“性”と“生”のつながりから考える性教育問題~連載「はじめよう!フェムテック」

2022/08/03

2021年10月から、ニッポン放送でスタートした番組『はじめよう!フェムテック』。ベネッセコーポレーションとかます東京の共同企画で、今、社会的なムーブメントになりつつある「フェムテック」を、さまざまな角度から取り上げています。パーソナリティーは、おなじみの伊久美亜紀総編集長と東島衣里アナウンサー。この連載では、毎週オンエアされた内容を、ギュッとまとめてお伝えします。

番組ではフェムテックに関する、あなたの職場や家庭などでの問題点やポジティブな試みなどを募集いたします。ニッポン放送『はじめよう!フェムテック』宛にメール(femtech@1242.com)でお送りください。

●パーソナリティー

伊久美亜紀 Aki Ikumi
大学卒業後、出版社3社の編集部を経て、1995年ベネッセコーポレーションに入社。『サンキュ!』編集長を長く勤め、現在はK&Fメディア総編集長として『たまひよ』『サンキュ!』『いぬのきもち』など年間約100冊の雑誌・書籍・絵本の編集責任者を務める。29歳の長女一人。

東島衣里 Eri Higashijima
長崎県出身。大学卒業後、ニッポン放送に入社。現在は「中川家 ザ・ラジオショー」(金 13:00~15:30)、「サンドウィッチマン ザ・ラジオショー」(土 13:00~15:00)などの番組を担当。最近、女性の健康、そして幸せについて友人と語り合うことが多くなった31歳。

●ゲスト

阿子島文子さん Fumiko Akojima
ロート製薬株式会社 広報・CSV推進部所属。大学卒業後に入社した製薬会社を退職し、2009年にJICA青年海外協力隊として、ケニア共和国のHIV/エイズ対策業務に従事する。帰国後、2012年にロート製薬に入社。ケニア現地法人を立ち上げて現地に赴任し、5年の駐在を経て帰国する。アライアンスフォーラム財団出向を経て、現在は広報部門にて「女性の健康」に関する取り組みを担当、未来社会デザイン室「ロートこどもみらい財団」も兼務する。プライベートでは、3歳児の母でもある。

まだまだ認知度の低い「フェムテック」を推進して、女性だけでなく社会全体の幸せを目指したい!という意気込みでスタートした番組の第2フェーズ。前回に引き続き、ゲストはロート製薬・広報の阿子島文子さんです。「前回、ケニアの女性たちがお互いを褒め合い、“日々を楽しんで生きる”ことを実践しているというお話を伺い、日本におけるフェムテック推進のために欠かせない心意気だと思いました。今回は、さらにフェムテックの今後の課題についても、お伺いしたいと思います」(伊久美)

生きることに前向きなケニアから学ぼう! 日本のフェムテック

■東島アナ「今回のテーマは“ケニアから見るフェムテック”です。阿子島さんご自身は、フェムテックについてどのようにお考えですか」

■阿子島「フェムテックを活用することで、自分の人生の選択肢が広がる可能性があると思っています」

■伊久美さん「フェムテックという言葉自体は、日本でもまだ認知度が低いのですが、ケニアの人々は、フェムテックという概念をおもちなのでしょうか」

■阿子島「フェムテックという言葉そのものは浸透していませんが、性や健康に関する問題は、生活の中に溶け込んでいる身近なことなのです。自分を豊かにするものとして、興味をもっていると思います」

■伊久美「フェムテックとは、“女性の健康課題をテクノロジーで解決するサービスやもの”という定義になっています。ただ、この番組ではもう少し広義に“女性がハッピーなら男性もハッピー。そうなると、社会全体がハッピーだよね”というふうにとらえているのです。前回のお話でも、ケニアの人々がポジティブ志向であることはよく伝わってきたのですが、フェムテックに関しても、積極的に取り入れていこうというムードなのでしょうか」

■阿子島「ケニアの人々は、生きること全般に対して、とてもポジティブだと思います。日本ですと、仕事や介護、子育ての両立が難しかったりすると思いますが、ケニアでは、家族に限らず、人と人が助け合って生きていくのは当然、という考え方が根付いています。なので、性や生活における男女の役割分担に関しても、生活を一緒に歩んでいこうとする前向きさがあります」

■伊久美「素晴しいですね。コロナ禍ということもあり、日本では、人と人とが直に触れ合うこと、お互いに助け合うということが難しくなっています。そんな時こそ支え合うことは、より重要だと感じています。“今日もポジティブに過ごそう!”と、私たち日本人もみんなで励まし、支え合っていけたら!と思います」

■東島アナ「阿子島さんは、女性のための取り組みにも関わられていらっしゃるそうですね」

■阿子島「はい。ロート製薬は、常に “Connect for Well-being=幸せや健康に対してつないでいく、みんなが携わっていく” という意識で活動しています。私としても、女性の健康課題についてロート製薬単体で考えるのではなく、ヘルスケア業界全体で一緒に考えていくことが重要だと思っています。そこで、いろいろな企業の気概ある女性たちと一緒に、次世代に関するアクションへとつなげていく “ウィーメンズヘルスラボ“ という研究会を発足し、ロート製薬が主宰しています」

■東島アナ「阿子島さんは、まさに、女性の健康と幸せを実現しようとするかたがたの架け橋になられているのですね」

性教育の問題が気軽に話し合える環境が必要

■東島アナ「日本は、世界的に見ても性教育が遅れていると言われていますが、ケニアだと家庭や学校などで、性に関して話題にしやすい環境なのでしょうか」

■阿子島「いくつかタブーとされている言葉はありますが、“性”と“生”の問題は密接につながっていますので、性教育も活発に行われています」

■東島アナ「それは学校で行われているのですか? 親が子どもにしっかり性教育をするということですか」

■阿子島「いろいろな民族がいるので、それぞれ違うと思いますが、私が知っている民族では、親が直接教えるわけではありません。地域のコミュニティの中で、男性も女性も、少し年上の同性から教わるという伝統があります。学校で指導する以外の伝え方もあるのです」

■伊久美「性教育については、この番組でも何度か話題に上がっているのですが、阿子島さんは、日本の性教育についてどう思われますか」

■阿子島「性に関する問題について、なかなか口にしづらいムードがあり、長年、その状況は変わっていない、そして画一的だと感じています。生きるという意味で性は大切なことなので、自由に話ができる環境になればいいなぁと思います」

■伊久美「“性”と“生”がつながっていると聞くと、日本でも性教育を行いやすくなるような気がします。性教育って、どこか“こそこそしている”感じがありますよね」

■阿子島「ロート製薬では、妊活の実態調査「妊活白書」の発信、パートナーと協力した妊活「ふたり妊活」の提案などの活動を行っているのですが、そこでも性教育の必用性を提唱しています。人それぞれ、ベースとなっている性教育が違うので、お互いがどう歩み寄っていけるか、命を考えるという意味でも、重要な課題だと思います」

■東島アナ「“歩み寄り”というキーワードはまさにフェムテックですね。ケニアを始めアフリカで、フェムテックを進めていく上での課題はどんなことでしょう」

■阿子島「やはり貧困の問題が非常に大きいですね。ただ、フェムテックの商品や概念が導入されることで、より社会が進化していく可能性はあると思います」

■東島アナ「日本のフェムテックの課題については、どのようにお考えですか」

■阿子島「歴史的に見ると、例えばフェミニズムなどは、言葉がポジティブにもネガティブにも広がっています。そのため、女性が抱えている問題は、なかなか表に出てこなかったのかもしれません。一人でケアしたり、我慢しなくてはならなかった時代が長く続いてきたように思います。日本でも、フェムテックが大きな新しいムーブメントになっていくことが、ハードルを突破するきっかけになると思います。分断された一人一人、男女、世代をつないでいくのがフェムテックなのではないか、という期待感をもっています」

■伊久美「“男女の違いもつないでいく”というのは、美しいですね。フェムテックは、テクノロジーという言葉が入っているので、男性にとってハードルが低くなったという話もよく耳にするので。流行語に留まることなく、阿子島さんがおっしゃるような社会に近づいていくことを、私たちも願っています。この番組や記事を通して発信していきましょう」

■東島アナ「今後の目標があれば、教えていただけますか」

■阿子島「ありがとうございます。一人一人多様性を認め合う共生社会を推進する事業を、小さな発信やアクションを積み重ねて、一歩一歩進めていきたいです。それが世界平和と幸せにつながることだと信じています」

合言葉は「はじめよう!フェムテック!!!」

【番組インフォメーション】
『はじめよう!フェムテック』は、毎週・土曜日15時50分~16時にオンエア。聴き逃しは『radiko』で(※首都圏にお住まいのかたは放送後1週間)お聴きになれます!

●記事まとめ/板倉由未子 Yumiko Itakura
トラベル&スパジャーナリスト。『25ans』などの編集者を経て独立。世界を巡り、各地に息づく心身の健康や癒やしをテーマとした旅企画を中心に、各メディアで構成&執筆。イタリア愛好家でもある。伊久美さんとは27年来の付き合い。https://www.yumikoitakura.com/

●撮影/寿 友紀 Tomoki Kotobiki

 
 

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