最悪の場合は歯が折れる⁈専門家が教える「睡眠中の食いしばり」の原因と危険性
2024/09/08
自分では気づきにくい睡眠中の食いしばり。放っておくとさまざまな健康トラブルを引き起こします。最悪の場合、歯が折れてしまうこともあるとご存じでしたか?
睡眠中の食いしばりの原因、放置してはいけない理由や受診の目安などについて、歯学博士号を持つ矯正歯科の専門家、千葉センシティ矯正歯科院長の石川宗理氏に聞きました。
- Q.睡眠中の食いしばりはなぜ起こるのでしょうか?
- Q.睡眠中の食いしばりが起きやすい人の特徴などはありますか?
- Q.睡眠中の食いしばりを放置すると、どのようなトラブルが起こりますか?
- Q.睡眠中の食いしばり改善のためにできるセルフケアはありますか?
Q.睡眠中の食いしばりはなぜ起こるのでしょうか?
近年の研究で睡眠中の食いしばりは、脳の中で筋肉の運動を制御する大脳が浅い睡眠(ノンレム睡眠)時に何らかの原因で興奮状態になることで、引き起こされると明らかになっています。
ただし、この説は完全には科学的に立証されておらず、議論が分かれるところとなっています。
Q.睡眠中の食いしばりが起きやすい人の特徴などはありますか?
睡眠中の食いしばりは、次のような方に起こりやすいとされています。
・精神的なストレスが多い
・飲酒、喫煙の頻度が高い
・怒りっぽい性格である
・遺伝的要因がある
・睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害がある
また、精神病の薬を飲んでいる方の副作用としても起こります。
食いしばりがどのような人に起きやすいかは、世界的に様々な論議がなされています。論文によっては、女性・既婚者・コーヒーを多く飲む方に多いといった記述もあります。
Q.睡眠中の食いしばりを放置すると、どのようなトラブルが起こりますか?
睡眠中の食いしばりを放置し、長期間継続することで
・歯自体に過度な力が入り、亀裂が入ったりすり減ったりする
・歯に入ったひびや亀裂から、刺激が伝達し知覚過敏になる
・最悪の場合歯が折れる
・歯の周りの組織にも過度の力がかかり、歯が揺れたり歯周病が悪化したりする
・顎(あご)の骨にも力が伝達し、歯ぐきの骨が盛り上がる(骨隆起⦅こつりゅうき⦆)
・食べ物を噛むときに使う咀嚼筋(そしゃくきん)に痛みが生じたり、頭痛を引き起こしたりする
などのトラブルが起こります。
Q.睡眠中の食いしばり改善のためにできるセルフケアはありますか?
睡眠中の食いしばりは原因が様々で「これをすれば絶対に改善する」という方法はありません。しかし上述の「睡眠中の食いしばりが起きやすい人の特徴」の中に、ご自身が当てはまるものがあれば、それらに対するセルフケアが可能です。
例えば、
・飲酒や喫煙を控える
・精神的ストレスを発散する方法を持つ
・布団や枕を見直し、睡眠の質を上げる
・怒りの感情をコントロールするアンガーマネージメントを身に着ける
・精神病薬を服薬中であれば、主治医と相談して薬を変更する
などがいいでしょう。
セルフケアだけではなく、歯科医院を受診してスプリント(マウスピース)を作成したり、睡眠外来で睡眠障害の有無を検査したりするのも重要です。
Q.睡眠中の食いしばり、病院で治療を受ける目安はありますか?
睡眠中の食いしばりは、下の症状を目安に病院を受診してください。
1.歯ぐき以外の歯の先端が平らになっている
2.歯ぐきに骨の盛り上がりがある(骨隆起)
3.歯の根元が欠けている
4.朝起きると顎に痛みやこわばる感じがある
5.強い肩こりや頭痛がある
6.舌の側面や、頬の内側の粘膜が歯の形に変形している
7.虫歯などがないのに歯がしみる
8.事故や外傷以外で歯が欠けたことがある
前述したように、食いしばりは長期にわたると歯や顎に多大なダメージを与えます。食いしばりに気づいたら早めに歯科医師に相談し、スプリント(マウスピース)治療を行うのがいいと思われます。
取材/文:山名美穂(Instagram「@mihoyamana」)
編集:サンキュ!編集部