも、弘世の意思を引き継いでいます。

――そんな経緯があったとは。ところで、なぜ保険会社が子どもたちのための取り組みを行っているのでしょう?

勝間さん それは、私たち保険会社の仕事は「未来をつくる事業」だからです。私たちはお客様の一生に寄り添える存在であるために、さまざまな活動を行っているんです。とくに、これからの社会を支える子どもたちに、文化芸術をとおして豊かな感受性や多様な価値観をはぐくんでもらうことは必要不可欠だと考えています。

大澤さん 子どもたちからは、今回初めて舞台を観て芸術に興味をもつようになったという声も多く届いています。実際に劇団四季の俳優さんの中には、ニッセイ名作シリーズの観劇を機に舞台の道を志したという人もいるんですよ。もちろん、芸術分野だけではなく、この体験がお子さんたちの未来をつくるきっかけになれば、うれしい限りです。

――素敵ですね。日本生命ではほかにも、どんな社会活動を行っているんですか?

勝間さん 近年は少子高齢化社会を踏まえた活動に力を入れていて、健康診断の必要性を発信したり、介護サービスに取り組んだりと、多岐にわたっています。今後も、だれもが健康で幸せな一生を送るために、全力で寄り添い続けていきます。

 

 保険会社とミュージカルの意外な(?)なつながりの根底にあるのは、私たちの一生を実りある豊かなものにするため、寄り添い、支え合っていきたいという想いでした。ニッセイ名作シリーズは、これからも子どもたちに「きっかけ」を与えてくれる存在でいてくれることでしょう。

 
 

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