【連載】書店員は、見た!「事件はクリスマスの書店で起きている」

2019/04/12

『サンキュ!』の取材でお会いしたYさん。書店の案内カウンターで働いています。毎日、本を探す人々から、さまざまな問い合わせを受ける日々。そのなかにある人間ドラマのあれこれをお伝えしています。

事件はクリスマスの書店で起きている

一年で本屋がいちばん忙しい時期、それは12月。書店で働き始めて、クリスマスプレゼントに本を選ぶ人がたくさんいるのだと知り、とてもうれしかったんです。ただ、ただね。ほんとすごいの、12月。超忙しいの(忙しさのあまり、語彙力が低下)。

右端のレジには、10冊の本を1冊ずつ包装してほしいというお客さまの、包装紙の確認に手間取っている後輩の姿が。臨時のラッピングブースでは同僚が、子どもに大人気☆顔がパンでできている某ヒーロー(丸顔)の顔形の本を包むのに四苦八苦。

そんななか、案内カウンターに、おしゃれなシャツのおじさまがマジックの本を注文にいらっしゃいました。連絡先を記入するために使ったボールペンをお返しいただくと、あれ? ボールペンが2本、3本と増えていく…… !  マジシャン!?

その後も次々に繰り出されるテーブルマジックにスタンディングオベーション(ちなみに観客は私1人)。そろそろハトが出てくるのではとドキドキし始めたころ、おじさまはお帰りに。

と思いきや、「ごめんなさい。忘れ物」。あたりを探してもなく、困惑していると「お嬢さんの右ポケットに」。ポケットを探ると、小さなサンタの人形がいたのでした(驚愕)。

次はアラフォーの女性が、「『名探偵コナン』全巻を包んでくれる?」。ヒーーー!!ありがとうございます!!現在95巻まで出ていますが!? 1箱に入れてラッピングしてほしいという要望に白目になりつつ、どうにか形にして、台車で車まで運ぶと、笑顔でお帰りになられました。あの、ものすごい重さの箱は、車から家に運び込めるのかしら……。

ヨレヨレで案内カウンターに戻ると、次にやって来た若い女性は、大学生のめいっ子と高校生のおいっ子にささやかなクリスマスプレゼントを贈りたいとのこと。「いいね!」、なんて平和で、幸せなお問い合わせ! 

おいっ子さん用には、伊坂幸太郎さんの『クリスマスを探偵と』をおすすめ。クリスマスにぴったりな大人向けの絵本です。めいっ子さんには、江國香織さんの短編集『つめたいよるに』を。文庫なので、シックな革のブックカバーと一緒にプレゼントすることになりました。

幸せと喧騒がごちゃ混ぜの、クリスマスシーズンの書店。いろいろ書き連ねましたが、どんなラッピングも頑張ってお受けしております(笑)。

*個人情報が特定されないよう一部脚色しています。

Yのおすすめする本

クリスマスの夜に尾行をしている探偵がある男に出会い……。『クリスマスを探偵と』は、絵本仕立ての心温まるファンタジー。ミステリー作家らしく、どんでん返しもあり。伊坂幸太郎流のスパイスもきいています。『つめたいよるに』は、ごくごく短いお話を21編!収録。人気作家、江國香織さんの初期の作品集ですが、どこかはかなく胸を締めつけられるお話が集められています。教科書にも採用された『デューク』は必読!


<書店員Yさん>
日本海側の地方都市にある書店に勤める。1男1女の母。書店以外の場所でも、人によく声をかけられ、面白エピソード満載


イラスト/泰間敬視 文/書店員Y 構成/加藤郷子
『サンキュ!』2019年1月号より抜粋

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