母親は子供の女の子を叱っている。

年長さんを伸ばす上手な「叱り方」とは?

2022/01/30

お子さんをつい叱りすぎて、「やっちゃった…」と思った経験はありませんか? 年長さんは、心や体の成長とともに、これまでの「叱り方」が通じなくなってくる時期です。そこで、年長さんの心に「しっかり響く」叱り方、関わり方をご紹介します。

<監修者>高木紀子先生(たかぎのりこ)
●臨床心理士・公認心理師。中央大学非常勤講師。清泉女子大学非常勤講師。フォーレカウンセリングセンター所属。保育園の巡回相談なども行う。

年長さんの今が変えどき! 子どもが納得できる叱り方

核家族化した現代では、「子育ては親の役目」と感じ、追いつめられるおうちのかたが増えています。世間の子どもへの目も厳しいため、「自分がしっかりしつけなければ」と、子育ての手がなかなか抜けず、「子どもをきつい言葉でコントロールしてしまう」、「叱りたくないのについガミガミと叱ってしまう」というケースが増えてきています。

教育のために叱ることは、悪いことではありません。でも、ただガミガミと叱っていたのでは効果は半減。特に年長さんは、まわりのことが見えるようになり、知識も増え、精神的にも成長してきています。「ダメなものはダメ」などと、頭ごなしに叱りつけていては、納得しないことも。また、「あなたは本当にいじわるね!」「うちにはいらない!」などの、性質を決めつける言葉や存在を否定する言葉も、おうちのかたが思う以上にお子さんを傷つけています。

ただ、仮にこれまで叱りすぎていたとしても、挽回(ばんかい)するチャンスはたくさんあります。まずは年長さんの成長を知り、それに合わせた叱り方を身につけていきましょう。

年長さんの特徴と、「しっかり響く」叱り方のポイントは?

年長さんになると、物事が少しずつ見えてきます。また、知識も増え、言葉も上手に使いこなすようになるころです。「○○ちゃんの家は、いいのに」「お母さんは、この前は『いい』って言っていたよ!」などのお子さんの反論に、おうちのかたが困ることもあるかも。でも、それもお子さんがしっかりと成長している証拠なのです。

大人は、子どもに対して「こうしなさい」「それはダメ」などと指導したくなるものですが、年長さんは判断力も育ってくるころです。「どうすればよかったかな?」「あなたがされたらどう?」など、これからはお子さん自身に考えさせる叱り方に変えましょう。そうすれば、おうちのかたにとっても、ガミガミ言うことが減って楽になるはずです。次の「しっかり響く」叱り方のポイントを実践してみましょう。

娘と話しているアジアの母
kokoroyuki/gettyimages

頭ごなしに否定せず、理由をきちんと聞こう

叱り方ポイント:お子さんには、その行動をした理由(しなかった理由)が必ずあるはず。理由も聞かず頭ごなしに叱るのではなく、まずは理由を尋ねましょう。お子さんを、ひとりの人間として尊重し、対応することが大切です。

子どもが素直に話したら、叱らず受け止めよう

年長さんは、先を予測する力がつくので、自分が不利になる(怒られる)と思ったときは、黙ってしまうことも。まずは、「大丈夫、怒らないよ」と、お子さんが安心できる状況をつくりましょう。

相手の立場を想像させながら叱ろう

相手の立場になって考えられるようになる時期です。相手の気持ちをできるだけ具体的にわかりやすい言葉で伝えましょう。相手の気持ちが想像できれば、どう行動すべきか自分でわかります。

こんなときどうする? お悩み別叱り方のポイント

いざ叱るときに、具体的にはどういう言葉かけをしたらよいのか、ケース別に専門家からのアドバイスをご紹介します。

ケース1

食事中に「肘をつかない」「よそ見をしない」などを注意するが、すぐに忘れて繰り返すときは…。
→頭ではわかっているもの。「大事だね」と思い出させてあげればOK!

わかっていることと、それを実行することとは別。「子どもはわかっていても、ついやってしまったり、忘れたりするもの」と意識しましょう。身につけてほしいマナーであれば、その都度「肘はどうするの?」とか「(ひそひそ声で)肘ね!」と、思い出させる声かけを続けていくことが大切です。

ケース2

「着替えを持ってきなさい」などと具体的に伝えるようにしたが、最近は一つひとつ言わないと動いてくれないときは…。
→ダラダラしたくなる原因を取り除いて!

子どもには、「テレビを中断したくない」など、ダラダラしていた理由があるもの。「着替え終えたら録画した番組を見ようね」などと、ダラダラしたくなる原因を取り除くようにしましょう。

ケース3

きょうだいげんかが絶えず、毎日イライラ。「いい加減にしなさい!」と、大声で怒鳴ってしまうときは…。
→きょうだいげんかは、きょうだいの醍醐味とどんと構えて!

きょうだいげんかは、調整力や交渉力のトレーニングになります。社会性を育てる「いい機会」だと考えて。おうちのかたはどちらが悪かったか判断する必要はなく、「お兄ちゃんは××って言っているよ」などと「通訳」に徹すればよいでしょう。大人が聞いてくれるだけで、子どもは落ち着くものです。

ケース4

スーパーに行く度に、「お菓子買って!買って!」と大騒ぎ。叱ると余計にヒートアップしてしまうので、つい買ってしまいそうなときは…。
→事前に、年長さんのプライドをくすぐりながら約束を!

子どもがごねたからと言って、約束事を譲ることは避けたいもの。まずは、出かける前に「お菓子は買わないよ」と約束事を確認しましょう。さらに、スーパーの前で「約束守れるかな? また『買って~』って言ったりしないよね?」と、プライドをくすぐれば、約束を守る気持ちは強くなりますよ。

ケース5

本人のためを思って注意をしたり叱ったりしても、子どもが逆ぎれしたり口答えしたりするときは…。
→「口答え」は自立心が芽生えてきた証(あかし)ととらえ、任せてみても!

おうちのかたには「口答え」でも、お子さんにとっては「言い分」かもしれません。自分なりに考えて行動しようとする態度は、自立の一歩。危険な状況でなければ、お子さんに任せてみては? ただし、「うるさいなあ」など、相手を不快にさせる言葉を言ったときはしっかり注意しましょう。

ケース6

家では禁止していることが、友だちの家では許されていることを知り、「○○ちゃんちは、いいんだよ!」と大抗議してきたときは…。
→家族でルールを話し合う機会に!

家庭によってルールは違うものです。一貫性のある態度は必要ですから、譲れないことは、理由をしっかり伝えて。ただし、「うちでも許してもいいかな」と感じたときは、「あとでパパ(ママ)と考えてみるよ」などと、ルールを見直す機会にしてもいいですね。

ケース7

「どうして怒っているか、わかっている?」「ちゃんと話しなさい!」と言っても、黙り込んだり「わからない」と答えるときは…。
→まずは、「怒りすぎたかな?」と振り返って。

おうちのかたが怒りすぎていないか、振り返ってみてください。「怖い」と感じると、子どもは黙り込むもの。おうちのかた自身が冷静になり、「怒らないから言ってごらん」と言葉をかけるなど、安心させる工夫をしましょう。

ケース8

ちょっと叱ると泣き出すので、話を聞き出すこともできない。「泣いてもわからないよ」となだめても、泣き続けて困るときは…。
→短く叱って、早めに切り上げて。

泣いているお子さんを叱り続けても、ずっと泣き続けているだけ。叱る場合は、伝えたいことを伝えて、さっさと切り上げましょう。そうすればお子さんは「泣かなくても終わる」ということがわかり、「泣いてもしょうがない」ということが少しずつわかってきますよ。

「叱りすぎちゃった…」そんなとき、大切なことは?

彼女の娘を抱きしめるアジアの母親
kokoroyuki/gettyimages

叱りすぎたなと思ったら、「こんなに叱らなくてよかったよね」「忙しくてイライラしていたの。ごめんね」などと素直に謝り、フォローしましょう。子どもの寝顔にささやくのではなく、起きている子どもに気持ちを伝えることが大切です。

日々子育てをしている中では、叱りたくなることがあって当然。お子さんの心に届く、上手な叱り方を探していきましょうね。

参照:こどもちゃれんじ

 
 

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