【10月のアクション】個性を認め合うSDGs ADHDで毎日怒られてばかりいた僕が〝葉っぱ切り絵アート〞に出合って自由になれたワケ
2021/10/16
個性を認めて不平等をなくすのもSDGsの大切なテーマ。ADHD(注意欠如・多動症)の特性を生かして活躍する「リト@葉っぱ切り絵」さんにインタビュー。短所だった過集中が今は長所に!今日までの歩みを教えてもらいました。
<教えてくれた人>
リト@葉っぱ切り絵さん
葉っぱ切り絵アーティスト。大人になってから、過集中やこだわりなどが特性のADHDと診断される。あえてそれを生かし、20年から葉っぱ切り絵を独学で制作。SNSで発信すると国内・海外メディアで注目されるなど人気に。
What's SDGs?
【持続可能な社会のための世界の目標】
SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、15年に国連サミットで193の国と地域が採択した17の目標のこと。環境や貧困についてや、働きがいやジェンダー平等など幅広い目標があります。
SDGsの17の目標
【1】貧困をなくそう
【2】飢餓をゼロに
【3】すべての人に健康と福祉を
【4】質の高い教育をみんなに
【5】ジェンダー平等を実現しよう
【6】安全な水とトイレを世界中に
【7】エネルギーをみんなにそしてクリーンに
【8】働きがいも経済成長も
【9】産業と技術革新の基盤をつくろう
【10】人や国の不平等をなくそう
【11】住み続けられるまちづくりを
【12】つくる責任つかう責任
【13】気候変動に具体的な対策を
【14】海の豊かさを守ろう
【15】陸の豊かさも守ろう
【16】平和と公正をすべての人に
【17】パートナーシップで目標を達成しよう
ADHDで毎日怒られてばかりいた僕が"葉っぱ切り絵アート"に出合って自由になれた理由
個性を認めて不平等をなくすのもSDGsのテーマ。ADHD(注意欠如・多動症)の特性を生かして活躍する「リト@葉っぱ切り絵」さんに、まいこさんが話を伺いました!
学生時代はごくごく普通の子、社会人になってから"あれ?"と……
まいこさん(以下ま) リトさんは小さいころはどんな子どもだったんですか?
リト@葉っぱ切り絵さん(以下リ) ごくごく普通の子どもでした。親には「要領が悪い」と言われていましたが、特に困ることもありませんでした。
ま そんなリトさんが、自分がADHDだと気づいたのは、いつごろですか。
リ 就職してからです。学生時代は、まじめに頑張っていれば、そのプロセスを評価してもらえますよね。でも、仕事は結果がすべてです。その場の空気を読んで、仕事の段取りを考えるということができないから、毎日、職場で怒られてばかりでつらかったですね。そんなときにインターネットでADHDのことを知って、「これって、僕のことじゃないか!」と。すぐに病院に行ったところ、正式にADHDだという診断をもらいました。
ま 自分がADHDだと診断されたときは、どんな気持ちでしたか。
リ 正直、ホッとしました。それまでは努力がたりないんだと、自分を責めていたんですが、「脳の障害のせいだ」とわかって、楽になりました。
過集中の特性を生かして葉っぱで切り絵のストーリーを
ADHDと診断されたときはホッとしました。
ま 葉っぱで切り絵をしてみようと思ったのは、どういうきっかけだったんですか。
リ ADHDの悩みをSNSで発信していたんですが、だんだんネタがなくなってきて(笑)。そんなとき、ノートの片隅に落書きした絵をSNSに投稿したら「いいね」がたくさんついて。「過集中というADHDの特性を生かせば、自分にもアートが描けるのでは」と。学生時代から絵を描いていたというわけではないんです。
ま へぇ、切り絵ではなく、絵だったんですね!
リ そうなんです。でも、緻密な絵というだけでは、すぐ飽きられてしまって。当時は仕事もしておらず、貯金は2万円。なんとかできることを見つけたい、という焦りも。そんなとき、海外のサイトで偶然葉っぱの切り絵について知ったんです。
ま すぐ行動にうつすところがすごいですね。素材が葉っぱだと切り絵もむずかしそうですが。
リ むずかしかったです(笑)。最初は大失敗でした。でも2作目は自分でも満足できる仕上りで。それを投稿したところ、すごい反響が!当時は「前に進むしかないんだ」という気持ちでしたね。
ま リトさんの作品からはいろいろなストーリーが浮かんできますよね。そこがとても好きです。ところで、仕事をしているときはADHDでつらい思いをしてきたそうですが、現在までに自分の考えなどに変化がありましたか。
リ いちばんの変化は、他人の顔色や機嫌をうかがわなくなったことですね。以前は、とにかくまわりの気持ち優先で自分を押し殺していました。今は、自分の意思をきちんと口に出して、嫌なものは嫌だと言えるようになりました。たとえ、それで嫌われたとしても、自分には"葉っぱ切り絵"という強みがあります。ADHDが自分にとって強みなんだ、という自信がつきました。
ま ファンのかたをはじめとして、リトさんを理解してくれる人もどんどん増えていると思います。
リ そうですね。以前は、まわりは敵だらけだと思っていましたが、今は自分にはこんなに味方がいるんだから、何も怖くないと思っています。
短所だった"過集中"が今は長所になりました。
今日からSDGsを実践しよう!
リトさんからのメッセージ
もし子どもがADHDかもと思ったら……
ADHDは人よりも得意なものや、苦手なものが"偏っている"だけだと思っています。最近は小さいうちに診断をする人が多いですが、小さいうちから弱みを知って対策できるのは、悪いことではないなと思います。
僕だったらこう接してほしい……
ADHDだからと特別扱いされるよりも、ダメなところはダメと注意されるほうがいい。言われないとダメなところに気づけませんが、言われて気づけば改善することができます。
まいこさんの感想は?
ADHDの人が困っていることを一緒に考えたい!
リトさんに会えたことで、ADHDの特性が強みや個性となることを感じました。ADHDのかたと出会ったら「何に困っているのか」「まわりがどうしたら動きやすいか」など、私も一緒に考えさせてもらいたいと思います。
リト@葉っぱ切り絵さんの作品をもっと楽しむなら!
小さな1枚の葉っぱの上に温かい世界が広がるリトさんの切り絵作品集。収録した全89作品のタイトルや、やさしさがあふれるストーリーにも注目。
『いつでも君のそばにいる』(講談社)
参照:『サンキュ!』2021年11月号「今日から親子でちょっぴり"SDGs生活"始めます!」より。掲載している情報は2021年9月現在のものです。撮影/川原崎宣喜 イラスト/まいこ 構成/岡部さつき(風讃社) 取材・文/工藤千秋 編集/サンキュ!編集部