高橋英樹さん「33トン断捨離した結論。僕はまだまだ成長できる!」
2021/08/18
やましたひでこ先生のご自宅(本物っ)に断捨離しているゲストをお迎えして対談。今月のお客様は俳優の高橋英樹さん!
70歳を過ぎて、33トン(!)の断捨離を経験した高橋さん。新陳代謝し続ける高橋さんの「断捨離マスター」ぶりに、「お見事!」と感服しきりのひでこ先生でした。
■高橋英樹
俳優。1944年、東京生まれ。高校在学中に日活ニューフェースとしてデビューし、青春映画や任侠映画、時代劇映画やテレビドラマに多数出演し一時代を築く。現在は多数のバラエティ番組やテレビドラマ、NHK・Eテレ『にっぽんの芸能』のレギュラー司会など、ジャンルの枠を超えながら第一線で活躍中。
■やましたひでこ
断捨離®提唱者。1954年、東京生まれ。子育てや介護を経験した後、ヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」から着想を得た「断捨離」理論を構築。BS朝日『ウチ、〝断捨離〞しました!』(毎週月曜夜8時)にレギュラー出演中。著書に『モノ・人・心の悩みが消えていく 断捨離道場』(講談社)など。
頑張ったおかげで買えた、使えた。その喜びを味わったら断捨離して、また次へ!
【高橋】:僕は5年前、72歳のときに自宅の物を33トン断捨離したんですよ。
【ひでこ】:え、33トン! 思い切りましたね。
【高橋】:娘(フリーアナウンサーの高橋真麻さん)の「パパとママにとっては思い出かもしれないけど、私にとってはただのゴミだから」という言葉に背中を押されまして。
もちろん、最初は葛藤もありましたよ。それなりに高いお金を出して買った仕立てのいい家具を、リサイクル業者に査定してもらったら、二束三文にしかならなくて、唖然としたこともありました(苦笑)。
休日のたびに懐かしの写真や手紙を掘り返しては、これは不要、これは必要……と思い出にひたりながら未練がましく仕分けしていたんですが、だんだん疲れてきちゃって。やっぱり、70歳を過ぎた人間にとって、物を片づけるっていうのは大変な労力なんですよ。
これじゃいつまで経っても終わらないなと思ったので、物をいちいち見ないで、思いきって全部処分しちゃおう!と。業者に依頼して、テレビも冷蔵庫も何もかも持っていってもらって、家の中がからっぽになりました。そしたらね、体調がよくなったんですよ。血のめぐりがよくなった感じ!
【ひでこ】:それはまさに「断捨離あるある」ですね。
空間がよみがえると、心も体もいきいきとよみがえるんです。
【高橋】:なるほど。
ということは、不要品はいわば悪玉コレステロールだ(笑) !
【ひでこ】:さすがお上手(笑)。
どちらも気づかないうちに増えて、人をむしばんでいくんですよね。
【高橋】:悪玉コレステロールが増えに増えて、かつてのわが家は足の踏み場もなかった(苦笑)。どれもこれも必要だと思い込んでいたけれど、たしかに真麻の言うとおり、全部ゴミだったのかもしれません。というのも、今となっては何を捨てたのかさえ思い出せないんですよ。
【ひでこ】:高橋さんと物との関係性が終わっていた証拠ですね。
【高橋】:そういうことですね。
自分が頑張って働くなり貯金するなりして、欲しい物をやっと買えたうれしさ、そしてそれを使う喜びを満喫した時点で、僕たち人間とその物との関係はもう終わっているのかもしれませんね。だったら、感謝して断捨離したほうがいいですよね。
なぜなら物との別れが、新しいワクワクと出合うきっかけを運んできてくれるのだから。
真麻の「パパって本当に俳優?」のひと言から、新しい世界への挑戦が始まった
【ひでこ】:新陳代謝がいい循環を生むことに気づかれたのですね。そういう考え方ができる高橋さんだからこそ、時代劇の名優に始まり、バラエティ番組の人気者、最近は伝統文化の発信役など、ご自身のキャラクターもずっと新陳代謝できているのでは?
【高橋】:バラエティ番組に出るようになったのも、真麻のおかげなんですよ。
真麻がまだ小さかったころ、「ねえ、パパって本当に俳優なの?」「私の友達は誰も、パパのことを知らないんだけど」「SMAPと一緒にテレビに出ていないのはおかしいよ」って言うんです(笑)。
「なるほど、子どもの目にはそう見えているのか!」とハッとして、自分で番組スタッフに売り込んでバラエティ番組に初出演させていただき、おかげさまでSMAPとも共演できました(笑)。これが、ものすごく楽しくて! 世の中から好反応もいただいて、すっかり味をしめたというわけです(笑)。
【ひでこ】:なんて素敵なお話でしょう……。
高橋さんのそのフットワークの軽さは、一体どこからくるのでしょうか?
【高橋】:僕が挑戦し続ける理由は、そこに必ず発見があるから、ですね。
例えば、バラエティ番組の現場に行くと、今の第7世代やその下の世代のお笑い芸人たちが、どうにかして存在感をアピールしようと全力でロケに体当たりしたり、リアクションを取ったりしているんです。そういう若い世代のがむしゃらさを目の当たりにすると、「あぁ、俺たちベテランに足りないのは、こういう姿勢だな」と気づかされるんですよ。
だから僕も、現状に満足するのではなく、最先端の物事に興味と敬意をもって、汗をかきながら必死でぶつかっています。もう、必死ですよ。うまい受け答えができなくて悔しくて、「よし!次は絶対、うまく拾ってみせる!」と心に誓い、対策を練ることは何度も。
この必死さが、ずっと現役で頑張れている秘訣(ひけつ)かもしれません。
【ひでこ】:「発見」が新たなエネルギーになると身をもってご存じだから、
新陳代謝し続けられるんですね。
【高橋】:そういえば、40代で体調をくずしてしまったことがあるんですが、そのときも「発見」に救われました。
「体が思うように動かないならセミリタイアして、好きな仕事だけ細々と続けていこうかな」なんて弱気になっていたら、たまたま同世代の洋画家の絹谷幸二さんのお仕事ぶりを拝見する機会に恵まれまして。絹谷さんの絵を描く様子が、それがもう、すさまじいんですよ。一切出し惜しみなく、エネルギッシュに魂を燃やすさまに圧倒されて、「俺なんてまだまだじゃないか!」「もっと全力でやらないとダメだ!」と気づかされたら、急に元気になりましてね(笑)。
セミリタイアしたい気持ちなんてどこへやら。それからは、仕事のオファーをくれた人の期待を超える仕事をしよう!と、ますます精進するようになりました。
昔の栄光になんて、だれも興味ない。「今」を全力で生きて、常に前進していきたい
【ひでこ】:人間は、過去の自分と決別して初めて成長できるんです。それを日常生活で繰り返すのが断捨離の作法だけれど、高橋さんは表現の世界でそれを実践されてきたのですね。
【高橋】:過去の足跡って、ただの自己満足なんですよね。例えば、歌や演技で賞を獲った人がその栄光にしがみつきすぎると、その時点での自分がベストな自分だと思い込んでしまって、同じ路線でしか表現しなくなる。するとまわりからは、過去のまま止まっているように見えてしまう。そうではなくて、常に変化して、進んでいかないと。
「今日から明日へ」の発想で、これからも生きていきたいですね。
【ひでこ】:「今・ここ・私」は断捨離のキーワード。
人生の主役はあくまで「今ここにいる私」なんです。
成功であろうと失敗であろうと、過去は終わったこと。しがみつくのは不幸の始まりです。
【高橋】:ですね。思い出の品を持っておくのは過去への執着心を呼び覚ますからやめたほうがいいし、どうしても思い出を持っておきたければ、物を持つのではなく、思い出を心の中にそっととどめておけばいいんですよ。
【ひでこ】:大御所でありながら過去をあっさり捨てられて、形ある物に執着しない高橋さん。……輝きの秘密がわかりました。
【高橋】:これから家を建てる人には「収納を作るな」と言いたいですね。収納があるから、物、そして過去を捨てられなくなるんです!
【ひでこ】:お見事!(大拍手)
過去にしがみつかずに新陳代謝。
高橋さんはまさに「断捨離マスター」ですね!
撮影/久富健太郎(SPUTNIK) ヘア・メイク/Hachi 取材・文/志村香織