【連載】書店員は、見た!「恥ずかしいタイトルだっていいんです!」

2018/11/28

『サンキュ!』の取材でお会いしたYさん。書店の案内カウンターで働いています。毎日、本を探す人々から、さまざまな問い合わせを受ける日々。そのなかにある人間ドラマのあれこれをお伝えしています。

恥ずかしいタイトルだっていいんです!

「もしもし。明日発売の『○○の××が※※』ですが、入荷ありますか? そうですか……」「もしもし、明日発売の『○○の××が※※』なんですが…」 明日発売の本『○○の××が※※』(↑口にするのもはばかられるタイトルのボーイズラブコミック)がトラブルで入荷しません(泣)。予約をいただいているので、系列店に譲ってもらえないか電話で確認しているのですが、軒並み断られ、レジ横にあるカウンターで恥ずかしいタイトルを連呼するはめに。

通りがかったお客さまがギョッとするのだけれど、なりふり構ってはいられない。私の使命は、ご予約のお客さまに『○○の××が※※』を無事にお届けすることなのだから。店内の風紀を乱しつつ問い合わせすること数十分。なんとか確保。グッジョブ私! 今晩のビールはきっとおいしい!

さて、そんなわけで今回は注文しにくいタイトルについてのお話です(前ふり長かったね)。『夫のちんぽが入らない』は、衝撃的なタイトルもあって、とても話題となりました。当店でもたびたび品切れとなり、何度となく出版社に電話。注文するときは、もちろんタイトルを言わなければならないわけで。いえ、書店も出版社も仕事ですので、何食わぬ顔で電話しているのですが……。

「もしもし、〇〇書店ですが、注文お願いします。タイトルは『夫の……』」 「『入らない』ですね?」 皆まで言わせまいと、食いぎみに続ける出版社さん。その節はお気づかいいただき、ありがとうございました(笑)

この衝撃タイトル本の著者の2作目『ここは、おしまいの地』も良作。心の柔らかい部分をむき出しに語っているのに、時に笑い声を上げてしまうくらい文章が面白い。不思議なバランスに夢中になります。

ここ最近で問い合わせが多かったのが『ビロウな話で恐縮です日記』。三浦しをん氏の名著が文庫化されました。お客さまが「あの……」と恥ずかしげに問い合わせにいらっしゃるさまに、萌えに近い感情を抱いているしだいです。

うん恥ずかしいよね! でも面白いよ! 読了後には今の恥ずかしさなんて吹っ飛ぶぜ! どんな問い合わせも書店員は慣れっこですから、お気軽にお問い合わせくださいませ。

ふだん使わないような言葉を口にしている自分を、私はいつもちょっとだけ、面白がっています。

※個人情報が特定されないよう一部脚色しています。

Yのおすすめする本

『ここは、おしまいの地』は、おしまいの地と著者が名づける土地を舞台にした自伝的エッセイ。著者は意図していないように思えるけれど、笑えて、泣ける、不思議な魅力にあふれる1冊です。『ビロウな話で恐縮です日記』は、こんなにも笑えるエッセイを書くかたが、実は直木賞作家というギャップ! エッセイにつく著者自らによる脚注も面白さを増幅してくれます。文庫版のジェーン・スーさんによる解説も必見です。

ここは、おしまいの地

ビロウな話で恐縮です日記 (新潮文庫)

<書店員Yさん>
地方都市の書店員。1男1女の母。書店の中にあるカフェの仕事に応募したつもりが、なぜか書店員として採用。でも天職だと実感中

イラスト/泰間敬視 取材・文/加藤郷子
『サンキュ!』2018年10月号より抜粋

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