好きな本を読めていますか?
働いていると、ビジネス書以外は読めなくなる……そんな話もよく聞きます(話題の本、ありますね)。娯楽は他のもので足りているし、仕事や勉強ではほかに読むべきものが山ほどある。
かさばるし、わざわざ買って手元に置く意味がある? 読めない本が積み重なる様は「どうして読んでくれないの?」と責めてくるようにも見えてくる。
私はそう思ってきました。
よく本を読む人たちに共通していた3つのこと
嗜好性や趣味で集まる人を調べてみよう。
業務上必要となったそんなお題をもとに、まずは毎日オンラインで30分程度、読書好きな人達のお話を聞いていきました。20名ほどでしょうか。
読んでいる本も年代もバラバラで、そんなに共通点はないかな?と質問を始めたのですが、意外なところでみなさんが同じことを言うことに驚きました。
それをちょっとご紹介したいと思います。
1.考えても仕方のないことでくよくよするくらいなら、好きな作家の本を読む
最初にお話を聞いた方は「私は考えても仕方のないことをくよくよずっと考えてしまうタイプ」とおっしゃいました。わかる!私もそのタイプ…!と思って聞いていると
「そんなときは、本を読むんです。読んでいる間はその本の世界のことしか考えられなくなるから」
なるほど。そして、いつの間にか元の悩みが薄れていくそう。
またある人は、初めて管理職に就いたときに、部下が仕事を怠けがちなことが目についてずっとイライラしていた時のことを話してくれました。
「仕事も忙しくて、本も読めてなくて。せめて憂さ晴らしに本でも読もうと思って、好きだった作家さんの作品を手に取ったんです」
「読んで驚きました。私の悩みの答えがすべてそこにあった。いろんな人がいて、みんなその人なりの努力をしているんだなとわかって、気持ちがラクになりました」
書名を聞いてその本を読みましたが、ビジネスマネジメントについて書かれているわけではありませんでした。それは学校に行けない子どもが主人公の小説だったのです。ここに答えを見つけるなんて…
読み手の方がどれほど真剣に答えを探していたのか、そしてその答えはたぶん自分の中にあって、引き出されることを待っていたのだと感じました。
本は現実から逃避させてくれるだけではなくて、見えなかった答えを示してもくれるようでした。
2.読書アカウントはなぜかほぼ炎上しない
SNSと切り離せない話題となりつつある、心無いコメントや誹謗中傷。読書アカウントではこの現象がほぼ起こらないらしいのです。
「ライフスタイル全般を見せていたときには、ときどきアンチコメントがついたのに、読書にしたらいなくなりました」「読書アカウントの世界しか見てなかったので、他を見たときにみんなこんなに厳しいんだと驚きました」
話を聞いた多くの人が口を揃えていました。その理由を推察してもらうと
「言葉に敏感になるから、無責任なコメントができなくなるんじゃないかな」「いろんな登場人物に感情移入するから、他人に寛容になれる気がする」
どちらも納得です。
「本の中にはほんとーーにいろんな人が出てくるんです。SNSのひと言に腹を立てるのが小さいことになる気がします」
「他人を攻撃しなくても、言葉を上手に使えば自分の考えが伝えられるんだって、読書を続けることで知りました」
なんか、素敵すぎる…!
もしかしてSNSマナーの向上には、ルールを厳しくすることよりも「みんなが本を読む」ことが効くのかもしれません。読書を推進すると、日本がよくなるのかも?なんてことまで思わざるを得ませんでした。
3.本は出会いまでで1ステップ。積ん読でもいい
月に30冊の本を読む。そんな猛者のお話も聞きました。
この人に買っただけで1ページも読んでいない本であふれた自分の棚など見せられない……と思っていましたが
「積ん読。私もありますよ。読んでいない本の方が多いくらいです」と答えた人の多かったこと!
みなさんそれにお悩みではありましたが、ある書店オーナーからいただいた素敵な言葉を贈りたいと思います。
「たくさんの本がある中で、その本を手に取ってお金を払って家に来てもらっているんですよね。それは出会いとして価値があります。そして、家の中にまだ見ぬ世界が積んであるってことなんです。全部見えている方がつまらないですよ。まだ読んでいない本は未来なんです」
家の中に、出会うべくして出会った未来が積んである。これは「ときめき」と言えそうです。
未来を上向きにしたいと思ったら、本を買えばいいんじゃない?
読書を趣味にできたらいいよなあ……と思っていましたが、一連のインタビューでますますその思いを強く持ちました。
そして多くの人に体験してほしい。知識を得るためだけじゃなくて、ただの気分転換だったり、表紙を眺めてホッとしたり、おいしいおやつを食べるときのおともとして。
そんな、軽い気持ちやいろんな動機で本を手に取っていただけるような、情報をギュッとあつめたSNSも作ってみました。今日もあなたが読みたい本(=まだ見ぬステキな未来)に出会えますように
写真/田村昌裕 イラスト/いそのけい ロゴデザイン/Permanent Yellow Orange 取材・文/飯塚真希