暮らしと心が整うお坊さんのお掃除術!毎日の掃除がラクになる方法って!?
2022/02/22
お坊さんってなぜかしょっちゅう掃除しているイメージがあるけれど、それには理由があるの?実は、掃除をすると暮らしが整うだけでなく、心も整うらしいんです。広島のお坊さんにくわしく"整う掃除"を教わってきました。
<教えてくれた人>
吉村昇洋さん
曹洞宗八屋山普門寺の副住職。曹洞宗大本山永平寺で2年2カ月の修行生活を送った後、現在は副住職のかたわら、公認心理師、臨床心理士として病院にも勤務。『心とくらしが整う禅の教え』(オレンジページ)など、著書も多数。
お坊さんってなんでいつも掃除してるの!?
実は、修行の1つとして生まれたのが掃除なんですよ~。
お釈迦様が生きておられた時代のこと。掃除をしに来ていたある信者が、用事で来られなかった日がありました。するとお釈迦様が自ら掃除を始め、自分の背中でその大切さを弟子に知らせたのだそう。以来、掃除は修行の1つと考えられるようになり、お坊さんは当たり前のこととして、いつも掃除をするようになりました。掃除をしているときは今に集中することができ、無心にもなれます。「自分の心が清まる」「心を整えて正しくする」などと書かれている経典もあるのだとか。
※諸説あります。
お坊さんはなんでお掃除で心が整うの?
部屋の状態は心の状態なので散らかっている=心が乱れている証拠!
禅には「脚下照顧(きゃっかしょうこ)」という言葉があります。自分の足もとを見つめる、つまり自己のあり方を問うことが説かれています。例えば、部屋を見回してみましょう。そこには自分のあり方が表れています。もし、部屋が汚く、乱れているなら、それが自分。心も乱れ、すさんでいるということです。部屋を掃除し、乱れを整えることは、自分の心をも整えることにもつながります。
無心で手先を動かしていればよけいなことにとらわれず今、目の前のことに集中できます!
仏教では、基本的に、"今、ここ"を大切にします。目の前にある場所をきれいにする掃除というのは、まさに今。掃除に没頭すると、今を味わい、大切にすることにつながります。掃除は面倒だからと後回しにする。つい言い訳を考える。そんなことをしている暇があるなら、とにかく動いてみましょう。すると、徐々に心が無になり、過去の後悔、未来の心配など、思いどおりにならないことから、自然に心が離れます。無心になれずとも、今の自分の心持ちを感じるだけでも充分です。
ちなみに……"心を整えよう"と思ってやるものではないですよ。あくまで結果です!
見返りを期待して何かをするのは、仏教では、自分の"苦"を生む行為とされます。苦とは、自分の思いどおりにならないこと。心を整えようと期待して掃除をすると、かえって気持ちがざわついてしまいます。とにかく、やってみること。自分の欲は出さず、掃除に集中する。心の平穏は、その結果というだけなのです。
掃除で心も整ってました!修行時代のお坊さんの1日
永平寺での修行時代、ノンストップでの階段&廊下拭きをはじめ、1日に何度も掃除の時間があったそう。そのすべてが修行でした。
4:30 起床
5:00 坐禅
6:00 朝のお勤め
7:00 朝食
8:00 廊下のぞうきんがけ
8:30 頭をそる
9:00 掃除
10:00 坐禅
12:00 昼食
13:00 昼のお勤め
16:00 掃除
17:00 夕方のお勤め
18:00 夕食
19:00 坐禅
21:00 就寝
毎日の掃除がラクになるお坊さんの教え
掃除が苦手なんですけどどうしたらいいですか?
掃除の必要性も清潔な空間の気持ちよさも、わかっていてもやっぱりなかなか腰が上がらない。そんな私たちのために、掃除がラクになる考え方や取り組み方を教わりました。
1 1日のなかで掃除をする時間を決めましょう
禅の教えから導き出せる掃除の極意は、"あれこれ考えずにやる"。考えないためには、開始時間を決めてしまうのが得策。やる気のある朝や、まだ動くモードが維持されている帰宅後すぐなど、自分が面倒に感じない時間帯に設定してみて。
2 ためてる物や汚れてる物は取りあえず1日1回さわろう
掃除や片づけができないなら、せめて、汚れている場所、散らかっている物を1日1回さわってみて。さわっているうちに汚れや散らかりが気になってきて、自然ときれいにしたくなりますよ。
3 全部をやろうとせずにまずは1カ所だけきれいにしよう
あそこもここも掃除しようと欲張るから、続かなくなる。例えばテーブルの上など、すぐにできそうな1カ所だけを毎日きれいにすることからで大丈夫。1カ所だけでもきれいが続くと、まわりもきれいにしたくなるのが人の常。
きれいは伝播する!
4 1日10分など制限時間を設けてそれ以上はやらない!
永平寺では、掃除の開始時間だけでなく終わりの時間も決まっていました。家なら、まずは10分。時間が来たら途中でもやめ、できなかった場所は翌日に。短時間と思えば取り組みやすく、毎日続けやすく、習慣化につながります。
よし!10分だけやるぞ!
参照:『サンキュ!』2022年3月号「お坊さんのお掃除術」より。掲載している情報は2022年1月現在のものです。撮影/林ひろし 構成/一石沙永加(風讃社) 取材・文/加藤郷子 編集/サンキュ!編集部