伊藤園「お~いお茶」のペットボトルを買うと、パッケージに載っている、“あの俳句”。見たことある人は多いのでは?
このたび、もうすぐ発売される「お~いお茶」に掲載される俳句作品を選ぶ、「第三十二回伊藤園お~いお茶新俳句大賞」の入賞作品発表会がオンラインにて開催されました。
今年は人に会えない時間やおうち時間が長かったせいか、応募数が200万句を超え、過去最多だったそうです。
では、その入賞作品は? どのように選ばれるの? 応募するには? 発表会の様子をレポートいたします!
第三十二回の「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」は、おうち時間の増加で応募数過去最多!
「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」が始まったのは1989年。伊藤園が世界で初めて緑茶の缶飲料化に成功して5年目のこと。この年、松尾芭蕉の「奥の細道」が300周年を迎え、俵万智氏の「サラダ記念日」が流行、俳句や短歌スクールの人気が高まりながらも、作品発表の機会がなかなかなかった!という背景を受けて、誕生しました。
第三十二回は、応募数205万7,963句と過去最多。応募のきっかけを調べてみると、「コロナ禍で時間ができ、自己表現したくなった」というのが、応募理由の第3位にランクイン。
具体的には「1年以上会えていない実家の家族と一緒に応募した」、「孤立感を感じ、社会とのつながりを求めて応募した」という声があがっており、「外出自粛の中、俳句創作が気分転換になった」といった感想も多かったそうです。
自由で新鮮な発想力が魅力! 発表「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」9作品

「伊藤園お~いお茶新俳句」の大賞、入賞入選作品は約4カ月かけて選ばれます。現代俳句協会員の俳人が審査する一次審査、一句につき3名以上で審査する二次審査の後、元ジャーナリストや編集者などによる敗者復活審査を経て、最終審査員が審査を行います。
オンライン発表会では作品の発表に先立って、審査員の一人であるいとうせいこう氏が登場。今回の応募作品について、「全体的にレベルが上がっている。それはテクニックというだけでなく、発想やアイデアに新鮮さが溢れていた」といったコメントを述べていました。
それでは部門別に受賞作品をご紹介します!
文部科学大臣賞
「花鳥風月私はここに海入れる」 木村稀々香(ののか)さん(14歳・滋賀県)
<選評>
「難しい感じも言葉も使っていない、誰が読んでもわかる、前向きな意思にすばらしさを感じた」(作家・宮部みゆき氏)
<作者コメント>
「海」も自然界の美しい景物のひとつ。これからもっと海をキレイにしていかないと、という思いと、外国のひとにも「花鳥風月」という言葉をしってもらうきっかけになったらと思い、この俳句を作りました。
金子兜太賞
「ぬか床に太古の祖母が住みにけり」 弓削田(ゆげた)恵理さん(36歳・埼玉県)
<選評>
「『太古の祖母』はグレートマザーを連想させる。ぬか床に数十万年のグレートマザーを思わせる歴史を感じる、スケールの大きい作品」(日本語学者・金田一秀穂氏)
<作者コメント>
子どもの頃、毎日ぬか床をかき混ぜていた祖母の手はいつもぬかの匂いがしました。そして今、自分でぬか漬けを始め、ぬかの匂いを嗅ぐたびに、祖母を思い出します。また、ぬか床から野菜を取り出す行為が、地層から化石を発掘するのにも似ていると感じ、祖母の懐かしさも掘り起こしているようで、この俳句が生まれました。
小学生の部(幼児含む)・大賞
「著(き)ぶくれてやる氣出るのを待つてゐる」 武田奈々さん(11歳・兵庫県)
<選評>
「私はこの句がとってもいいと思った。やっぱりやる気は自分で出さなくてはダメよね」(女優・吉行和子氏)
<作者コメント>
宿題を取りかかる気になれないときにこの俳句を詠みました。「著(き)ぶくれ」という季語を使ったらおもしろいと思い、それに合わせ「やる氣」など旧仮名遣いを調べ表現しました。
中学生の部・大賞
「冬の昼リモートワークの父の声」 舞床迅斗(まいとこ はやと)さん(14歳・神奈川県)
<選評>
「仕事をしている父の声が聞こえ、日常とは違う思いがけない父の姿、一面を見た驚き。『これが大人の』世界かな?という驚き、『自分もあんな風に大人になっていくのかな』という感慨を覚えた一句なのでは」(俳人・安西篤氏)
<作者コメント>
冬の寒い日、リモートワークをする父の声が隣の部屋から聞こえてきました。いつもは忙しくて家にいない父ですが、外出自粛期間は家にいる機会が増え、家族の距離が縮まったと感じました。今は厳しい世の中だけれど、なんだかほっと温かみを感じたときの思いを俳句にしました。
高校生の部・大賞
「君の青を枯野に転写してくれないか」 馬越大知(うまこし たいち)さん(17歳・愛媛県)
<選評>
「枯野の句でこんなにみずみずしく青春性があふれた句はない。涙が出るほど感動した。この俳句大会の収穫。これだけの句を詠める高校生がいるのは嬉しい」(俳人・黒田杏子氏)
<作者コメント>
「枯野」には寂しいイメージがあり、「君」は今恋をしている人、「青」は青春を象徴するもの。好きな人の青春を寂しい枯野に映して欲しいという気持ちを表現した俳句です。
一般の部A(40歳未満)・大賞
「リュックから飛び出す葱(ねぎ)のこころざし」 皆川大那(だいな)さん(22歳・京都府)
<選評>
「フレッシュな力強さを感じた。リュックから飛び出しているところもネガティブではなく、逆に自分の意思と志を表すというような、ポジティブなイメージが現れていて、読んだ人にもいいエネルギーを伝わるのでは?と思った」(ギタリスト・村治佳織氏)
<作者コメント>
リュックサックに買ったものを詰めて買える途中、振り返ると飛び出した葱がなんだかりりしく見えました。そのとき感じたことを詠みました。
一般の部B(40歳以上)・大賞
「名月やきれいな音のでる薬缶(やかん)」 冨田洋美さん(55歳・奈良県)
<選評>
「『名月』という季語を使う句は難しい。それを『きれいな音のでる』と続け、雅な句になると思ったら、最後にやかんという俗なところに落としてくる。でも結果、やかんはとても素敵な音を立てている。名月を愛でていると、後ろでやかんにお湯が湧いている、なんと素敵な今日の月であろうかと見上げている、素晴らしい一句だと思う」(俳人・夏井いつき氏)
<作者コメント>
夫は単身赴任中。娘たちもまだ帰宅していない夕方、ベランダから見えた満月に見とれていたとき、突然鳴り出した笛吹ケトルの音色が、特別きれいな音を奏でているように感じた。遠く離れた夫も空に輝くこの名月を見ているだろうか、と思ったときのことを詠みました。
英語俳句の部・大賞
「Long-distance running I don’t want to do it Long-distance running」 (訳)「長距離走ぼくはやりたくない長距離走」 宮地慶さん(12歳・愛知県)
<選評>
「この俳句は反復しているところが一見無駄に見えるけど、この繰り返しがしんどさを醸し出しているところがおもしろい」(詩人・アーサー・ビナード氏)
「構成的に特徴のある大胆な作品。一行目と三行目に挟まれて、つぶやきのように『I don’t want to do it』というフレーズが入っている。大変素直な気持ちを表現したフレーズだけど、長距離競争そのものを否定しているわけでなく、『よくやるな』という感嘆と敬意が潜んでいると思う。珍しい題材を思い切った表現で見事に表した作品」(俳人・星野恒彦氏(訳担当))
<作者コメント>
校庭を走る長距離走はなかなか終わりがなく、しかも今はマスクをしていて息苦しいので好きではありません。しかしそれは今のコロナ禍と共通する思い、それらを併せて、学校生活での自分の正直な気持ちを表現しました。
新俳句フォトの部・大賞
「けど明日は光の中の古写真」 西島千尋さん(32歳・静岡県)
<選評>
「写真と俳句の歩み寄り方が繊細。こういうやり方が、一つの方法としてあるのだな、ということが素直に入ってきた、素敵な作品」(写真家・浅井愼平氏)
<作者コメント>
妹と一緒に海に行ったときに撮影した写真。この写真を後で見たとき、自分はその時の情景を覚えているけれど、第三者にとっては単なる古写真でしかないだろうな、という思いを俳句にしました。
賞金50万円も?! ルールに縛られず自由に表現できる!「新俳句大賞」に応募してみよう!

「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」は、季語や定型など俳句の細かいルールにこだわらず、「五・七・五」のリズムに自由に気持ちを表現できる「新俳句」。
審査も俳句の第一人者に加え、写真、演劇、文学など、さまざまな分野で活躍する人たちも交えて、広い視点で選んでいきます。
そして、最高位の文部科学大臣賞を取ると「お~いお茶」のペットボトルに掲載されるだけでなく、賞金50万円がもらえるんです!
おうち時間や自分と向き合う時間の増えた今、「五・七・五」のリズムに思いを乗せて、あなたも「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」に応募してみてはいかが?
\第三十三回「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」/
協力/株式会社伊藤園