【連載】書店員は、見た!「仲よし夫婦&仲よし家族に、ほのぼの」
2018/09/16
『サンキュ!』の取材でお会いしたYさん。書店の案内カウンターで働いています。毎日、本を探す人々から、さまざまな問い合わせを受ける日々。そのなかにある人間ドラマのあれこれをお伝えしていく連載です。
仲よし夫婦&仲よし家族に、ほのぼの
先日、案内カウンターにやってきた男性は30代前半くらい。パリッとしたスーツを着こなしたすてきなかた。「何かお探しですか?」と声をかけてみると、「入院した妻が退屈しているので」と、少し照れながら言うのです。その照れ顔、萌える… ! !
人さまのご主人に萌えつつ、奥さまの読書傾向を伺ったら、「妻が読書しているのを見たこと、ないです」。え? 漫画は?「漫画も読まないです」。ファーーーーー(心の奇声)!!あなた、なんだって本を読まない人に、本を買いに来たんだい!?
こうなったら、どんな人なのかを追及して、好きそうな本を探るしかないというわけで尋ねると、男性は急に楽しそうな表情に。「前回の冬、寒かったですよね。妻は寒がりでホットカーペットを通販で買ったんですが、サイズを間違えて、大きいサイズのものが届いたんです」。ふむ。ちょっとおっちょこちょいなかわいい人ねと、心の中でうなずく私。
「あまりに大きいので、『返品交換ができるか確認しなよ』と言ってから仕事に行ったんですけど、帰ってみたら、中の電線もろとも、部屋のサイズに合わせて切ってました。『これじゃ危なくて、使えないよ!』と言ったら、『え、そうなの~?』って。そんな嫁です(笑)」
お、おぅ。その話を聞いても読書傾向は一切わからいけど、妻が面白いヤツなのはよくわかったぜ!!
さて、そんなオモシロ妻に一体全体どんな本をおすすめしたらよいのか、頭を悩ませつつ選んだ本は、『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』。ネットの相談コーナーに実際に投稿された質問から生まれた、ある夫婦の物語の漫画化。毎日あの手この手で死んだふりをする妻の行動は悪ふざけなのか否か。きっと、このオモシロ妻なら共感するのでは。
そして、おまけとして『よつばと!』をご主人に。この漫画は、5歳の女の子、よつばちゃんの生活を描いたお話。よつばちゃんのお父さんは、世界一すてきなお父さん(私調べ)。妻の退院まで1人で育児をしているお客さまの「ワンオペ育児の大変さ、わかりま
した」との言葉が印象的だったので、おすすめしました。
どちらの本もお買い上げくださったお客さま。1週間後、続き買いに、お子さんと再来店!家族で漫画を回し読みできるのは、仲よしの証拠ではないかと、私は思うのです。
※個人情報が特定されないよう一部脚色しています。
Yのおすすめする本
『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』は、不思議ちゃんの妻と冷静な夫の日常がつづられている漫画。夫婦の対比が面白く、夫の寛容さに救われ、ほのぼのします。『よつばと!』は小さな女の子の日常を描いた物語。1巻の帯に書かれているコピー「いつでも今日が、いちばん楽しい日。」という言葉を体現しているのが、主人公のよつばちゃん。楽しさ炸裂! 全編とおして悪い人が1人も出てこないところもいいんです。
『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』(K.Kajunsky作、ichida漫画 PHP研究所)
『よつばと!』(あずまきよひこ/KADOKAWA)
<書店員Yさん>
日本海側にある地方都市にある書店に勤める。1男1女の母。休日は1週間分のドラマとため込んだ本にどっぷり浸るのが至福
イラスト/泰間敬視 取材・文/加藤郷子