病を機に本格的に経営に取り組んだ、主婦の挑戦とさらなる夢
2019/02/28
妊婦健診で腎臓病が見つかり、出産後も入退院を繰り返したある女性。思うように働けなかった時期があるからこそ「今は一日一日を大切にしたい」とも。彼女の仕事と夢を追いました。
- 海に憧れ海辺の町へ。夫とラーメン店を開業
- 現在、8店舗を経営。女性が働きやすい職場を模索しつつ、業務拡大中
- 忙しい日々を家族の協力と適度な手抜きで乗り切ります
- 飲食店開業までの道のり(大口さんの場合)
■お話を聞いたのは… …大口ゆう子さん(千葉県 39歳)
元サンキュ!ブロガー。会社役員。14歳からサーフィンを始め、高校卒業後は百貨店に勤務。退職後はサーフィンの聖地、千葉県一宮町へ。現在は夫とともに飲食店を多店舗展開。夫と長女(11歳)の3人家族。
海に憧れ海辺の町へ。夫とラーメン店を開業
東京・八王子で生まれた大口ゆう子さんが中学校時代に夢中になったのがサーフィン。「当時は電車で、八王子から神奈川県の茅ヶ崎の海まで通っていました」
そんな大口さんがサーフィンと同じく夢中になったのが、「ROXY」などのサーフ系ファッション。
「洋服好きが高じて就職は地元の百貨店へ。そのころも休日には海に通っていましたが、通うだけでは飽き足らず、退職して単身で千葉の海辺に移住したんです」
今の色白な大口さんからは想像できないほど、当時は真っ黒に日焼けしていたとか。
アルバイトとサーフィンを両立させつつ、サーフィン仲間の1人であった今の夫とつきあい始めた大口さん。
彼に「ここでずっと暮らすためにラーメン屋を始めたい。一緒にやろう」とプロポーズされ、2人は海辺の町に16 席の小さなラーメン店「らぁ麺三軒屋」 をオープンしました。
現在、8店舗を経営。女性が働きやすい職場を模索しつつ、業務拡大中
手探りながらもラーメン店経営が軌道に乗ったころ、大口さんに事件が。
「当時は店のホールを担当していたのですが、夕方になると立っていられないほど足がむくみ、最初は疲労かな?と思っていたのですが、しだいに、やっぱり変、と思うように。ちょうど同時期に妊娠がわかり、妊婦健診を受けたときに、腎臓病が見つかりました」
即管理入院で、出産後も腎臓病の治療のため入院。生後間もない娘さんは大口さんの両親が預かり、夫は仕事。家族が離れて暮らす時期が続きました。
「退院後も疲れやすく、すぐ発熱。腰には検査用のはりが入っていて娘の抱っこもままならず、育児は大変。つらい日々を家族の協力で乗り越えました」
その後、発病から約5年を経て回復し、仕事復帰した大口さん。「サンキュ!ブロガーのイベントで前向きな主婦仲間に出会い、もっと経営にかかわりたいと思うようになったんです」
そのころは、株式会社化した夫のラーメン店の事業拡大、イタリアン店の共同経営事業などにも乗り出していた時期。大口さんは職人かたぎの夫を経営側から支えようと決意します。
「まずは夫に相談。そしてスタッフにも役員になる旨を伝えました。その後は、今までの経理のほか、採用や新店舗開発業務など、経営側の視点で仕事をするようになりました」
そんな大口さんの次の目標は、女性による女性のためのラーメン店を開店すること。
「主婦ならではの力をさらに発揮できるよう、主婦が働きやすくやりがいを感じられる職場づくりがしたいです」
忙しい日々を家族の協力と適度な手抜きで乗り切ります
100名近くの従業員のサポートとケアをしつつ家族のこと、自身の体調にも気をくばる日々。たまの休みには家族と思いっ切り遊び、家事はほどよく!手を抜いているそうです。
夫と2人、車中で打ち合わせ
自宅から店舗までの移動中の車内が、2人の打ち合わせ時間。気になる話題のラーメン店の話から、経営や将来のビジョンについてまで、いろんな話をするそう。
店舗回りも総括責任者の大事な仕事
現在、4店舗のラーメン店経営に加え、同じく4店舗の大衆イタリアン食堂を共同経営。各店舗を回って現場の様子を日々チェックするのも大口さんの仕事。
疲れたなと思ったら、早めに切り上げて自宅仕事
今も3カ月に一度は検診のため通院。「長時間の立ち仕事がつらくなったら早めに帰宅して、社員の勤怠管理など、自宅でもできる仕事に切り替えています」。
娘の夕食は店で"まかない"のときも
学校が終わるころに娘を迎えに行き、仕事場近くの習いごとに連れて行くなど、子育てとの両立の工夫も。「娘の夕食がまかないになることもしばしばです」
忙しい日々の息抜きは家族でサーフィン
そもそもこの地に来たのは、海と波があったから。夫はもちろんのこと、大口さん母娘も休日にサーフィンをすることも。「娘はそれほど乗り気じゃないんですが(笑)」
飲食店開業までの道のり(大口さんの場合)
■地域の商工会議所に相談
開業資金調達のため、コンセプトに基づいた事業計画を立て、地域の商工会議所に相談、融資を受ける。物件決定後は内外装の設計施工に取りかかり、メニュー開発、備品購入をする。
■諸官庁へ届け出・手続き
食品衛生責任者養成講習会を受講後、資格を取得したら、地域の保健所や消防署に開業届を提出。さらに求人募集やスタッフの教育、開店告知や調理・接客マニュアルの作成を行う。
参照:『サンキュ!』10月号「挑戦するわたし」より。掲載している情報は18年8月現在のものです。
撮影/キムアルム 構成・文/宇野津暢子