「美容院に行けない...」パニック障害で塞ぎ込んでいた私が変われた理由
2021/09/04
三年ほど前にパニック障害を発症したあやをさん。
過去に一度だけ、パニック障害に関する記事を書いたところ、それから一年以上経った今でも、同じような症状に苦しむかたから「家族に記事を読んでもらいました。」「苦しんでいるのは自分だけではないんだと思えました。」といったメッセージが届くそう。
今回は、自分の経験が参考になればという思いを抱くようになたっというあやをさんに、実際どのようにパニック障害と付き合って生活しているかを教えていただきました。
恐怖の対象である美容院
日常生活で色々と不自由を強いられるパニック障害。発症したあと、かなり初期の段階で発作の対象になったのが美容院でした。初めての発作が歯科医院だったこともあり、椅子に座って施術を受けるという状況が似ていたからかもしれません。
特に苦手なのが、美容院で必ず付けるケープ。ケープを巻くことで、一気に逃げ場を失った感覚になってしまうのです。
また、シャンプーやカラーなど、万が一発作が起きたときにすぐに逃げられないような状況もすごく怖く感じました。
そんな状況の中、私がまずとった行動は「美容院に行かない」でした。行くと発作が出てしまうかもしれないから、行かない。それが一番安全だからです。
それまで長らくショートヘアだったのですが、そこから数ヶ月は美容院に行かず伸ばしっぱなし。「髪伸ばしてるの〜?」なんて周囲から声をかけられても苦笑い...そんな日々が続きました。
発作の波に振り回される
数ヶ月経ち、症状が収まってきたので美容院へ行ってみることにしました。長時間になるのは不安だったので、カラーはやめてカットのみに。
やはりケープをつける時に少しドキドキしたもののすぐにおさまり、その日は終わるまで発作は出ませんでした。
「私、美容院に行けるようになったんだ!」周りからしたら”そんなこと”かもしれません。でもそのときの私にとっては、それが本当に嬉しかった。
しかし喜びもつかの間。数ヶ月後、乗り物でひどいパニック症状が出てしまったことがきっかけで、また美容院でも発作が起こるようになってしまいます。
私の場合、発作が起きない期間が長ければ長いほど、予期不安が減るので発作は起こりにくくなります。反対に、一度ひどい発作が起きてしまうと、そこからしばらくは過敏になってしまうのです。
だから「良くなったかも!」と思っても、しばらくすると「やっぱりダメだ」の繰り返し。
急に発作が出たら迷惑をかけてしまうと思い、美容院に行く前には必ず薬※を飲むようになりました。でもそうするうちに、どんどん薬に依存していき「私は薬を飲まないと美容院にも行けないのか」ということに心がさらに荒んでいきました。
このままでは、どんどん塞ぎ込んでしまう...と不安になった私は「薬に頼らず美容院に行くことはできないか?」を改めて考えるようになりました。
※ 病院から処方されている頓服薬です。
薬に頼らず美容院に行くために
私はまず、担当の美容師さんにパニック障害であることを打ち明け、そして、どういうシーンが苦手で、発作が出やすいのかを説明しました。
すると美容師さんから「ケープを外してやりましょうか?」と提案してくださったのです。それまで、ケープは当然しなくてはいけないもので、我慢するしかないと思っていました。
でも実際にケープをしている時間を必要最小限にし、不要な時間は外してもらうようにしたら、美容院で過ごす時間がかなり楽になったのです。
他にも「開放感がある席の方が良いですか?」と窓際へ案内してくださったり、「気分悪くないですか?」「(ケープをしないといけないときも)少し緩めますか?」などとと声をかけてくださり、本当に感謝しています。
そういった美容師さんの気遣いのおかげで、発作が出る回数がだんだんと少なくなっていきました。「担当の美容師さんが、私の症状を理解してくれているから大丈夫」という安心感が生まれたのも大きかったと思います。
以前は、美容院のあるフロアへ上がるエレベーターの中で動悸が激しくなっていた私が、今ではカラーを楽しむこともできるようになりました。
パニック障害の人は美容院に行っちゃいけない?
「周りにそんな気を遣わせるくらいなら美容院に行かなければいいのでは?」
と思うかたもいるかもしれません。私自身、そう思い美容院に行くことができなかった日々がありました。
でも、これまで当たり前にできていたこと、私以外の人が当たり前にできていること、それを「できない」と決めつけ、あれもできなくなった、これもできなくなった、と出来ないことを数える毎日は、苦しかった。
だから私はそれよりも、こうすればできる、ああすればできる、と「できる方法」を探したいと思いました。
そのためには、周りの人に協力してもらわなければいけませんし、時には迷惑をかけてしまうこともあるかもしれません。
でも、それを恐れて出来ないことをこれ以上増やしたくないのです。だから今は、気を遣わせて申し訳ない...と悲観するよりも、周囲の理解と優しさに感謝しながら「できること」を少しずつ増やしていきたいと思っています。
ちなみに、最近では歯科医院にも行けるようになりました。美容院同様、事前にパニック障害であることを伝え、症状を詳しく説明したところ、すぐに「エプロンをつけない」「椅子をあまり倒さない」といった対応をしてくださったのです。
それでも時々具合が悪くなってしまうこともありますが、そんな時も「無理せず少し休みましょう」と声をかけていただき、椅子を起こして休ませてもらいながら治療をしています。
障害を打ち明けたらすごく生きやすくなって、色んなことができるようになった
パニック障害を隠して悩んでいた時期は辛かったですが、周囲にきちんと説明してみたら、自分が思っていたよりもずっと、みんなが理解してくれました。
身近な人に打ち明けるのは勇気がいることだと思います。私もすごく躊躇いました。でも私は、打ち明けたことですごく生きやすくなって、色んなことができるようになったんです。
迷惑をかけてしまっていることもありますし、それを心苦しく思うことも、もちろんあります。
それでも「パニック障害だから◯◯ができない」と思っている人がもしいたら、そんなことはないよ、と伝えたい。周囲の理解と協力は必要になってしまうけれど、ちゃんとできます。歯科医院で治療だってできるし、美容院でカラーだってできる。
センシティブな内容なので、しばらくパニック障害に関する記事は避けていました。でも、メッセージを頂くたびに私自身も勇気付けられ、もし私が発信することでそれが誰かの役に立つのならと思い、今回また書くことにしました。
※個人の体験談です。参考にされる場合は医師とご相談ください。
◆執筆者・・・あやを
インテリアも節約も収納も料理もそこそこな肩書き迷子。強いて言うなら暮らしにまつわるあれこれを幅広く執筆する「暮らし」のオールラウンダー。お金好きが高じてFP2級を取得。暇さえあれば本を読んでいる読書家。Instagramでも定期的に読んだ本を紹介しています。