【医師監修】女性は40~50代で糖尿病になりやすい?〜初期症状や原因を詳しく解説〜
2024/11/06
当記事は、Dクリニック東京 ウェルネス 医師・医学博士の相良郁子先生にご監修いただきました。
女性の更年期は一般的に閉経前後5年ごろをさします。そして、年齢でいうと45~55歳ごろの期間を更年期と呼びます。
更年期は女性ホルモンの急激な変化によって、体が火照ったり疲れやすかったりといった症状があることは周知の事実です。さらに令和元年国民健康・栄養調査によると、女性は50代以降「糖尿病が強く疑われる者」の割合が急激に増えます。
そこで気になるのが、更年期である40~50代の女性は糖尿病になりやすいのか、ではないでしょうか?
当記事では40~50代の女性と糖尿病についてお伝えいたします。初期症状や原因についても解説いたしますので、ぜひ最後までお付き合いください。
教えてくれたのは: シンクヘルスブログ編集部
糖尿病に強みを持つ健康管理アプリを展開するシンクヘルス社のオウンドメディア。ダイエット、糖尿病の食事、マイン...
糖尿病と女性ホルモンの関係
女性ホルモンは、血糖値の調整機能と関連している可能性があります。
というのも動物を対象とした研究において、女性ホルモンであるエストロゲンが減少すると、インスリンに対する感受性が低下する、といわれているからです。
更年期はエストロゲンが急激に減少する時期なので、糖尿病を発症しやすいと思われがちです。
ところが実際は、更年期だけでなく加齢によるさまざまな要因が糖尿病発症や悪化に影響しているといえます。
●女性の糖尿病の初期症状とは
糖尿病の初期症状は、男女で大きく差はないと言われています。
しかし女性は生理前の月経前症候群や更年期障害と重なると、疲れやすさや怠さなど糖尿病と似た初期症状が現れることがあり、気づきにくいかもしれません。
ですので喉の渇き、尿量が多くなったという症状は糖尿病において特徴的なため、もし症状が出たら早めに医師に相談するようにしましょう。
またもともと女性に多い膀胱炎ですが、糖尿病になると免疫力が低下するため更にかかりやすくなります。発症頻度が増してきたり以前よりも治りにくかったりする場合も、早めの受診をオススメします。
●糖尿病になりにくい女性はいるの?
遺伝的に糖尿病になりにくい人は存在します。
しかし、糖尿病になりにくい遺伝子を持っていたとしても、暴飲暴食や肥満体形を維持していると糖尿病リスクは上昇します。
つまり、運動や食事を気にかけることが糖尿病になりにくい身体になる近道です。
糖尿病セルフチェックリスト
糖尿病の可能性を判断するためのセルフチェックリストです。
下記のチェックが複数当てはまった場合、医療機関で糖尿病の検査を受けることをおすすめいたします。
▢ 家族に糖尿病の人がいる
▢ 妊娠中に血糖値が高いと指摘されたことがある
▢ 健康診断で糖尿病の可能性を指摘された
▢ 食後高血糖を起こしているかもしれない
▢ 昔からジュースや甘いもの、菓子パンなどをよく食べる
▢ 急激に体重が増えた、もしくは減った
糖尿病を引き起こす原因
糖尿病の原因には大きく2つあり、遺伝的要因と生活習慣が関わります。
●遺伝的要因とは
日本人は欧米人と比べて、糖尿病になりやすいといわれています。
日本人などのアジア人は欧米人と比べてインスリンを分泌する量が少なく、インスリン抵抗性もあるからです。そのため、日本人には2型糖尿病の方が多いと考えられます。
なお、1型糖尿病はインスリンを作るすい臓のβ細胞が壊される病気です。なぜβ細胞が壊されるのかは、はっきりとわかっていません。
●生活習慣ってなに?
生活習慣とは、主に食生活や運動習慣のことです。
<食生活>
カロリーや脂質、糖質の多い食事は、糖尿病を引き起こす要因となります。
なぜならカロリーや脂質、糖質の多い食事は、肥満につながる可能性が高いからです。肥満は糖尿病のリスクを上げる要因の1つです。
また、糖質の多い食事や間食によって血糖値の高い状態が続くと、糖尿病のリスクは上がります。
<運動>
運動不足は糖尿病を引き起こすリスクが高いです。
その理由は、運動不足が肥満のリスクを上げるからです。肥満は血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きを悪くします。
さらに、運動不足によって筋肉量が減ると、食後の血糖値が下がりにくくなります。
そもそも血糖値とは、血液中におけるブドウ糖の濃度です。食事から吸収された糖質は、ブドウ糖になって血液中に広がります。そしてブドウ糖が血液中から筋肉などの細胞に移動することで、血糖値が下がるのです。
筋肉量が少ないとブドウ糖が移動できずに、血液中に残るため血糖値が高いままとなります。血糖値がなかなか下がらない状態を糖尿病というので、筋肉量が減ることも糖尿病のリスクといえますね。
糖尿病を予防するには
糖尿病を予防するには、食事と運動を中心とした生活習慣を整えることが大切です。
●食事のポイント
食事は適切なカロリーの範囲で、バランスよく食べるとよいです。
具体的には、主食・主菜・副菜・乳製品・果物を組み合わせて、さまざまな食材を食べるのがおすすめです。
・主食:ご飯・パン・麺類
・主菜:肉・魚・卵・大豆
・副菜:野菜・海藻
なお、野菜や肉、魚などを食事の最初に食べると、血糖値の上昇が緩やかになります。
食事内容を変えるのは難しいと感じる方は、まず食べる順番から変えていくのもよいですね。
<適切なカロリー>
適切なカロリー量は、身長や体重、活動量によって人それぞれ違うものです。
参考までに、厚生労働省の日本人の食事摂取基準によると、活動量がふつうの45歳の女性は1日に2050kcalのカロリーが必要、とされています。
なお、活動量がふつうの55歳女性であれば1日に1950kcalのカロリーが必要と、推定されます。
*糖尿病の方の目標カロリーはもう少し低く、上記の目標カロリーとは異なるので注意してください。実際の目標カロリーは、主治医が設定します。
●運動のポイント
糖尿病の予防には、有酸素運動や筋力トレーニングが有効です。
有酸素運動とは、ウォーキングやジョギング、水泳などの全身を使う運動のことです。全身運動を行うと、筋肉へ流れる血液の量が増えます。すると、血液中のブドウ糖が筋肉など細胞の中に取り込まれ、血糖値を下げるインスリンの効果が高まるのです。
また、筋力トレーニングで筋肉が増えると、インスリンの効きやすい体になります。
●ウォーキングは効果的な方法か
ウォーキングは、血糖値を下げるのに効果的です。
ただし一日だけたくさん頑張るというより、少しずつでもいいので毎日続けるほうがよいと言われています。
また必ずしも、長時間続けて歩く必要はありません。一日の中で、運動時間を分割するのもよいですよ。
その他にも
・自転車での移動を歩きに変える
・一駅分歩く
など、取り入れやすい生活習慣を探せるといいですね。
<どのぐらい歩いたらよいのか>
厚生労働省によると、20~64歳男性において1日の目標歩数は9,000歩、同年代の女性は8,500歩とされています。同じく厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、1,000歩進むのにかかる時間は約10分です。
歩く速さは人それぞれ違うのであくまで目安ですが、1日の間に合計80分歩くよう意識すると目標歩数を達成できますね。
<歩き方でカロリー消費は変わるのか>
歩く際は大股で歩くほか、早歩きするとカロリー消費が増えるといわれています。
日本で行われたとある研究によると、30分間大股で歩くか早歩きした場合、普通に歩いた時と比べて平均30~40kcalほどカロリー消費が増えたそうです。
これはあくまで一例ですので一概にはいえませんが、歩き方の工夫で効率的にカロリーを消費できるでしょう。
<日常生活の中で動くことを意識しよう>
いくら運動やウォーキングが糖尿病の予防によいとはいえ、新しく運動を始めるのは難しいと感じる方もいらっしゃるでしょう。
そこで、座っている時間を減らす、など日常生活の中で長く続けられるように意識するのもおすすめです。実は私たちの体は運動しているとき以外にも、カロリーを消費しています。
たとえば、
・玄関をほうきで掃く
・雑草を抜く
・掃除機をかける
・床に落ちているものを片づける
このような日常的な動きだけでも、運動になります。
ウォーキングや散歩はハードルが高いと感じる場合は、日常生活でできる動きを増やすことから始めるのもよいでしょう。
●心配な時は医師に相談を
食事や運動といった生活習慣を見直したけれど、自分は糖尿病かもしれない、と不安に感じる場合は医療機関を受診してみましょう。
医師に相談するときは、食事内容や運動時間などを正確に伝えられるとより良いアドバイスが得られるでしょう。その際、普段から食事などの生活習慣を記録できているとよいですよね。
まとめ
更年期を含む40~50代の女性は加齢による運動量の低下や肥満、筋肉量の減少がみられるため、糖尿病になりやすいと考えられます。
また、女性ホルモンと血糖値の調整機能の関連が、更年期と糖尿病のなりやすさに関係する可能性はあります。
とはいえ、糖尿病の原因は加齢やホルモンだけでなく、生活習慣も大きく影響するのが事実です。
ホルモンや加齢による変化に抗うことはできませんが、生活習慣の改善はいつでも始められます。適切なカロリー内でのバランスのよい食事や、日常生活に運動やカロリー消費につながる動きを取り入れてみましょう。
それでは当記事を参考に、いつまでも自分らしく輝くために健康的に過ごしていただければうれしいです。
【参考文献】
・見てできる臨床ケア図鑑 糖尿病看護ビジュアルナーシング監修 平野勉 編集 柏崎純子 学研メディカル秀潤社 2015年発行
・厚生労働省 e-ヘルスネット 更年期障害 身体活動・運動に関するこれまでの取組について
・第50回日本理学療法学術大会 Brisk walkingの歩幅の違いがエネルギー代謝へ及ぼす影響
・PubMed Prevalence and Features of Impaired Glucose Tolerance in Young Underweight Japanese Women Non-exercise activity thermogenesis (NEAT)
日本家政学会誌 エストロゲンが女性の心身の健康に果たす役割
・J-STAGE 糖尿病の遺伝素因と分子病態