今、「こどもの居場所」が増えているってご存じですか? 「こどもの居場所」とは、学校でも家庭でもない、こどもが自分らしく安心して過ごし、成長できる場所のこと。そのうちの一つの施設に、サンキュ!アンバサダー親子が行ってみました。
平日の放課後、続々と集まるこどもたち。どう過ごすかは人それぞれ
訪れたのは、サンキュ!アンバサダー原奈美さん、長女(16歳)
「こどもの居場所」とは?
学校でもなく家庭でもない、こども自身が「居たい・行きたい・やってみたい」と思う第3の居場所。地域の児童館、青少年交流センターやプレーパーク(遊びの場)、こども食堂などさまざまな形がある。この「こどもの居場所づくり」はこども家庭庁が推進していて、NPO法人など民間団体が運営を担っている事例もある。
今回訪れたのは…東京都世田谷区・希望丘青少年交流センター(愛称「アップス」)
アップスは、こどもと若者のためのフリースペースとして2019年2月にオープン。中高生世代の利用者が多い施設ですが、小学生~30代のこども・若者が利用できます。ほぼ毎日9時から22時まで開館しており、一度利用登録をすればいつ来てもOK。おしゃべりしたり、一人で本を読んだり考え事をしたりと、過ごし方は自由。さまざまなプログラムも実施されています。利用は無料。
アップスにはこどもたちが自由に過ごせる多目的スペース、学習室におやつや軽食が食べられるカフェ、楽器練習ができる音楽スタジオやバンド・ダンス・演劇などができるステージ付きの多目的ホール、食材を持ち込んで料理を作れる調理室、グループで使える会議室などさまざまな「場所」があります。
原さん親子が訪れたのは、16時。すでにどのスペースにも多くの小学生から高校生世代の若者がいて、思い思いに過ごしているようです。
「ここはもともと中学校でした。統廃合後の跡地活用を地域の方々と話し合ったときに、『こどもや若者向けの施設をつくってほしい』という要望が多数あり、更地にしてゼロからつくりあげたのがこの施設です」と言うのは、希望丘青少年交流センター・センター長の下村一さん。どんな施設にしようか、どんなスペースがほしいか、どのように利用するか、すべて完成後の利用者となる若者と話し合いをして決めてきたと言います。
「今でもこどもたちからはいろいろな意見が出ます。勉強しているこどもたちからは『多目的スペースがうるさい』、多目的スペースの利用者からは『好きに過ごす場所なんだからいいんだ』。どのような場所にするかはこどもたち同士で話し合って、つくっていければと思っています」(下村さん)
曜日によってさまざまなプログラムも。こどもの「やってみたい!」企画も
それぞれの場所で思い思いに過ごすほか、アップスでは、さまざまなプログラムも実施されています。この日は、隣接する体育館を貸しきっての「SPORTSプログラム」。小学生から高校生までのこどもたちが、バスケットボールをして楽しそうに体を動かしていました。毎週水・金曜日の16時から20時半まではアップスの利用者が体育館を自由に使用できるとか。
ほかの曜日には、買い物から調理、食事、片づけまでを行う「楽しい食卓プロジェクト」、地域のさまざまな職業の大人をゲストに迎えてトークやワークショップを楽しむ「せたがや大人図鑑」。ほかに利用者の若者が企画した「3 on 3大会」や「ゲーム大会」なども。こどもたちの「やってみたい!」を実現する形で多彩なプログラムが開催されているそうです。
「毎年夏には、こどもたち自身が計画・出資してレモネードやポップコーン、ハンドメイド品の販売などのお店を運営する『アップス縁日』を行っています。利益を出すことができなかったり、訪れた人からクレームをいただいたりすることもありますが、こどもたちの様子を見ていると、それも良い経験になっているのかなと思います」(下村さん)
ここでおもしろい人と知り合えた!
利用しているこどもたちはどのように感じているのでしょう。
多目的スペースでギターの練習をしていた高校1年生の女子生徒は、「友だちに誘ってもらって、半年前に初めて来ました。学校ではなかなか知り合えない人と話せるのが楽しいですね。おもしろい人とも出会えた!学校の友だちを連れてくることもあって、週に2回は通っています」と語ってくれました。
机を囲んでおしゃべりに興じているこどもたちは小学5年生。別々の小学校に通っているそうで、「3年生のときからほとんど毎日ここに来てる」「楽しい!」「この場所があって良かった」と口々に話してくれました。
もっとたくさんのこどもたちに「居場所」の存在を知ってほしい
「アップスは現在、1日平均200人超の利用があります。それでもまだ存在を知らないこどもたちも多いので、いかに認知を広げていくかがこれからの課題です」と下村さん。
「何か事情があるのかは分かりませんが、『自分の名前を言いたくない』というこどもも来ます。そういうこどもにも安心して利用してもらいたいと思っています。この場でこどもたちがちゃんと休めればいい。心が解放されて『何かやりたい』という思いが湧いてきたとき、私たちが実現に向けて企画の応援やサポートをすればいいと思っています」
こどもが安心して過ごせる居場所に感動!
原さん親子に感想を聞きました。
長女「近所にボール遊びのできるスポーツセンターはあるのですが、大人との共同利用だし、予約抽選の倍率が10倍で、なかなか遊べなかったんです。家や学校の近くには中高生が無料で行ける居場所があまりないので、こういう場所がもっと増えるといいなと思いました」
原さん「こどもたちの表情が楽しそうで、この場所に安心感があるのだというのが伝わってきました。小学生は学童に行けますが、中高生にはなかなか居場所がないですよね。私自身、ダンススクールを運営しているのですが、不登校の子たち、大学生、いろいろなこどもたちの居場所になっています。今の子は私たちの世代よりもさらに複雑な環境で生きているので、学校や家以外に安心できる居場所がますます大事になっていると思います」
親御さんには「こどもの居場所の応援団」になってほしい
最後に、「こどもの居場所づくり」を推進している、こども家庭庁居場所づくり推進官の大山宏さんに聞きました。
「昨年12月に『こどもの居場所づくりに関する指針』が閣議決定され、国として居場所づくりを推進していくことが決まりました。その背景には、1.「地域コミュニティの変化」に伴ってこどもたちの居場所が減少していること、2.「複雑かつ複合化した喫緊の課題」により、不登校者数や自殺者数の増加などこどもが厳しい状況に置かれるようになっていること、3.「価値観の多様化」により、こどもたち自身のニーズや場に求められる要素も多様化していること、という事情があります。こどもたちの居場所になりうる場を、地域に多様に展開することが必要になってきています。そのため、国では居場所づくりを推進し、主な担い手である市町村やNPO法人などの民間団体を後押ししています。
保護者の皆さんにはぜひ、『こどもの居場所の応援団』になっていただければと思っています。地域にあるこどもの居場所について、その居場所がどんなところか、お子さんと話をしていただきたいです。お子さんが通っていらっしゃるところがあれば、そこでどういう過ごし方をしているのかコミュニケーションをとっていただき、『いい居場所だな』と思われたら、ぜひ職員に応援の声をいただければうれしいです」
アップスのように、こどもたちが安心して過ごせる場所はもっともっと必要で、その居場所づくりに私たち親も積極的にかかわっていく必要がありそうです。
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提供/こども家庭庁