「ワンオペ妻」こそ危ない!?コロナ禍で「不倫相談」が増えた理由とは?
2020/07/04
世界で猛威をふるう新型コロナウィルス。緊急事態宣言に伴う外出自粛を経て、いま我々は「新しい生活」へと大きく変化せざるを得ない状況にあります。
そんな、今までの「あたりまえ」が「あたりまえでなくなる」という現状において、「家庭内を見直すよい機会です」と話すのは、夫婦問題修復カウンセラーの山谷育子さん。コロナ禍の影響により夫婦問題でどのような相談が増えているのかを聞きしました。
(取材・文/みらい ハウス 渡部郁子)
■話を聞いた人・・・山谷育子(やまやいくこ)さん
夫婦関係修復カウンセラー。夫婦問題、関係修復のほか、不妊、離婚、浮気、恋愛、子育て相談などの専門家。NPO法人日本家族問題相談連盟認定 上級プロ夫婦問題カウンセラー、上級プロ離婚カウンセラー、NPO法人Fine認定不妊ピア・カウンセラーなどのほか、保育士、ホームヘルパーなどの資格を持ち、電話相談などで対応。
コロナ禍で不倫相談が増加!?
山谷さんは、夫婦関係に関わるあらゆる相談に対応するカウンセラー。離婚カウンセラーなどの肩書を持ち、離婚や不妊、浮気問題から子育てに関する相談まで、家庭に関する様々な相談を受け付けています。
コロナ禍による外出自粛要請で、山谷さんへの相談はどのように変化したのでしょうか。「夫と子どもがずっと家にいて、ストレスがたまる」「何もしない夫を見て離婚を決意した」などの女性からの相談が増えているのではないかと考え、山谷さんに話をお聞きしたところ、「そういった女性からの相談よりも、実は男女ともに不倫相談のほうが増えているんです」というお返事が。
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山谷さん:コロナ禍以前の夫婦関係の相談は「夫から離婚したいと言われて困っている」という女性からの相談が多かったのですが、コロナ禍を境に、女性からは「外出自粛で不倫相手と会えなくなった」という相談が、男性からは「家に居づらくなり、出会い系アプリで女性と知り合った。どこで会ったらいいかアドバイスがほしい」などの不倫相談が増えています。
男性からの相談に注目すると、「家に居づらい」という男性は、外出自粛要請で家にいる時間が増えたものの、今まで家事や育児には一切関わっていなかったため、何をしていいかわからない、という人ばかり。育児も家事もしっかり者の妻がすべて完璧にこなしているので、夫は家でやることといえば会社の仕事しかしない。すると「家にいるのに何も家事をしてくれない」「ゲームばかりしている」「家にいるから仕事が増える」と妻から言われ、「家にいるとなんだかずっと責められているように感じる」ことから不倫に走る、というパターンが多いようです。
だからと言って浮気や不倫に走る男性を擁護するわけではありませんが、「夫が家にいてうっとおしい」と思ったことがある女性は、この機会に「夫に何を手伝ってほしいのか、いつもはどの手順でどのように家事を行っているのか、一緒に何ができるのか、まずは丁寧に自分の気持ちを伝える」ことを強くおすすめします。
具体的に不倫相談を寄せる男性からよく聞くのは、「妻が何も言わずにただ毎日機嫌が悪い」という話。
女性は家事や育児を夫に頼みにくいのかもしれませんが、何も言わずに機嫌が悪いのは相手に不安や不満感を与えます。「察してほしい」では伝わりません。「掃除機をかけてほしい、このような順番で、こうしてほしい」と伝えること。
一方で、妻が何も言わずにただ機嫌が悪いのは、それまでに積もり積もった大きなストレスを抱えている証拠でもあります。「言ってもやってくれない」という過去の積み重ねが、妻を無口で不機嫌にしているのです。妻の一言で夫の行動が伴えば、妻が抱えている日頃のストレスを開放することにつながります。何でもいいから会話を増やすこと。それだけで、かなりの夫婦問題がよい方向に向かいます。会話が増えれば夫が行動を変える機会を得ることができ、それによって妻のストレスも減るからです。
「コロナ離婚」が増えるのはこれから
山谷さんのもとに届く「離婚」に関する相談は、「夫から突然離婚したいと言われて困っている」妻からのものが多かったそうですが、コロナ禍により増えているという印象は今のところないそうです。
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山谷さん:コロナ禍に関連した離婚は、これから増えてくると考えています。通常なら定年後になるまで気づかない「家に居づらい」自分の立場を、コロナ禍を機に気づいてしまう男性が増えてくるからです。ただし、家に居づらい、頼りにされていないことが寂しいという問題を、「離婚したい」と表現する男性もいます。本音は「離婚したい」わけではなく、「夫婦関係を修復したい」と思っていることもあり、その見極めが重要です。
そもそも、経済力がない場合、妻からは「離婚」を言い出しにくいという力関係があります。共働きで経済的に自立している女性は、家事育児に非協力的な夫とわかった段階で、それでも一緒にいたいと思わなければすぐに離婚しているはずです。
夫から離婚したいと言われて困る妻からの相談はたいてい「夫に好きな人ができたから離婚してほしいと言われた。でも私は離婚したくない」というもの。妻の「離婚したくない」という気持ちは、生活の不安や相手の女性または夫への嫉妬などの様々な思いが混ざり合っています。離婚したくないといいながら、自分を捨てて相手の女性と幸せになろうとしている夫を許す気はないのです。そうなる前に、夫婦関係を修復する機会を作ってほしいと願っています。
逆に考えれば、コロナ禍により家族で家にいる時間が増えたことは、夫婦の家庭問題を見直すいい機会です。共有する時間が増えることで、会話は必然的に増えるはず。現時点で、夫が家に居づらい、妻の機嫌が悪いなどの問題があるなら、少しずつお互いが歩み寄ることで解決の糸口をつかみやすい時期なのではないでしょうか。
相談で発覚、夫からDVされていることに気がつかない妻たち
山谷さんのところには、「誰にも相談できない」「どうしたらいいかわからない」という相談も寄せられます。ただ話すだけで気持ちの整理ができる人もいるそうですが、ちょっと変わった何気ない相談が、実は危険をはらんでいることもあるそうです。
山谷さん:以前「トイレットペーパーに自分の名前を書く夫、どう思います?」という相談がありました。詳しく聞いてみると、夫がトイレットペーパーに自分の名前を書いて、相談者が使うと怒るというのです。もちろん自宅のトイレでの話。
「夫がケチで困っているんです」相談の最初はそんな始まりでした。夫の行動がおかしいのではないか、と思う一方で、それがおかしいのかどうか自分では判断できないため、客観的にどう思うか、教えてほしいという相談でした。
もう少し詳しく話を聞いてみると、夫は働きに行かずお金に困っていて、妻である相談者の貯金も使い果たしてしまい、幼い子どものミルクを買うことができずに困っているとのこと。さらに、夫からは突き飛ばされたり物を投げられたりしてけがをすることもあるということがわかりました。
相談者は、夫の行為がDVであると気づいていなかったのです。
「私のどこがいけないんでしょう」と話す相談者に、それらの行為は客観的に見てDVであるということを説明し、専門の相談窓口やシェルターなどの情報を伝えました。
DVもそうですが、夫婦の不仲や不妊、浮気や離婚などの問題は、なかなかまわりに相談できないと思います。信頼できる友人に相談して解決するならそれでもいいのですが、「そんなの離婚したほうがいいよ」という短絡的なアドバイスは、経済力のない女性にとっては有益ではありません。
「でも、今離婚を考えるのは経済的に難しいですよね」「問題の根本は別のところではないでしょうか」と客観的にアドバイスできるのが、私たちのような専門家に相談するメリットです。
誰にも相談できなくて困っている、状況を客観的に把握したい、どうしたらいいかわからない、などの困りごとがあるときは、ぜひ専門家に相談してください。どこに問題があるのかを分析し、状況改善のために今できることをアドバイスします。
コロナ禍の今、夫婦関係を見直そう
今回、山谷さんにお話を聞いて、初めて「夫婦関係修復カウンセラー」の存在を知りました。離婚問題を扱う弁護士から紹介されて山谷さんのカウンセリングを受ける夫婦も多いそうです。
「離婚したい夫」と「離婚したくない妻」の間で、お互いの心の整理をしたり、折り合い点を見つけたりすることによって、離婚せずに前向きにやり直す夫婦も多く送り出してきたそうです。
山谷さんは、夫婦の関係修復に関する相談に「何気ないことでもいいから質問する、会話をすること」「お互い相談すること」「相手を認めること」「感謝の気持ちを伝えること」などをアドバイスするそうです。何でも話し合う習慣をつけることが、家庭を円満に導く一歩なのかもしれません。コロナ禍の今、「もう手遅れ」という状態になる前に、夫婦問題を見直してみませんか?
◆取材・文/みらいハウス 渡部郁子
東京・足立区にある育児期の女性支援拠点「みらいハウス」のライティングメンバーです。子連れで取材活動に取り組む一児の母。育児と仕事にまつわる社会課題への支援事業や、子育てしやすい地域環境を構築する仕組みづくりを行っています。
構成:サンキュ!編集部