フェムテックの改革はスマートに!~連載「はじめよう!フェムテック」vol.7

2021/12/24

2021年10月26日(火)から、ニッポン放送でスタートした番組『はじめよう!フェムテック』(毎週火耀~木曜 午後7時53分~58分頃)。ベネッセコーポレーションとかます東京の共同企画で、今、社会的なムーブメントになりつつある「フェムテック」を、さまざまな角度から取り上げています。パーソナリティは、おなじみの伊久美亜紀総編集長と東島衣里アナウンサー。この連載では、毎週オンエアされた3回分の内容を、ギュッとまとめてお伝えします。

●パーソナリティ
伊久美亜紀 Aki Ikumi
大学卒業後、出版社3社の編集部を経て、1995年ベネッセコーポレーションに入社。『サンキュ!』編集長を長く勤め、現在はK&Fメディア総編集長として『たまひよ』『サンキュ!』『いぬのきもち』など年間約100冊の雑誌・書籍・絵本の編集責任者を務める。バツイチ29歳の長女一人。

東島衣里 Eri Higashijima
長崎県出身。大学卒業後、ニッポン放送に入社。現在は「中川家 ザ・ラジオショー」(金 13:00~15:30)、「サンドウィッチマン ザ・ラジオショー」(土 13:00~15:00)などの番組を担当する。最近、女性の健康、そして幸せについて友人と語り合うことが多くなった31歳。

●ゲスト
坂野ゆか Yuka Sakano
公益財団法人川喜多記念映画文化財団常務理事。20年以上、同財団で映画コーディネーターとして、カンヌ、ベネチア、ベルリン、香港、釜山などの国際映画祭へ、新作日本映画を紹介することを中心とした海外業務に携わる。また、国際映画祭での審査員や国内の映画関連機関の審議員も務める。

まだまだ認知度の低い「フェムテック」を推進して、女性だけでなく社会全体の幸せを目指したい!という意気込みでスタートした番組の第7週。ゲストは、映画コーディネーターの坂野ゆかさんです。「邦画が好きで、坂野ちゃんからはいつも邦画製作の裏側や監督目線での作品解説など、貴重なお話を聞かせてもらっています。本当に学びに熱心で、例えば、何げなく私が聞いたことを、後できちんと調べてわかりやすく教えてくれる。勉強もできるし好きなんだろうなぁ。私にはあまりない要素だから(笑)、いつもすごいなぁと思って尊敬しています」(伊久美)

【Talk】
■東島アナ「坂野さん、今夜は、フェムテックと関連のある、女性の社会進出や働く環境についてお話を伺いたいと思うのですが、映画業界の現状はいかがでしょうか」

■坂野「皆さんもニュースなどで耳にされたと思いますが、2017年にハリウッドの大御所プロデューサーがセクハラで訴えられたことをきっかけに、職場における女性の不当な扱いや、男女の労働待遇の格差などを是正していこうという “Me Too運動” が、全世界に広がっていきました」

■東島アナ「日本の映画業界にも、ムーブメントはあったのでしょうか」

■坂野「欧米ほどはなかったですね…」

■伊久美「Me Too運動は言葉にもインパクトがあって、日本でもかなり話題になりましたよね。それなのに、さほど広がりがなかったのは、どうしてだと思いますか」

■坂野「日本において、“声を上げる”というのが、すご~くハードルが高いんだと思います。残念ながら…」

■伊久美「想像するに、映画の製作現場は、女性のスタッフの数はとても少なそう。お手洗いへ行くタイミングとか、女性が働く上で不便がありそうですよね」

■坂野「最近は改善傾向にあるものの、現場はかなり問題がありますね。労働時間が不規則なので体を壊したり、結婚したり出産したりして、業界の働き方についていけなくなったりして、女性がベテランの域になるまで活躍し続けることが難しい。ベテラン層の女性がいない現場が多いので、若い女性たちは、例えば “お手洗いへ行ってきていいですか” と言い出しにくくて、結果、病気になってしまう人もいます。ですので、吸水ショーツの存在を知ったときは、現場で働く女性たちは助かるだろうなぁと思いました」

■伊久美「最近は女性の監督も活躍していますよね。例えば西川美和さんの作品は、私は大好きで全部観ているんですけど、西川さんの現場は、女性のスタッフが多いんですか?」

■坂野「西川さんは20年以上ご活躍されている数少ない女性監督で、大きな作品も手掛けていらっしゃいます。もともと、職場における女性の地位向上に対する意識も高く、女性のスタッフをどんどん登用することも頭にあったようです。最新作の『すばらしき世界』も、60人のスタッフ中23人が女性でした」

■東島「全体の3分の1ですが、それでも多くなったということなんですね」

■坂野「多いです。このように、少しずつですが、日本でも “Me Too” 精神の浸透や、フェムテック推進の風は吹き始めている、と私は感じています」

■東島「フェムテックの風を起こしている番組なので(笑)、それはうれしいですね~」

■坂野「ぜひ、風を起こしていきましょう~(笑)」

■伊久美「いろんな業界やいろんな立場で一人一人が、坂野ちゃんのように、風は吹き始めていると思ってくださったら、ゆっくりでも社会は変化していくという希望がもてました」

【 坂野 Voice 】

日本でも、フェムテックの風は吹きはじめている

2017年、ハリウッドやヨーロッパで、業界をはじめ社会に大きな影響を与えたMe Too運動。日本では、さほど目立ったムーブメントにはならなかった。とはいえ、最近では、長年活躍している女性の監督やベテランスタッフも少しずつ増えている。現場に決定権のある役職の女性が増えていけば、自然に女性の登用も増え、働く環境も改善していくはずです。日本でMe Too精神がどこまで広がっているのかがなかなか見えにくいですが、“ 心地よくのびのびと仕事ができる環境にしていきたい” という、女性たちの強い意志や長年の努力の結果、今日、日本の業界や社会は確実に変化している、と感じています。

【 Talk 】
■東島アナ「“フェムテックの風は吹きはじめている”とおっしゃる坂野さんですが、フェムテックを推進する上で、今後の課題はなんだと思われますか」

■坂野「例えば月経痛などは、特に男性には理解しづらいと思います。“今日はおなかがつらい日なんです”とか“なんだか腰が重くて”など、主張する側もサラッと言えて、周りの人も察してくれるような社会になるとベストだなぁと思います」

■東島アナ「まるで、天気の話をするように、普通のこととして、ですよね」

■坂野「一方で、明け透け過ぎるのもどうかなと思ったりもします。タブーではもちろんありませんが、別にアピールすることでもないので」

■伊久美「“声には出すべき、でも慎みも大事”というバランスですね」

■東島アナ「この番組を担当させていただきながら、まさにそのバランスについて、最近よく考えていたことでした(笑)。例えば、生理痛で辛くて、状況を察してほしいなぁ、少し助けてほしいなぁと思っていることを、どうして男性は察してくれないのだろうという思いが先立って、攻めるような口調や態度をしてしまう。男性は、自分は怒られているんだ、みたいな感じで、気まずい雰囲気になってしまうというようなこともありまして」

■伊久美「坂野ちゃんは、外国人のお友達も多いじゃない? 彼らは女性特有の問題も、男女でサラっと話している感じがしますよね」

■坂野「彼らはあけすけではないし、慎みもありますね。変に隠していないからかもしれない。あの自然な感じは、幼いころからの教育によるものなのかなぁと」

■伊久美「それ、すごく重要なこと。幼少期からしっかりと性教育を受けること、これからの日本の大きな課題だと思いますね。」

【 坂野 Voice 】

あけすけにではなく、慎みも持ちながら、フェムテックを広げていきたい

女性特有の心身の不調は、女性の中でも個人差があり、ましてや、経験したことがない男性には理解しにくいと思います。彼らも単に「知らない」「気づかない」というだけで、理解しようという気持ちはあるような気がします。だから、女性の側が声を出していくことは大切。一方で、必要以上に、生理やホルモンの問題を語ることにも疑問があります。あけすけすぎず慎みすぎない、いかにスマートに伝えるかが課題。そして、近い将来、月経痛や更年期の不調が、歯痛や腰痛のような人間のよくある不調の一つとして、特別視されない世の中になってほしいです。

合言葉は「はじめよう!フェムテック!!」

●次週のゲストは、トラベル&スパジャーナリストの板倉由未子さんです。

【番組インフォメーション】
『はじめよう!フェムテック』は、毎週・火曜日~木曜日の19時53分~5分番組です。火曜日:ニッポン放送をキーステーションに、全国19局ネット、水曜日・木曜日:ニッポン放送をキーステーションに全国27局ネット、で放送中。聴き逃したかたは、お住まいのエリアのradikoでもお聴きになれます!

●記事まとめ/板倉由未子 Yumiko Itakura
トラベル&スパジャーナリスト。『25ans』などの編集者を経て独立。世界を巡り、各地に息づく心身の健康や癒やしをテーマとした旅企画を中心に、各メディアで構成&執筆。イタリア愛好家でもある。伊久美さんとは27年来の付き合い。https://www.yumikoitakura.com/

●撮影/寿 友紀

 
 

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